新装備
「ごちそう様でした」
昼食を食べ終えた俺と水町さん、シルトの3人はクエストを受注する為にギルドへ向かう事にした。
「ところでタケルくん、あなたは出会った時から武器や防具を持っていなかったようだけれど、どこかに隠しているの? 」
「武器を買うお金が無くて、ギルドで無料レンタルしてるのを使ってるんだよ」
「それなら、弓具店に行ってみるのは如何かしら。お金なら私が出すから心配いらないのだけれど」
「いやいや、値段も分からないし申し訳ないよ。自分で稼いだら、それで買うよ」
「本当にお金は気にしなくて平気よ? 近衛騎士団は命を張って国を護るから、そこそこの安定した収入があるの。年俸は大体聖金貨3枚程かしら」
聖金貨...たしか、1枚で500万円の価値だったから1500万円か。
「そっか。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「ええ、構わないわ」
俺達は目的を変更し、弓具店に向かった。
“コンコン コンコン”
「失礼します」
俺達はドアをノックして弓具店に入った。
「いらっしゃい、うちは良い物が揃ってるよ...ってロストワルの所の嬢ちゃんも居るじゃねーか」
「あら、ユウダイさん。ご無沙汰しています」
ユウダイって言ったか?この人も日本人なのかも知れない。
「私、新しいパーティに入ったの。紹介するわ。こちらがパーティリーダーのサトウ・タケルくん、こちらが魔術師のミズマチ・ユイカさん」
「俺は弓具店をやってるタナハシ・ユウダイだ。よろしくな」
ユウダイが胸の前でグッドサインを作る。
「「よろしくお願いします!」」
「早速だけど、リーダーの弓具を新調したいのだけれど」
「なるほど。どのくらいの価格帯で揃えるつもりだい?」
腕組みしながらユウダイが聞いてくる。
「最高品質の物でお願いしたいのだけど」
シルトの言葉にユウダイが目が飛び出るのではと言うほどに驚く。
「おいおい、正気か? サトウさん...だっけ? まだ駆け出しじゃねーか」
「初心者だからこそよ」
「そうか。それじゃ、少し待っててくれ」
ユウダイがバックヤードに入り、如何にも高そうなクロスボウを持ってきた。
「うちで一番高性能なのはこれだな。精密機械と言えるコントロール力と他を寄せつけない殺傷能力を併せ持っている。そんでもって軽量ってのも嬉しいポイントだ」
「実際に装備してみても良いですか? 」
「おうよ! 装備してみて、気に入ったら買えばいいさ」
俺はクロスボウを受け取り、装備する。
「どうかな? 」
「良いと思うわ」
「うん! 如何にも冒険者って感じ」
「思ったより様になるじゃねーか」
みんなに褒められるって嬉しいけど少し照れくさいな。
「それじゃあ、これで足りるかしら」
シルトが金貨2枚を取り出してテーブルに置く。
「ちと足りんが、まあ今後の活躍に期待って事で」
「ありがとう。また来るわね」
俺達は店を出て、冒険者ギルドへ向かう。
「せっかく新装備を買ったのだし、弓と相性が良いクエストを受注したいわね」
「そうだな。試し打ちが楽しみだよ」
そんな話をしているうちに、ギルドへ到着した。