ミケランジェロ本体?
桃華はあれやこれや服を出しては
「違う。ハデすぎてもね……地味すぎても……うーん」
真剣に悩み出した桃華は長い。
桃華とメアリが二人して着替えにいって20分いったいどれだけ時間かける気だろう。そう思い始めていると、猫が
「まったく。着るだけでどれだけ時間かける気なんだ」
イライラしながらいった。
颯真は桃華がそういう人なのはわかるが、メアリもそうらしいとわかる。予想するに、最低でも30分かかるはずだ。
そんな中、猫は
「それにしても、颯真。君は女の子を二人も連れて映画にいく気なんだろ?このムッツリスケベめ」
言われのない文句を言われた。そんな事をいわれても、望んでやってるわけではない。だいたい、そもそもは桃華と行くはずだったのだ。もはや、子供のお目付け役の同伴係のようなポジションなのだが……
そしたら、ミケランジェロは
「僕も行く。まて。今本体を転送してる」
恐ろしいことを言った。
颯真は
「おい……どう言うことだ」
本体って……もはや、ミケランジェロの事はよくわからないけど、そんな事できるのか。
ミケランジェロは
「僕はいつもは時空の隙間で人間の世界と魔界が繋がらないように監視してるポジションなんだ。だが、最近風当たりが強くてね。もっぱら君のせいなんだけど、何かと業務押し付けてくるから、それはそっちのけで映画なんか行ってみたいと思うだろ。そう言いながらももう転送開始してるから、あと10分待ってくれ」
長々と猫がしゃべった。風当たりがきついだ?俺よりきついか?魔法少女の格好して杖で敵を殴ったりしてるんだぞ。
そうこうしながら、ゆっくり待つのもしゃくなのでコーヒーを飲むことにした。朝の一杯は身に染みる。
そんなこんなしてたら、ドアの扉がコンコンっとなった。
「はーい」
颯真があけると、
「やぁ、颯真。思ったより早く転送できたよ」
金髪碧眼の15才ぐらいの少年が立っていた。颯真は馴れ馴れしく話す初対面の少年に
「み……ミケランジェロか?」
そう言ったら、
「そうだよ。言っただろ。僕は汁も滴る美少年だって」
やれやれと言った顔だ。その顔でも腹立つな。汁じゃない。露だ。色々意味が変わってくんだよ。
ミケランジェロはずかずかと上がり込み、颯真の飲みかけのコーヒーを手にとってずかっとイスにすわった。
確かに美少年と言ってもいい。しかし、態度がでかい。ミケランジェロは
「なんだい。これは。苦いね。これは僕が仕方なくその辺に生えていた草をかじった時より苦いよ」
猫だった時代の話か……まったく。
颯真は
「ミルクにしろ。もともと猫だろ」
颯真は牛乳を入れてやる。
ミケランジェロは
「颯真。僕にまでたらしこむ気かい?大成功だよ。僕は今、君をいい男だと思った。君は本当に気が利くね。ついでに砂糖を入れてくれないか」
等という。本当に可愛くないな。
多少美少年なのがあだとなって甘やかされて育ったのは間違いない。
「にゃーん」
足元でミケ猫がにゃーんとか言う。颯真が猫を抱き上げると
「ああ、今通信切ってるからただの猫になりさがってるよ。今のうちに存分に撫でさするといいよ」
ミケランジェロが変態みたいに言う。
颯真は
「ああ……まぁ、そうする」
ミケランジェロじゃない猫は驚くほど可愛い。
ミケランジェロはミルクを優雅に飲む。ちょっと偉そうに足を組んでるのが腹がたつ。
ミケランジェロは
「それにしても遅いね。どれだけ時間かける気なんだい。いったい何をどうしたらこんなに時間がかかるんだ」
ミケランジェロが言うと母が通りすがる。
「あらあら、いらっしゃい。颯真のお友達?外国の人?」
物珍しさで出てきた。
颯真は
「ああ。まぁ、すぐ出掛けるから気にしないでくれ」
それに、しょせんミケランジェロだから。
ミケランジェロは
「ああ。颯真とは仲良くさせてもらってるんだ。これからも時々来るから覚えていてほしい。ミケランジェロだ」
母は
「あらー。うちの猫と同じ名前だわ」
颯真は
「まぁ気にしないでくれ」
もう、この二人はしゃべらないでほしい。どこでボロが出るかわからない。そう祈っていると母は
「まぁゆっくりしてってねー」
等と言って行ってしまった。
ひとまずホッとする。
すると、奥の部屋から桃華が現れた。
「手を抜かずにちゃんとしておいたわ」
そう言った桃華の目に人の姿をしたミケランジェロが目に止まる。
ミケランジェロは
「そう。遅かったね桃華。もうどこかに逃げてしまったかと思ってた所だよ」
金髪碧眼の少年………桃華の目がハートになってる。
颯真は
「桃華。これ、ミケランジェロだ。騙されるな」
見た目に騙されてはいけない。
桃華ははっとする。ミケランジェロか。かっこいいけどちょっとな……そんな顔で、桃華の葛藤が見られる。
そしたら、桃華の奥の部屋から、
「も……桃華。本当にこれでいいのか?」
ドアの所から顔を出していた。きちんとメイクもしてもらったらしい。髪もツインテールから、揺る巻きヘアーに変わってる。
桃華は
「前の格好の方が恥ずかしいから」
ゴスロリの事をいってるらしい。メアリは諦めて出てきた。
小花柄のワンピースに、白いカーディガン。ちょっとかわいい、ちょっと可憐。そんなファッションだ。さすが桃華。かわいく仕上げてくれた。
メアリは
「颯真……どう思う?」
自信無さそうに話しかけてきた。
颯真は
「うん。いいんじゃないか。似合ってるよ」
正直ずっといい。自然とたらしこみそうな颯真に、ミケランジェロは
「さぁ、じゃあ映画とやらに行くとしようじゃないか」
だいぶ待ったよ。と言った顔で立ち上がった。やたらイケメン風になったミケランジェロには落ち着かない気がする颯真だった。
メアリは
「誰?」
颯真は
「友達。いいから。みんなで映画に行こう」
ミケランジェロが本当にイケメンだとは……絶対嘘だと思ったのに。
映画のお金持ってるのか?
俺のおこずかい使うしかないのか……
颯真はちょっと憂鬱なのだった。