コンドル討伐クエスト 中編
「え、あれがコンドルですか」
「ええ、コンドルよ? 」
「コンドルって3メートル位の鳥じゃないんですか?」
「それはレッサーコンドルの事かしら」
レッサーコンドル? なにそれ聞いてないぞ。
「あの、どうやって倒すですか? 」
驚きのあまり、変な日本語になった水町さんが質問する。
「戦い方は2つ。1つ目は強力な物理,魔法攻撃で鱗を破る方法。2つ目は唯一鱗のない目に毒矢を撃ち込む方法。この二択なのだけれど」
「なるほど。じゃあ、大虎の時みたいにククリナイフでーー」
「残念だけど、それは難しいわね。私のククリナイフでは滑ってしまい歯が立たないわ」
マジかよ。俺と水町さんの2人で2匹を落とすって現実的じゃないな。
「それじゃあサトウくん! 一緒に倒そっか 」
うわぁ、水町さんヤル気満々じゃん。今さら帰ろうとか言えないじゃん。
「やる気満々だね、水町さん」
「だって、さっき魔法撃ったとき凄く気持ちよかったんだもん」
「じゃあ、水町さん渾身の一撃で、2匹とも倒してよ」
「サトウくんのクロスボウを試す為に来たんでしょ? 1匹ずつ倒そうよ」
痛いところを突かれたなぁ。けど、目に当てるのはめっちゃムズいじゃん。
「わかった。じゃあ、こうしよう。まず、水町さんが1匹を撃ち落とす。そうする事で残りの1匹が俺達に気づいて攻撃してくる。その1匹が近くに来た所で俺が狙撃する。完璧だろ」
「そんなに上手くいくかなぁ」
「まあ、やってみようよ」
嫌だなぁと言いたげにシルトを見つめるが、シルトも“やってみれば? ”という表情だったため......
「エポドス・グラキエース!! 」
大樹を数本束ねたほどの太さにして、先端は削りたての鉛筆のように尖らせた渾身の一撃が放たれる。
放たれた結晶は地鳴りのような轟音を轟かせながら1匹のコンドルの首へ直撃した。
コンドルの首周りの鱗が風で飛ばされる瓦の如く剥がれ落ちた。
「落ちない...... 」
首を撃たれたコンドルが、奇声を上げながら俺達へ向けて降下する。それを見たもう1匹のコンドルも俺達を視界に捉えた。
「まずい! 2匹同時に襲ってくるぞ!! 」
「タケルくん。首を負傷していない方のコンドルを貴方は狙撃して」
そう言うとシルトは2本のククリナイフを取り出し両手に握った。
「何をするつもりですか!? 」
「鱗が無ければ私のククリナイフで斬ることが出来るかもしれない」
そう言い残すとシルトの姿が風となり、空気を斬る勢いで空中のコンドルへ迫る。空気を蹴って体制を整えたシルトが連続してコンドルの首を攻撃し首を落とした。
俺も先程毒を塗ってもらった矢をクロスボウにセットする。
銃のようなスコープの付いているため標準を定めやすく、さらに軽量のため腕を持ち上げても疲れにくい。
俺はコンドルの左目に標準を定めーー
「発射!! 」
スパン! と音を立てた矢が寸分狂わずにコンドルの左目へ命中。
コンドルが痛みに悶えた直後、全身に毒が回ったのかフラフラと墜落した。
しばらく砂埃で視界が遮られたが、ようやくコンドルの姿が見えてきた。
「倒したんだよな? このあと首が生えてきて復活とか、毒で死んだ方がゾンビ化とか無いよな? 」
「流石に大丈夫だと思うのだけれど」
シルトの言葉に俺は膝から崩れ落ち、水町さんは、やったぁ! とぴょんぴょん跳ねている。
「もうダメ、限界だぁ」
俺はその場で大の字になった。
「はい、サトウくんお茶だよ」
水町さんが体力回復のお茶を手渡してくれる。
肉体的疲労ではなく、精神的疲労なのだがーーすごい。やる気に満ちてきた。きっとコレは、お茶の力に加えて“可愛い女の子が注いでくれた”というのもあるに違いない。
体力と気力が回復した俺をシルトが微笑ましそうに眺めている。
「そう言えば、討伐したモンスターは持ち帰って討伐を証明するのが一般的だけど、流石に全部は持てないよね...」
「そうね、でも大丈夫よ。大き過ぎるモンスターは頭を持って帰れば討伐の証明になる。死骸は後日、ギルド職員が回収してくれるわ」
「死骸回収もギルドのお仕事ですかぁ。ギルドのお仕事って大変ですね」
水町さんが死骸回収をするギルド職員を案じている。心優しいんだなぁ。
「ところで、俺が倒した方のコンドルの首は鱗がついてますけど、どうやって頭を落としますか? 」
「「あ......」」