世代交代
死神は死んだーー死んだと言うよりは、光となって消えた。
死神が消えた事により、体に力が入る。
「う...動ける...水町さん、大丈夫?」
「ありがとう、サトウくん。けど、シルトさんが...」
俺と水町さんから20メートル程離れた場所に、シルトが倒れている。
俺達はシルトさんの元に駆け寄る。
「水町さん、急いで回復魔法を! 」
「ダメ...もう、さっきので魔力を使い果たしちゃったの。だから、今の私には、何も出来ない......考えながら魔法を撃てば治療できたのに。シルトさん、ゴメンなさい......」
「大丈夫自分を責めては、ダメよ......あの時の状況では、最善の手だったのだから」
それならば、と俺はノア特製、回復のお茶を取り出す。
「さあ、飲んで! 」
「ありがとう。けど、これではダメね...このお茶は、疲労回復には効くけど外傷には効かないの...だから...」
「そんな......」
「それにね、1度でも死神の攻撃を受けたものは絶対に助からない。そして・・・・・・死神となるの。こうして、死神の世代交代が行われる」
シルトの言葉が、俺の頭脳のキャパシティを超えた。
いや、超えてはいない。ただ、脳が理解する事を拒絶しているのだ。
脳は理解していない。シルトの言葉を拒絶しているにも関わらず、涙が溢れ出してくる。
頭が真っ白になり、何を考え、自分が何故泣いているのか理解が出来ない。
ただひたすらに、涙が止まらない。
「2人は...逃げて...そして...二度と、この森へは入らないでと街の人に伝えて...私があと何分、私でいられるか分からない。だから、逃げて」
「無理だ! シルトさんを置いて逃げるなんて! おぶってでも連れて帰る。ノアさんなら、何か知っているかもしれない! 」
「そうだよ...そんな事、私達には出来ない! 」
「あなた達が...森に置き去りにするのは...私ではない...死神よ...死神は、生前の人間の記憶以外を引き継ぐ...だからもし、私を街へ連れ帰れば、街は半日と持たずに全壊する...だから、逃げて...」
そう話すシルトの左目が、一瞬にして赤く充血する。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーッ! 」
シルトが左目を押さえつけ、地面を這い回る。
「早く...早く逃げて...間に合わなくなる...だから...お願い...」
俺と水町さんは、1度目配せをして街へと走り出した。
シルトを見捨てた訳では無い。
一度町に戻り情報を集め、シルトをこの世界に連れ帰る方法を模索するためだ。
必死に森を下る途中、シルトに似た禍々しい何かの声が聞こえた。




