心の休まる場所など……
「おはよー」
「あー颯真、おはようー」
いつもと変わらぬ朝の挨拶が染みる……
ああ、普通っていい。
「はぁぁぁぁぁぁぁー」
長ーーーい、ため息をついた颯真。
無理もない。昨日からおかしな事ばかりだ。
変な服は着させられるし、猫は喋るし、猫は愚痴るし。ちょっとかわいいけど、めんどくさいし、めんどくさいし。
学校は良いところだ。なんといっても、煩わしくないのがいい。
悩みから解放された颯真はいつも通りの日常に癒される。
スカートを履いた事なんて忘れてしまう。魔法少女なんて……
すると、お昼頃
「にゃーん」
食堂に行こうとした、中庭の渡り廊下……ミケ猫がいた。友達が不用意に近づく。
とたんに颯真は
「近づくな‼」
その猫、普通じゃない!
そう思ったら、上品なミケ猫は首をかしげ、
「にゃーん?」
この、可愛い子ぶりやがって‼
颯真は
「悪い……ちょっと抜ける」
友人にそれだけ告げ、猫を乱暴に抱き上げた。
「にゃうっ!」
怒ったようだ。しかし、こちらこそ怒りたい。なんでそんなとこにいたんだ‼
やっと人けのない所に来たとき、
「やめてくれ。そんなとこを触るのは‼」
猫は言った。颯真は猫を抱えたまま
「なら、なんでこんな所まで来た」
ちょっとキレ気味だ。
猫はハンっと笑って
「何があってもいいように来てやったんだ。少しは感謝してくれてもいいと思う。そうだろ?」
猫らしくないその表情。まったく。さっきは少しかわいかった癖に。
颯真は
「なら、揉め事起こさないでくれよ」
猫は
「ああ。所で颯真。僕にお昼はないのかい?忘れてただろう?」
飯の催促をわざわざ学校までしに来たらしい。
颯真は
「猫のご飯は朝と夜。二回。猫の本にかいてあった。欲しがるままにやってると、デブ猫になって運動しなくなるらしいからな」
仕返しのつもりで言ったら、
「ああ、わかった。ならそうしよう。僕がこの絶世の魅力で女子からもらうのはカウントしないでくれ。」
不機嫌にスタンっと颯真の手から抜け出した。
そして
「あとでやるって言っても遅い。僕は女子高生とやらにちやほやされてくるよ」
くそっ、このオス猫‼
色んな意味でイライラしてたら、お昼のための時間は減っていた。
お陰で売れ残りのパンしか買えなかった。あのクソ猫め……
それでも、颯真は帰りにスーパーによった。コンビニより、猫缶安いのだ。時間があるため、少し余分に買っておく。
しかし、あの口うるさい猫を隠れて養うのは限界かもしれない。あの部屋で誰にもバレずに…と言うのは難しい。あの雰囲気から、宿無しで、渡りに船とばかりに転がり込んできた。
家族に話してもいいが……ダメだと言われたら、今後やっかいだ。
「うーん」
悩みは尽きない。
猫は飼いたかったがうるさくないやつがよかった。なまじ人間みたいな喋り方するのでうるさいのだ。あと喋り方だ。喋り方もムカつく。猫缶せびりに来るな。
このカリカリしたドライフードとかの方が安いな。くそっ、これじゃ、おれの小遣いがなくなる。
颯真のカゴには、いっぱいに猫グッツ。
猫じゃらし
爪研ぎ
マタタビ
ペロペロチュール
ほぐしカニかま
猫ミルク
これでいい。颯真はまったくと言った顔でレジに並んだ。
猫用のベッド……
キャットタワー……
颯真はわずかに夢を見るのだった