宿屋
爆睡中の水町さんは救護室で1泊出来ることになったものの、俺は泊まれる場所が無い。
「アリスさん、他の駆け出し冒険者って普段はどこに泊まるんですか?」
「そうですね...冒険者業だけで生計を立てられる人は決して多くありません。冒険者業の他にアルバイトをしたりして、銅貨6枚~銀貨1枚程度の宿に泊まる方が多いですよ!
中には『そんなの冒険者じゃない!』って変な見栄を張ってバイトをしなかった挙句、豚小屋の隅で一晩を明かす人も居ます。」
こっちの世界にもホテルがあるのだろうか。街並み的に民宿という言葉が似合いそうだが。
俺は、まかない飯を食べて腹を満たした後ギルドを出てホテルを探す。
~民宿 一泊銅貨5枚からご用意~
一泊銅貨5枚の宿を見つけた。
「へー、安いじゃん。ここでいいや」
俺は扉を開けてフロントへ向かう。
「すみません、一番安い部屋に泊まりたいのですが。」
「お客様、大変申し訳ございません。当民宿の銅貨5枚のお部屋は既に空きがございません。」
「そうですか。それは残念です。他の値段で空き部屋はありますか? 」
「一泊6枚朝食付きのお部屋でしたら直ぐにご案内できます」
「ではそこで」
銅貨6枚を支払い、部屋へ案内してもらう。
「こちらがお客様のお部屋、201号室でございます。ごゆっくり」
銅貨6枚、日本円で3000円程の部屋だが期待以上に良い作りをしている。
もちろん、高級ホテル級とはお世辞にも言えないが、一泊7000円前後のビジネスホテルといい勝負だ。
「お、俺の家のベッドよりフカフカじゃんか!」
スプリングに押し返される感覚が楽しくて、ヒップドロップを繰り返す。そしてーー
バキッ
やってしまった。外見からは分からないし、そっとしておこう。
「こっちの世界は宿泊代が安くていいな。明日はギルドに登録して簡単なクエストにでも出掛けよう」
俺は枕元の照明を消して眠りについた。
翌朝、目が覚めてベッドから下りると体が痛い。
「痛てててて、筋肉痛かぁ~。部活にも入らず徒歩15分の高校に通ってたのだから運動不足になるのも頷ける」
1回のレストランルームに降りて朝食を食べる。
おむすび,クロワッサン,ベーコン,焼き魚,季節の果物etc.....バイキング形式で好きなだけ食べて良いのだが、どれも日本人が好む味付けだった。
「ごちそうさまでした」
さてと、腹も充ちたしギルドへ行くとするか。