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no title  作者: あめおんな
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プロローグ

2220年。

日本は全体死亡率の自殺死亡者割合に悩まされていた。

自殺死亡者は全体の半数以上を占め、

その自殺死亡者の半数は若者というのが

さらに頭を抱えている原因だった。


少子高齢化は進みに進み

今では2.5世帯に1人の割合で

子供がいる確率だ。

学校は去年500の公立学校が廃校になり

今年もさらに300の公立学校が廃校になることになっている。


「あの、少し提案が。」



そう国会の会議中に手を挙げた男が運命を変えてしまうことは

この時まだ誰も知らなかった。










「ということで…日本の少子高齢化は昔に比べて自殺者が増えたからじゃないですかねぇ?」



ヒゲをはやした政治家がテレビ越しに喋っているのを

私は溶けだしたアイスの雫が手に落ちるのが気にならないくらいに見入っていた。




「功ちゃん…」


ボソッと呟いた名前がやけに懐かしく感じる。


功とは金子功のことであり

私の一つ上の幼なじみだったが

昨年自殺でなくなった。


功は昔から持て囃される類の人間で

大きな目、しっかりとした切れ長の眉

筋の通った鼻先、少し薄めの唇。

そんな顔で見つめられて好意を持たない人の方が少ない。

昔からやってたサッカーのおかげでか

病弱な功ちゃんは私の記憶の中では小学校高学年の頃には皆勤賞なんかとってたりした。

しかもそのサッカーもうまくてスポーツ推薦で大学入学も

ほぼ確実だと周りから期待されてた人だった。

あの頃は自殺する意味すらよく理解出来なかったけど

今なら理解できる気がする。



こんな毎日同じことの繰り返しで続く日々と

日々増していく自分にかかる過度な期待と。

そんな類のものが一気に押し寄せてきたら

きっと私だって功ちゃんと同じことをしてたであろう。



今日本は自殺天国と言われるほど

自ら命を絶つ人が多い。

“死にたいなら日本に来い”

と謳い文句がつくほどに現状は悪化している。


原因はよくわかっていない。

そもそも人が死ぬということに何かしら原因があるのか。

死にたいやつは死ねばいいとさえ思う。

そんなことを考えてると棒についてたアイスがゴトリと音を立てて二つに割れて床に落ちた。


その時我に帰った。

そんなことを考える自分があまりに冷徹で怖くなる。

こんな考えをするのはきっと人の命を大切だと、そう思っていないという事だろう 。



でも実際思えなくて当然。と言ってしまえばそうなのかもしれない。


私は人より劣っている。全てにおいて。

少し薄めの眉に目尻が下がった目

低い鼻と腫れぼったい唇。

おまけに中肉中背の体型。

他の人と並ぶといつも差が生まれて嫌だった。

だから私はなるべく人との関わりを避けてきた。


けど功ちゃんだけは私にいつもかまってくれて

だからこそ功ちゃんのいない

日々のつまらなさを痛感してるのかもしれない。

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