祝!ギルド登録
「おはよう、水町さん」
ギルドへ入った俺は、掲示板を眺めていた水町さんに声をかける。
「あ!サトウくん、おはよう。昨日はごめんなさい...」
昨日酔い潰れた事を気にしていたのか。別に気にしなくていいのに。
「いいよ、気にすんな。それより、ギルドに登録しようか」
「ありがとう、受付行こ!」
無事に合流した俺たちはギルドの受付へ向かった。
「おはようございます、アリスさん。俺たち二人分、ギルド登録したいのですが」
「おはようございます!承知しました。それでは、おふたりの基礎能力と特殊能力をお調べします。こちらの錠剤をお飲みください」
白色の薬と水を渡され、それを飲み込む。
「今の薬って何の効果があるのですか?」
「今お飲みいただいたのは能力値可視剤です。私が手作りしているのですが、私にのみ飲んだ方の名前や能力が数値として見えるのです」
なにそれ!めっちゃ便利じゃん。俺も作ってみたい!
アリスが引き出しから2枚の冒険者カードを取り出し、手をかざす。淡い光と共に文字が印字される。
サトウ・タケル
Lv.1
スタミナ 200 MAX 4000
物理攻撃力 130 MAX 2600
防御力 150 MAX 3000
メンタル力 160 MAX 3200
判断力 160 MAX 3200
経済力 10 MAX 200
魔法 20 MAX 400 適正 炎
加護 調味の加護
特殊能力 リーダーシップ
起死回生
狙撃手Lv.1
神の手Lv.1
(特殊能力説明)
リーダーシップ・・・リーダーシップに優れる
起死回生・・・絶対絶命の場面を打開する起死回生の一手を閃く
狙撃手Lv.1・・・吹き矢、弓矢などを操るのが上手い
神の手Lv.1・・・料理が上手い
ミズマチ・ユイカ
Lv.1
スタミナ 160 MAX 3200
物理攻撃力 4 MAX 80
防御力 5 MAX 100
メンタル力 200 MAX 4000
判断力 160 MAX 3200
経済力 180 MAX 3600
魔法 500 MAX 10000 適正 全属性
加護 なし
特殊能力 ラッキーガール
火事場の馬鹿力
天才肌『魔法』Lv.1
(特殊能力説明)
ラッキーガール・・・普通の人よりもラッキーな事が多い
火事場の馬鹿力・・・切迫した状況に置かれると、炎系統の魔法効果が1.5倍
天才肌『魔法』Lv.1・・・魔法効果が1.25倍
「おふたりの冒険者カードが作成されました!タケルさんはリーダーシップに優れ、弓矢など遠距離攻撃を仕掛ける武器の使用が適しています。あとは、お料理のセンスがありますね!」
日本に住んでた時はゲーセンのゾンビを倒すゲームにハマってたけど、特殊能力の“狙撃手”と関係あるのかもしれない。
「ユイカさんは...全属性の魔法に適性があり、その才能も抜群のようです!!カーラネミを、国を代表する魔術師になれますよ!」
えぇぇーマジかよ。水町さん凄いじゃん。俺たちのパーティが世界に轟く日は遠くない!
?
えー、でもでも、水町さんがこんなに強いと俺が見劣りしちゃうじゃん。
一流冒険者になって、女の子たちに「キャー!かっこいい!」「タケル様~!こっち見て~!」とか言われながら過ごそうと思ってたのに。
これでは水町さんのお付きの者程度にしか見て貰えないんじゃないか?
「冒険者カードを見て頂けると分かりますが、タケルさんの能力が低い箇所はユイカさんの能力が高く、ユイカさんの能力が低い箇所はタケルさんの能力が高いです。お互いを支え合いながら頑張って下さいね!」
確かに、水町さんはスタミナ,攻撃力,防御力が著しく低い。水町さんが至近距離からモンスターに攻撃されぬよう守ってあげなくては。
「あの、私、魔法の使い方とか何も分からないんですけど、どこで習得できますか?」
「既に魔法を習得している人から教えてもらうか、自分自身でオリジナル魔法を創り出すかの2通りです。
オリジナル魔法を創り出す事は簡単ではありませんが、ユイカさんなら基礎を教えてもらえば実践を積んでいるうちに勝手にオリジナル魔法が習得できるのではないでしょうか。」
オリジナル魔法とかあるのか。確かに、野球のピッチャーの中にも少しだけ握りを変えて自分だけのオリジナル変化球を投げる人もいるな。
「炎系統の魔法だと、どんな魔法があります?」
「指の先から火炎放射を放つフィンガーファイアー、腕を炎で覆うファイアーアームなどが基本ですね!」
指から火炎放射か。両手から放つことが出来れば一気に複数体を攻撃出来る事になるな。
「けどけど、タケルさんの能力的に、どう足掻いてもアルコールランプに火をつけるのが限界だと思いますよ?」
酷い!余計なお世話だ。
「気にすることないよサトウくん!私が援護魔法掛けるから、弓矢でサトウくんが倒してよ!ーーね?」
自分が強い事を鼻に掛けるような事をせず、俺の事を気遣ってくれる水町さん。天使だ。
「ありがとう、水町さん。そう言ってもらえると助かるよ」
「えへへっこれからもよろしくね。
私達で遠距離攻撃と魔術師はOKだけど、近距離戦を任せることができるメンバーが一人欲しいよね」
確かに、壁役と近距離アタッカーが欲しいのは事実だ。
「そうだよな。掲示板に仲間募集の紙でも貼り付けるか」
~新規メンバー募集~
壁役または近距離アタッカーの方を募集しています。
僕達のパーティに入ると、とっても可愛いくて将来有望な魔術師と冒険が出来ますよ。
最後の一文を載せることは水町さんに猛反対されたが、女の子目当てでも有能な壁役が来てくれればラッキーだ。
「さて、求人も出したし食費を稼ぎにスライム狩りにでも行こうか」
「うん!スライムを5匹討伐で銅貨5枚のクエストが有るから、それでいいよね?」
「OK!それじゃあ行こうか」
無料貸し出しの錆びた剣と盾を装備し地図を広げながら、目的のポイントへと向かう。
「いやー良い天気だな。雲一つないけど、少し風も吹いてるから涼しいわ」
「そうだね! あ、私が召喚されたのはあのお花畑だったよ!」
俺と同じ場所なんだな。天界との出入口にでもなっているのだろうか。
更に10分ほど歩きポイントへ到着した。
しかし、スライムの姿が見当たらない。
「隠れてないで出ておいで~、スライムちゃん」
ちょっ、なに呼び出そうとしてるんだよ。ていうか、そんなんで出てくるわけーーって出てきた!しかも凄い数!一匹あたり想像の3倍くらいあるんですけど!?
「に、逃げろぉぉぉー」
回れ右して全力疾走する。
「水町さん、支援魔法とか思い付かない?」
「そんなの、いきなり言われても無理だよぉ!サトウくん戦ってよ!」
「いやいや、この数と大きさーー」
「戦いなさい!」
凄い剣幕で怒られた。普段怒らない人が怒ると、とても怖い。
背中にスライム、隣に鬼。殺るしかねぇ!
ズポッ!ズポッ!ズポポポポ
体が柔らかいスライムは、強くはないのだが剣を刺したり抜いたりする動作で疲れる。
5匹だけで良かったのだが、結局17匹も討伐してしまった。
時間もまだ早いので、俺が服作りで利用した葉を摘んで帰る事にした。
「サトウくんは物知りなんだね!なんでこの葉っぱが薬だって知ってたの?」
その理由は言えない。理由を話すとなれば、産まれたままの姿で異世界転移した事も話す必要があるからだ。
「ん、ちょっとね」
適当な答えに水町さんは不満そうだが、深追いはしてこなかった。
俺たちは無事にギルドに戻り、討伐した17匹のスライムを提出する。
「ギルドの調査ミスでご迷惑お掛けしてしまい申し訳ございません。17匹を銀貨2枚で引き取らせて頂きます。にしても、大型のスライムがこんなに大きな群れを作るなんて...」
スライムが17匹もの群れをなす事は極めて異例らしい。
今日の収入は、摘んだ薬草とスライムの合計で銀貨3枚銅貨5枚だった。
その後、俺達が初討伐成功祝いを兼ねて晩御飯を食べていたら後ろから声を掛けられた。
「求人の看板を見た者なのだけれど、まだ募集中かしら?」