あたらしい家族
街へ戻った俺達は冒険者ギルドへ足を運んだ。
「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ! 」
両手にビールのジョッキを抱えたアリスが出迎えてくれる。
「いやぁーやりましたよ。コンドル討伐。てっきり3メートルぐらいの鳥だと思っていたので焦りました」
どんちゃん騒ぎをしていた連中が静まり返った。
誰かのヒソヒソ話が聞こえる。
「う、嘘だろ、あの兄ちゃん」
「あのコンドルを...しかも2匹とは...」
「てか、あいつ鳥なんか飼ってたか? 」
「言われてみれば...見た事ない鳥だな」
急いでビールを席に置いたアリスが俺達に駆け寄ってくる。
「お、お疲れ様です。まさか本当に討伐して下さるなんて...」
「ずっと昔のクエストが残ってた理由がなんとなく理解できましたよ。危うくお釈迦様になる所でした」
「オシャカサマが何かはよく分かりませんが、とにかく受付までいらしてください」
俺達はアリスに続いて受付に移動した。
「それでは、今回の討伐報酬は聖金貨2枚です」
俺は、あとこれも買い取ってほしいんだけど。と言いながら背負っていた風呂敷を窓口に置いた。
「なんと! これはコンドルの卵ですね! 1、2、3個と割れているのが1つ。合計4つですね」
「はい。風呂敷に詰める時、1羽産まれちゃいまして。それがこの子です」
大人しく俺達の話を聞いていたティアロの頭を撫でてやる。
俺の仕草にドン引きしたのか、あからさまに顔面を蒼白させたアリスが1歩、2歩と後退りする。
「で、では、その肩の鳥がコンドルという事ですか? 」
「はい。その通りです」
「今から放鳥とかって...」
「嫌です」
「ですよねー」
アリスがこの世の終わりとでも言いたそうな顔をしているが気にしない。
「それで、いくらでの買い取りですか? 」
「合計で聖金貨20枚になります」
アリスの言葉にギルド内がざわめく。
受付に置かれた20枚の聖金貨を受け取る。
「ん、案外重いな」
聖金貨は見た目以上の重さがある。
「サトウくん、ティアロのご飯を帰りに買って帰ろうよ」
「そうだな。けど、食べ物って普通に肉で良いのか? 」
「ピィ! 」
「うん。肉で良いみたいだわ」
俺達はギルドを出て精肉の露店へ向かった。
「へいらっしゃい! 牛、豚、鳥はもちろん、今日はホワイトウルフやブロンズウルフまであるよ! 」
ホワイトウルフ、ブロンズウルフってなんだ? 聞いた事ないぞ...
「〇〇ウルフの〇〇に入る肉色をしたウルフのことよ。だから、ホワイトウルフなら、白色の肉なの。」
ウルフの事を知らない俺にシルトが丁寧に教えてくれる。
「それでは店主さん、ホワイトウルフとブロンズウルフを全ていただきたいのだけれど」
「お嬢さん、本気かい!? 裏にもあるけど、それも持ってくか? 」
「ええ、いただくわ」
店主が裏から白と銅の肉を両手に抱えて持って来ると、それらを全て秤に載せて料金を計算する。
「金貨1、聖銀貨3枚だな。銀貨以下はサービスするが、そんな金持ってるか? 」
俺は聖金貨を取り出す。
「兄ちゃん、うちの店では聖金貨は使えない。なぜなら、高額なお釣りの用意できないからだ。すまないが、金貨で出せないか? 」
「そうですか。残念ながら、金貨を持ち合わせていません。一旦、聖金貨でお支払いして、そのお釣り分は次回以降このお店を利用する時に回して貰えませんか? 」
例えるなら、この肉屋専用の電子マネーと言ったイメージだ。
「そうか! それは有難い。では、次回来店してくれた時は金貨3枚聖金貨2枚から引かせてもらうよ。是非また来てくれ」
俺達は露店を後にしてシルトの屋敷へと向かう。
「どうして高い肉にしたんですか? 牛肉でも普通に美味しそうでしたが」
「我々人間と違って、モンスターは魔力が強い獲物を多く食べるほど強く成長するの。つまり、牛肉を食べて育ったコンドルよりも、魔力が強いウルフの肉を食べて育ったコンドルの方が強いってわけ。それでよ」
なるほどな。強く、立派に育って欲しいものだ。
「ただいま帰りました!」
屋敷のドアを開けると、ノアが出迎えてくれた。
「皆様、お帰りなさいませ。さぞお疲れでございましょう。先に汗を流しますか? 」
ノアの言葉に、一同首を縦に振った。
「風呂上がりの食事って最高だな」
「うん! ノアさんのお料理の腕が凄いってのもあるけどね!」
俺達はノアが作ってくれた料理をいただき、俺の隣ではティアロが白色の肉を突っついている。これはホワイトウルフの肉だな。多分。
満腹まではご飯を詰め込んだ俺達は、膨らんだお腹をポンポンと叩きながら自室へと戻った。
しまった。ティアロの寝床を作ってないじゃないか。枝とか集めた方が良いのか?
「ティアロ、お前はどこで寝たい? 」
「ピィ! 」
俺の肩から飛び立つと、ベッドへ降り立ちピョンピョン跳ねている。
「ベッドは俺の寝る場所だから、悪いが別の所にしてくれないか? 」
ティアロはひょこひょこと歩いて枕元に移動した。
まあ、そこなら良いか。
俺もベッドに入って布団を掛ける。
すると・・・・・・
「お前、ご主人様をケツに敷くつもりか! まあいいけどさ......」
俺が布団を被った瞬間、ティアロは俺の上に乗っかって来たのだった。