うるさい
四時に帰ると言っているのに出迎えなしか。
まぁ、いい。僕は疲れた。
今日は寝る。しかし、明日マシンガンのような愚痴を聞かせるとしよう。
店員に見送られ、颯真はコンビニの袋をひっさげ店を出た。袋には猫用の缶詰がある。そもそもあのよくしゃべる猫がこれでいいのかはわからない。
しかし、今朝、颯真のフトンの脇でちょこんと丸まって寝てるミケの毛玉のような姿があって、颯真は萌えた。猫好きが一度は夢みるシチュエーションだった。
喋りさえしなければ、ただのかわいい猫なのに……そのかわいいけど、かわいくない猫のために早起きして猫の朝御飯を用意する。わがままに尽くしてしまう颯真。
帰ってくると、あと8時まであと15分。皿とミネラルウォーターを持って二階の自室に向かうと、
「やあ。おはよう。自らの試練に恐れをなし、逃げたのかと思ったよ」
猫はフトンで、でかでかとくつろぎながらそう言った。
颯真は
「はぁ……」
やっぱりしゃべるのか……どこか残念に思う。
猫は
「やれやれ。疲れたよ。肩もバキバキだし、目も痛いよ。こちらの本体の次元で君が隣にいたら、肩ぐらいもんでもらったのに……」
なんか、デスクワークに追われたような事を言う。さらにマシンガンのように続く愚痴。
「さて、君の事も怒られたよ。あまりにかわいいコスチュームと、男の組み合わせは、ショートケーキにハンバーグはさんだような物で、食えたものじゃないって言われた。あの時の変身シーンの映像を見て、製作チームは泣いてたよ。長年の夢を無惨に握りつぶされたって」
俺のせいのように言うのはやめろっ‼
しかし、突っ込みを入れたとたん、脱線してしまいそうだ。猫は喋り続ける。
「だから、僕は言ってやったんだ。颯真の魔法少女姿も悪くないって。見慣れれば良さもわかってくるって。自分の責任逃れのために言ったんだ。なのに、奴等は真に受けて、目が腐ってるって言うんだよ。僕だって本気でかわいいなんて思ってない。
だってそうだろ。誰が男のパンチラや太もも見たいと思うんだ。腹が立ったよ」
なんかムカつく。かわいいとか言ってもらわなくて結構だ。パンチラで恥ずかしい思いをしてるのは俺だ。
ムカつく。
そしたら、猫は、壊れたように
「そうこうしてる間に僕が全部悪いって事になってね。このプロジェクトの責任の全部のしわ寄せが来て、減給。僕が悪いのなんて、ただ、男を魔法少女にしただけ。なのに、それがご立腹なわけだ。身長が君の半分くらいの胸のペッタンとした頭の悪そうなチビガキの雌をどうしても戦わせたかったみたいでね。そうした上の私情を縦社会のルールに乗っ取って説明してる所はもはやドン引きだけどね。自分は仕事をしない癖に僕にすべてやらせておいて、あれをやってはなじり、これをやってはなじりだよ。僕には楽園はないのかな。ああ、そうだ。朝ご飯。君はちゃんと用意してくれているのかい?」
なにか、怒濤のようにしゃべられて、言葉尻を追いきれない。
「は?」
颯真はきいてなかった。
猫は
「あ、さ、ご、は、ん。朝ご飯だよ。まったく。」
まったく。少し黙ってくれないか。
颯真は、皿を二つ置いて、水と缶詰を用意した。
カポン
……と音をさせて缶詰のプルタブをおこす。あまり見た事のない中身はツナ缶のようだった。
「これでどうだろう?」
差し出した。颯真は内心ドキドキした。
こんなもの食べれたもんじゃないよ。バカにしてるのかい?
そういわれるんじゃないかと思ったら
「いいね。この缶詰は好きなブランドだ。」
まるで猫のように食べ始めた。いや……猫か。しかし、やっと静かになった。
颯真は
「げっ、俺遅刻っ!」
まさかの8時15分。間に合うが、走らなくてはっ‼
猫は
「ああ。行ってくるといい」
また、猫のように食べ始めた。
さて、金のにゃんプチを買ってくるとは。なかなかできる男のようだ。帰ってきたら、愚痴をいうのは勘弁してやろう。




