妹よ
やれやれ。
この猫何キロあるんだろう。
軽いな。
猫らしくいつも黙ってればいいのに。
「ねぇお兄ちゃんー」
帰ってくると、妹の桃華が命一杯でほほを膨らましていた。颯真は何か怒らしたかとは思うが、なにも心当たりがない。
桃華は颯真の抱えてる猫を指差し
「最近猫ばっかかわいがって。私は?」
怒ってる理由はそれらしい。颯真は猫のミケランジェロをその辺に放し
「ああ、そんな事ない。ほら、ゲームでもするか?」
桃華と遊ぶ時間が減っていたのだ。
桃華は意外にもまだ兄離れできてないお兄ちゃん子で、今だに兄と遊びに出掛けたいなどと言う子だった。家なら、颯真がやっているゲームをやりたいと言うので貸してやると、一緒じゃないとやらないってすぐにプイッとする。
猫は、意味深な瞳で見る。
桃華は
「猫より私がかわいいでしょ。ね?お兄ちゃん」
颯真の服を摘まみながら言う。
颯真は
「ああ。もちろんだ」
誰がこんな可愛くない猫。妹の方が可愛いに決まってる。颯真が桃華の頭を撫でていると、桃華は
「でしょ。えへへへ」
颯真の肩にもたれ掛かってきた。
何歳になっても子供だな。
そう言った顔をすると猫は、このブラコンめ。って顔してる。
颯真は
「しっしっ、ご飯は後だ」
猫を追いやったら、後で覚えてろって顔をした。
桃華は対戦ゲームが好きらしい。一緒にできるゲームを好んだ。うまくないけど、負けたくないのか一生懸命やる。それがとても可愛い。お世辞ではないが、妹は本当にかわいいのだ。
「きゃー。車がクラッシュしたー」
そして、ゲームがとても下手だ。
「さっきより走れてるぞ」
誉めると
「本当?じゃあ勝ったら今度映画に連れてって」
いや、勝てないだろ。これ
しかし、颯真は
「ああ。そうだな」
桃華は
「やったー。じゃあがんばっちゃう」
やたら張り切ってコントローラーを傾けながら右に左に体を傾ける。かわいくて笑ってしまう。笑うと怒られる。
猫がやってくる。
「にゃー」
さりげなく、桃華の膝に座る。
とたんに颯真は
「こらっ‼」
何、隙を見て妹の膝に乗ろうとする‼
猫を奪って自分の膝に乗せる。
「ぎにゃっう」
やめろ。なんで男の膝なんかに。そんな声が聞こえてきそうだ。
桃華がそれをジトーとした目で見てる。
「やっぱ猫大事じゃん」
あっ、怒らせる
颯真は
「桃華の膝に来るからだ。オス猫には乗せられない」
そしたら、桃華は笑って
「何それー。猫に嫉妬してるー。おかしー」
きゃははって笑ってる。
まったく。まさか機嫌治った。だからゲームを再開した。桃華が勝てる事はなかった。クラッシュしすぎだ。
「もー。難しい。やーだ。こんなゲーム」
ついには投げ出した。その辺にポーンと投げ出されたコントローラ。
颯真はそれを拾うと、桃華との距離が近くなった。
桃華は
「んっ……」
そんな事いって、目を閉じて唇を突き出す。
颯真は桃華のおでこを小突いて
「ほら、そういうのは好きな男にやる物だろ」
桃華は
「えーえへへへ。好きだもーん」
桃華は笑ってた。そして、再び
「んーっ」
同じ事をした。
颯真は
「はいはい。お兄ちゃん大好きだな」
桃華の頭を撫でてあしらうと。
桃華は
「お兄ちゃんほんと好きー。映画行こうー?」
桃華はゲーム放り出して、颯真の腕に顔を寄せた。
颯真は
「はいはい。超えもん(デラえもん)でも見に行くか?」
意外にも、名古屋の猫型ロボットの奮闘記が好きだった。妹は素朴なアニメが好きなのだ。
桃華は
「うん」
嬉しそうに頷いた。
部屋でミケランジェロのためにフトンを敷き、ゴロゴロしてろってしてたら、
「君の妹の事だ……あれはちょっとおかしいと思うよ?」
猫は喋りたくて喋れないストレスを颯真と二人っきりでぶつけてくる。颯真は適当に宿題しながら
「ああ。お兄ちゃん子なんだ」
それは自覚してる。桃華は甘えたがりな子だから、かまわないと拗ねるのだ。かわいい妹に拗ねられるのも嫌なので、いつも甘やかしている。
ミケランジェロは
「それに、颯真。どうやら触りすぎなんじゃないか?好きなのか?君達、禁断ってやつか?」
颯真は
「まさか。桃華も年頃になったらいい恋人見つけるだろ」
ミケランジェロは
「見つけられないよ。たぶんずっとこれだよ。まずいやつだよ」
颯真は笑って
「はは。まぁ、こういうのも中学生くらいまでかな。高校になったら相手してくれなくなるさ」
桃華はまだ小学生なのだ。まだまだ兄が恋しいのだろう。なので、たっぷり可愛がってもいいだろう。桃華はまだ子供なのだから。
ミケランジェロは
「死ぬほどうらやましいよ……」
悔しがってる顔をみたら、なんかクソ猫へのうさが晴れた。
美人の妹だがブラコンだ?
なんかあっても、すぐ邪魔してやる。
ミケランジェロは決意した。