元冒険者だけど道具屋です!?
「お! ここにも薬草が生えてる」
丈夫なブーツで森の探索する商人然とした青年が地面に生えていた薬草が傷まないように優しく摘み取る。
「だいぶ奥まで来たな。この辺は手付かずの素材が多いから地図に書いといた方が良いかもな」
青年は簡易的な地図に辺りをつけて情報を記していく。
「本当に平和だな~。魔物も少ないし、素材は豊富だし。転職したときは少し不安だったけど、やっていけそうだ」
青年はショルダー型のマジックバックに薬草を放り込む。
「あれ? もう一杯か。そんなに採ったっけ? まだ昼過ぎだけど戻った方が良いか」
仕方ない、と青年は後ろ頭をボリボリ掻くと踵返す。
少し湿って柔らかくなった地面をしっかりと踏みしめて目的地を目指す。
「? 魔物か?」
がさりと気配がしたので青年は姿勢を低くして様子を窺う。
「……何だ、スライムか。ほら早く行け。素材にしちまうぞ」
ポヨンと青透明のスライムが青年に一度跳ねると去っていった。
「スライムも冒険者に狩られ過ぎたしな。だいぶ貴重な存在になったもんだぜ」
草木を掻き分け、森を抜け、それは見えた。
『ようこそ 始まりの村へ!』
アーチ状の村の出入口に飾られた看板を青年は見上げる。
《始まりの村》
小さな村で近くの森には強い魔物は居なく、物価も安いので、この地方で冒険者を目指す者たちが最初に訪れると良いとされている村だ。
青年はここで暮らしていて、そしてーー
「早かったですね、兄さん」
「おう、ただいま」
妹と道具屋を営んでいる。