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クビになったおきつねさん  作者: 須賀谷 京
5/5

其の伍 うれしさをかくしきれないおきつねさん

「アノ幼カッタ亜希ガ母親ニナッチマッテタナンテナァ。ソノ子供ノ亜耶ニモ会ウナンテ、チットモ思ッテモナカッタベ」


 白狐はそう言いながら、亜耶と亜希の顔を交互に見上げる。ふたりとも嬉しそうにほほえみながら白狐を見つめていた。亜希に至っては白狐と同じ様に目に涙を浮かべているようにも見えた。


「玄関前にいつまでもいないで早くおうちにはいろーー!あたし、おなかぺこりんなんだよもうっ!」


 亜耶はしんみりしている状況に耐えられず大声で言う。


「そうね、入りましょ。シロちゃんも遠慮しないで」


 亜希は白狐を幼い子供に接するように優しく言う。


 亜耶がわさわさと自分のショルダーバッグから鍵を取り出そうと探している時、亜希は白狐をひょいと抱きかかえた。それに驚いた白狐ではあったが、亜希と出会った過去のころを思い出したのか、自分の額を亜希の胸元に押し付け涙があふれるのを堪えているようだった。


「主ラニハ感謝シキレヌ」


 こっそりとそう言って尻尾をパタパタとふる白狐に気がついた亜耶は、さっきまで途方に暮れて元気がなかったはずの白狐が母親と会ってこんなにも変わるのを見て、ふたりの過去にどんなことがあったのか気になりはじめた。優しい顔はいつも見ているが、いつもとは違った感じでもっとふんわりとした眼差しをしてるいる母。自分以上に深い繋がりがあるのかと、白狐に軽く嫉妬しそうになっていた。



 自分の部屋へ白狐を案内しようと、亜希に抱かれている白虎の尻尾を鷲掴みし、


「さてさて、亜耶ちゃんのお部屋でまったりしますか?狐さん」


と、亜耶は白狐を誘った。白狐にとってのはじめて入った人間の家の中。キョロキョロとあたりを見渡す仕草は人間と同じようだった。

 階段はわかるものの、見たこともない触ったこともない物が家の中にはあふれていて、挙動不審になりつつ歩いている白狐が、亜耶には可笑しく見えていた。


「そんなに驚かなくても大丈夫だよ。家の中にあるものがないと生活していけないわけだしさ。狐がここで暮らしていくうちにイロイロとおぼえていくもんだよ」


 まぁ、そんなもんなのかと言われたことに納得し、白狐は2度頷いた。懐かしい亜希の匂いが充満している中に居る自分がまだ理解しきれないようで、顔を前足で叩いたり噛んだり忙しく動いている。それをそばで見ている亜耶は、外にいるハッチャンが自分の尻尾を追いかけ回している光景を思い出し、動物って同じようなことするんだなとニヤニヤしだした。亜耶の行動を目にした白狐は、自分がしていたことが無意識だったことに気付かされ、その動きを急に止めた。


「ドレ亜耶。オ前ノ居所ヘ連レテイケ」


「あっはーー!狐ってば超面白い!!なんなのってくらいに面白いよ!!おまじないかなにかやってたの?!動画で撮っておきたかったくらいだったよ~」


 平然と言葉を発した白狐をからかうかのように、亜耶は白狐を指差して大笑いしている。白狐は内心面白くはなかったが、子供のすることだと自分に言い聞かせ素知らぬ顔を貫こうとしていた。

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