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仲間がいるから、冒険が楽しい。  作者: 堕天使ピエロ
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コンドル討伐クエスト 後編

「エポドス・グラキエース! 」


目を狙撃した方のコンドルは、水町さんが魔法のピンポイント攻撃で何とか鱗を剥がすことに成功し、シルトがククリナイフで頭を落とした。


どうせなら水町さんが首まで落とせば良いという意見も出そうだが、鱗が取れたところでコンドルの肉はとても硬いため、魔法攻撃で首を落とすのは至難の業である。そのため、国内最高峰のククリナイフで首を落とす方が容易いのだ。


「やっぱ、ふたりとも強いな...」


「女の子に強いって言うのはどうかと思うよ?」


素の感想を言ってしまった俺に、水町さんが白い目を向ける。


「ごめんごめん」


「本当に反省していれば、ごめんは1回だけでしょ! 」


「すみませんでした」


ぷりぷりと怒る水町さんも可愛いなあと思いつつ、白旗を上げる。


「この2匹のコンドルだけど、 番いみたいなの。今の時期なら探せば巣があると思うのだけれど」


ここでシルトがコンドルの巣を探そうと提案してきた。


「それは構わないですが、探すメリットはあるんですか?」


「当然あるわよ。コンドルの卵の殻はとても綺麗で、指輪などの装飾品にも使われるの。入手の困難さから、個体差はあるけれど卵ひとつで家が建てられる程度になるわ」


「す、すげぇ」


「サトウくん、探してみようよ! 」


こうして俺達はコンドルの巣を探すことになったが、案外直ぐに見つけることができた。何故ならーー


「親鳥が大きいから、巣も大きいんだね...」


半径10メートル程の巣の中心に、ダチョウの卵とほぼ同じ大きさの卵が4つ転がっている。ルビーのような赤い卵だ。


「けど、親鳥が大きい割には卵は小さいのな」


「そうね。産まれたてのコンドルは小さいのだけれど、数日で両翼までの長さが5メートル程に成長するわ」


成長スピード半端ないな。数日で5メートルなら、1ヶ月もあれば親と変わらないサイズではないか。


「それなら、すごいスピードで繁殖するんじゃ......」


「その心配は無いわ。メスが卵を産むのは初夏と秋の2度だけで、さらに親鳥は特に元気な2匹しか育てない。また、コンドルの子供は兄弟喧嘩で死んでしまう事が多いから、数が増え過ぎることはないわ」


なるほど。コンドルの討伐が難しいだけでなく、卵自体も数が少ないのか。卵1つで家が建つのも頷ける。


「なるほどな。さて、卵と親鳥の頭を持って帰るか」


俺は持ってきた風呂敷に卵を移す。1つ目、2つ目、3つ目ーー


「ピヨ」


4つ目の卵に手を伸ばそうとしたその時、4つ目の卵が孵化した。


「産まれた」

「産まれたね」

「孵化までは1ヶ月は掛かるはずなのに何故・・・・・・」


孵化したコンドルの子供はトンビ程の大きさで、鱗ではなく薄茶色の羽毛が生えている。クリクリした目が可愛らしい。しかも、鳴き方がピヨって......


「ピィ! 」


殻から抜け出したコンドルが俺を見つめている。


「ピィ! 」


何かを確信したかのように、コンドルが俺の腕の中に飛び込んできた。


「なんか、気に入られちゃったみたい」


俺はコンドルの頭を撫でてやりながら、2人を見た。


「タケルくんの事を気に入ったみたいね」


「初めて見たものを親だと思うって、ヒヨコみたいだね」


可愛いなあ。柔らかくて温かいぬくもりを感じる。


「なあ、飼っちゃダメかな」


「・・・・・・サトウくん、流石にそれは無理だよ。だって、すぐ大きくなるんだよ? 1ヶ月で30メートルになっちゃうんだよ? 」


「そりゃそうだけど、俺がコイツの親みたいだし...」


「サトウくんって、もしかして“可愛い子犬に一目惚れして飼育を始めたけど、大きくなったら飽きて捨てるタイプ”の人? 」


「いや、そんなんじゃ...」


「シルトさんも何か言ってあげてください」


水町さんがシルトに同意を求める。


「そうね・・・・・・タケルくんによく懐いてるように見えるし、順調に育てば戦力的にも助かると思うのだけれど」


水町さんが手に握っていた杖を落とした。


「し、シルトさん、冗談ですよね? 」


「本気なのだけれど」


もうダメだぁと言わんばかりに水町さんが膝をついた。


「名前はどうするの? 親であるタケルくんが決めるべきだと思うのだけれど」


名前か...どんな名前にしようか。大江戸丸? 宮本武蔵? 沖田総司もいいな・・・・・・


「決めた! ティアロにしよう」


「ティアロ...いい名前ね」


「サトウくん、本当に飼うの? ティアロにツンツンされたりしないか心配だよぉ」


さっきまで反対していたのは、ティアロの玩具にされるのを危惧していたのか。


「ちゃんと躾けるよ。当然、街にも危害を加えさせない」


「ならいいけど...」






肩にティアロを乗せ、背中にはコンドルの卵を背負った俺と、コンドルの頭を抱えた女性ふたりは無事にギルドへと帰還した頃には、とっくに日が落ちていた。

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