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仲間がいるから、冒険が楽しい。  作者: 堕天使ピエロ
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加護

今から仕込む料理は4種類。


①シュヴァインの角煮

②シュヴァインラーメン

③デスオニオンのスープ

④自家製酵母のふっくらパン


お米を炊く事を含めれば5種類か。


①,②を水町さん、③,④を俺が担当して料理を進める。


①,②はレシピ的に豚の角煮と豚骨ラーメンに近い。

③は普通のオニオンスープに見えるが、“殺人”ってどういう事だ?


水町さんが、長ネギの青い部分やその他調味料を入れシュヴァインの角煮を作っていくーー


「水町さん待った!それ砂糖じゃなくて塩!」


水町さんが砂糖と間違えて塩を入れようとしていた。危ない危ない。


「あ、ありがとう...私全然気づかなかったよ...」


しょぼんとしながら、今度はちゃんと砂糖を入れる。


あれ、待てよ?今なんで砂糖と塩の違いに気づけたんだ?


料理なんて普段しないし、家庭科の料理でも砂糖は使ったことがない。それなのにどうして。


そんな疑問を抱えつつ、俺は殺人オニオンを取り出そうと“殺人オニオン”と書かれた足元のボックスを開ける。


「ーーがはっ...」


鳩尾を思い切り殴られたような痛みが走る。


思うように息が吸えない。


あまりの痛みに目がくらみ、その場で姿勢を保つことを困難にさせられる。


「だっ、大丈夫!?」


水町さんが駆け寄り、嘔吐く俺の背中を撫でてくれる。


「何とかね。てか、殺人オニオンって、そういう事かよ...」


箱から放出されたタマネギが元気に飛び回っている。


厨房に虫取り網が置かれていたのは、こいつを捕まえる用なのか?


ーーそんなこんなで、やっとの思いで仕込みを終わらせた。


「だはぁー...仕込みだけで死の淵を彷徨う事になるなんてな」


ギルドのテーブル席に腰を下ろし、正面の水町さんに愚痴をこぼす。


「私もびっくりしたよ...サトウくんが居なかったら、角煮はしょっぱくなって、殺人オニオンに殺されてたよ...」


お疲れ気味の水町さんも同意見のようだ。


「アリスの奴、素人にとんでもないことをさせてくれたよな」


「お疲れ様!私が何だって?」


噂をすれば、悪びれる様子もなくアリスが顔を出す。


「ひとまず、仕込みお疲れ様! 開店まで後20分あるし、これ飲んで休んでて!」


ドカッと音を立てて目の前に置かれた飲み物ーービール?


酔っ払った店員が客商売をして良いのだろうか。


というか、そもそもーー


「私達、まだ16歳なのですが、飲んもいいのか?」


俺の疑問を先に水町さんが口に出した。


「はい! カーラネミを含むアストライオス 帝国では、お酒は15歳から飲めるのです!」


酒か。日本では正月にお屠蘇を少し舐めた事があったな。


「そうなんですね! サトウくん、飲んでみようよ!」


なんで水町さんはノリノリなんだよ。


「サトウくん、カンパーイ! 」


「おう、カンパイ!」


ほのかな苦味の中にコクと旨味がある。日本のビールもこんなに美味いのか?


「うまい!おかわり!ほらほら、じゃんじゃん持ってきてくださいよ」


ああ、早くも水町さんが壊れた。


「ちょ!水町さん、これから配膳のバイトするんだよ!?」


「えー、やだぁ! サトウくんやっといてよぉ」


水町さんが、幼い子供のようにテーブルをバンバン叩いて駄々を捏ねている。


水町さんにお酒はまだ早いな。


「仕方ないな。この後のバイトは俺だけ出るよ...って寝てるし」


さっきまで騒いていたのに、早くもスースーと寝息を立てている。


頬を赤く染めて、スヤスヤと眠っている。

眠っている水町さんも可愛いなぁ。


「ちょっとー!なにエッチな目でパーティメンバーの女の子を見ているですか!」


「何言ってるですかアリスさん!?」


「冗談ですよ」


イタズラっぽく笑い、舌を出すアリス。


父さん、母さん、俺こっちの世界来て本当に良かったわ。異世界の女の子はみんな可愛いよ。


完全に潰れた水町さんをアリスと協力して救護室に運ぶ。


「どさくさに紛れて変な所触ったら、後でご本人に言いつけますからね? 」


「バレました? いい観察力してますね」


軽口に軽口で応じたつもりが、白い目で見られてしまった。


ちなみに、救護室は怪我人の治療を行う場所だが今日は空いていたのでそこへ運んだ


その後、俺は配膳のバイトを無事に終え給料を受け取った。


給与明細

仕込み1時間銅貨3枚×3時間=銅貨9枚

配膳、会計1枚銅貨2枚×5時間=銀貨1枚


「うちの酔い潰れたメンバーの給料も俺が預かっていいですか?」


「もちろん構いませんよ。よろしければ、タケルくんの銅貨を1枚出していただければ銀貨1枚に両替出来ますよ」


「じゃあお願いします」


一瞬迷ったが、銅貨18枚をジャラジャラさせながら持ち歩くのは重そうなので両替を頼む事にした。


~まとめ~


俺の加護は、“砂糖と塩を絶対に間違えない”加護だった。


お金には種類がある。

銅貨10枚=銀貨1枚

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