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魔女っ子に男の子が選ばれたら  作者: フローラルカオル
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猫は住む

母さんを説得して、妹を説得して……

あの二人、猫って別にそんなに好きじゃないしな。

少年は苦悩する。

家に帰ってくると


「お帰りーお兄ちゃん」


いつも通りソファーでゴロゴロしながらくつろぐ妹の胸元に見馴れたミケの柄のファーが。


「にゃーん」


あいつだ‼しゃべる猫だ‼何してる。俺の妹の胸だぞ‼


思わず首根っこ掴んだ颯真。

猫は

「にゃあ?」

とぼけた顔だ。


それを見て、妹、桃華は

「やめてよー。私の猫なんだから」

すぐに颯真の手から取り戻した。


颯真は桃華に

「そんな……勝手に猫上げて、母さんに何言われるか……」


桃華は

「お母さんも知ってるもーん。だから、この子、今日からうちの子ね」

そう言って桃華はその胸元で猫をぎゅーっとする。おいおい。その猫、今やらしい顔してるぞ……


「はぁ……なら、その猫よこせ。先に目を着けたのは俺だ。だから俺の猫だ」


そしたら桃華は

「違うもーん。あたしがそこで拾ったの。だから桃華の猫よ‼」

桃華も譲らない。


桃華そんなに猫好きじゃなかった癖に。だいたい、いつまで桃華の胸にいる気だ。


颯真は

「ほら、こっちに来い。にゃんプチだろ?買ってきたぞ」


颯真は袋から出したにゃんプチを猫に見せつけた。


「にゃーん♪」


猫は嬉しそうに颯真に続いた。


桃華は

「あっ、もうずるーい。なんでそんなの買ってきてんのよー‼」


颯真は少しいい気分だ。

「だから言ったろ。俺が先に目を着けたって。」

初めから飼う気まんまんだったような、袋から飛び出した猫じゃらしを見て、桃華はふくれた。








部屋に上がってくると、

「颯真、君はそんなに買ってきてくれたのかい?さっそく何があるか確認してもいいかい?」

などと言って、言い終わる前に袋に顔突っ込んでいる。


猫の後ろ姿見て、オス猫ってことがわかるが、珍しい希少なオスのミケ猫だと気付いた。3万匹に1匹の特殊な遺伝を持つとか、そんな事だったと思う。幸運を司る、縁起のいい猫のはずなのに、こいつは……


猫は

「なんてたくさん。君は僕の事大好きになってないかい?気持ち悪いな」


地味になんか言われてる。


颯真は猫を袋から出し

「そんな訳ないだろ。お前はかわいくない。」

正直な想いを口にすると、


「失敬な。好きって言ったらいいんだ。まったく、やっぱり君より桃華に魔法少女になってもらいたかったな。そしたら、パンチラが最高だったのに」


このクソ猫。

絶対妹のパンチラとか許さないからな!


そしたら、颯真は自分が魔法少女でよかったと思った。

逆に女の子だったら、似合ってはいても、もっと恥ずかしいはずだ。


しかし、いよいよ居座る事に本腰入れてきた猫に

「さて、とりあえず、桃華に名前決められる前に、名前決めるぞ」


話をかえる。猫は

「へー。君のセンスが問われる所だね。桃華はブリュンヒルデって着けようとしてたから、嫌だなとは思ったんだよ。僕にはもっと素敵な名前があるだろ?」


心持ちワクワクしているようだ。

そう言う目で見られると、困るのだが……


ミケ……

ミケ猫……

オス猫………


そしたら、思い付いた。

「ミケランジェロだ。」


いい名前だ。

男らしく、オシャレだし、ミケである主張がしっかりとふくまれている。


「えーーーーーーっ」

シンプルに嫌な顔をしてきた猫。


「なら、ブリュンヒルデか?」


「ミケランジェロでいいよ。ミケーロと読んでくれ。」

なんでよく分からない外国人風にしてくる。


「所でミケランジェロ。穴は今日は大丈夫なのか」


不服は認めない。苦情や文句があるならブリュンヒルデだ。


ミケランジェロは

「ああ。センサーが仕掛けてあるから、通過したら僕達しか聞こえないブザーがなるようになっているよ」



ブーブーブー



何の音だ…………。




「颯真‼行くよ‼」

猫は駆け出した。


颯真は疲れたように

「今か。ああ、まぁいい」


またあの格好になるのか……。早く、覆面かサングラス買うべきだった。それが無理ならマスクとかだ。


何の装備もないまま走る。ミケランジェロが

「まったく。穴の付近は結界になっているんだ。だからあの原っぱにいるはず。


そして、原っぱの所にきたら、黒い影がピッタリと有刺鉄線の所にたたずんでいる。浮浪者?それとも人じゃない奴?


猫は、

「先に変身しよう」


「無茶言うな。道の真ん中でそんな事できるか」


ミケランジェロは

「のんびりしてる暇はないよ。あの結界を破ろうとしている。そしたら、逃げられるよ‼」


言っても仕方ないのか。


「くっ、ティンクルマジカルスターライト‼」

力強く叫ぶと、ミケランジェロがピョーンと飛び込んでくる。


「正義の心を‼魔法少女ティンクルスター‼」


スター

スターー

スターーー


猫の高らかな声と変なエコーと共に、光輝く風が包む。風が体を沿うように撫でると


ピラーン

(スカートやヒラヒラした服)


ピキューン

(ブローチ)


シュシュシューン

(手袋やブーツ)


前回より、冷静に受け止められた変身シーン。そして、光が晴れて、ミケランジェロが

(ここで女の子が、『魔法少女ティンクルスター。お待たせ』っていうのが、理想だった)


悲しい話だ。俺はそれを言う気はない。


(そうしてくれ)


前回と同じように、猫とリンクして心の中で会話ができる。


(さあ、その武器でボコボコにしてくれ。前回と同じだ)


重ね重ね思うが、なんでここで撲殺なんだ。女にもそれやらせる気だったのか?


(女の子にそんな野蛮な事させるわけないだろう。星の魔法でズッキュンドッキュンだよ)


それを聞いたとたん、嫌な予感がした。

「オーケー。タコ殴りする」


颯真は宣言して飛びかかる。こんな人気のいない場所でも、人は通りかかるんだ‼だから、早く終らせたい‼


結界に飛び込むと、フヨンッとビニールの膜でも突き破ったようだ。その勢いのまま、

「でやああああぁぁぁ‼」


ボグッ

バキッ

ボキッ


「簡単だな」

見た目の割りに弱い。


むしろやり過ぎたんじゃないか?この杖、結構強い力で殴れるのな。


ミケランジェロは

(鬼のようだね。一撃目で虫の息だったのに、もはや鬼畜だよ)


「なら早く言え」

あらかた殴り終えるまで待つな‼


(ごたくはいいよ。早く投げ込んで修繕‼)


颯真はダラーンとしたその人影を投げ込み、

「シューティングスター……」


やっぱりテンション低く言っても発動するんだな。

杖の先からでっかい星が。



ズッキューーーーーン



前回と同じく飛んでいく。そして、穴に、キラーンとしたガラスみたいな光沢が戻ってきた。


「終了だ。変身解除してくれ」


「OKー。お疲れ。颯真」

ミケランジェロがピョーンと飛び出てくる。と、共に元の服に戻った。


ミケランジェロは

「今日もやっぱり見るに耐えないね」


颯真は

「うるさい」


望んでやってる訳じゃない。


ミケランジェロは

「まぁ、変身した時、ローアングルから、自動的に撮影されているから下着はきおつけてくれ。ボクサーパンツはピッタリしててやめた方がいいと思うよ」


ボクサーパンツ派の颯真は、自動的に辱しめられているらしい。


(クソー。なんで俺がこんな目に……)

颯真の苦悩は続く。





今日もひどい目にあった……


しかし、家に帰って猫じゃらしに無心にじゃれつくミケランジェロをみると、颯真の頬はニヤつくのだった。

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