シスコンが王子に求婚されるだけ
久しぶりに短編を。
ただのやっつけで書いた適当なものとなっています。
イリス・ディ・カッサンテリャアは無口で地味で社交性がない。
顔は無表情で声は小さく、不気味に伸びた黒い髪は一周回ってホラーである。
そんな彼女は魔道学園での卒業式周囲の面前で干されていた。
「以上の理由から貴様をこの国から追放し、今後一切家名を名乗らせないものとする!」
彼女が犯したのは、実の双子の妹に対しての暴力による虐め。
妹のアリスは成績優秀で前向きな性格であり、交友関係も明るい。
そんな彼女はある日神のお告げで聖女候補として名があげられ、この学園へ突如入れられた。
そこには前々から聖女候補としてあげられていたアリアと実の姉妹だと言うことが判明する。
次期聖女として名高かったイリスは、そこまで社交性がある訳でもなければ学力も乏しかった。
そんな彼女の妹にして成績優秀、違った地で育った愛らしい美少女が現れればどうなるのか。
考えることもなく、妹の方に流れる。
それを良く思わなかったイリスが、彼女にイジメを開始する。
小さなイジメであったり、時には階段から突き落とすものまで。
そう言った事件からイリスは聖女候補の名を汚したとして国外追放が決定した。
「アリス。これで、構いまs--」
「貴様!何の権利があって聖女様を呼び捨てに!」
「失礼しました」
長い髪の隙間から覗く感情の分からない瞳で妹を見るイリスであったが、アリスの取り巻きの男に本命の質問をする前に言葉を遮られてしまう。
既に決められた判決は覆らず、退場と言う形でこの地を去ることとなった。
実の姉がこの地に二度と踏み入ることがないと内心歓喜する転生者とアリスを愛しそうに抱きかかえる王子をしり目に。
追放され、家に帰ることもなくそのままに国の辺境地まで送られる少女の隣には途中で合流した少年がいた。
「シスコンここに極めり、だな」
「失礼ですね。妹の夢が判明しているのであればそれを手伝うのが姉の仕事なのですから」
「…はぁ。本当にバカなんだな君は」
公然の場で実の妹だと判明する前に、実の妹がいることをナギ・エデンス・ルーシュ陛下より聞いていたのだ。“先日転校してきた少女はキミの妹である”と。
「協力してくれたあなたには感謝をしています。エデンス」
そんな、姉妹に憧れていたイリスは聖女候補生と言う立場とエデンスの力を使い徹底的にアリスの事を調べさせた。
その頃はまだアリスは城下町のパン屋で住み込みで働いている少女であった。
調べられた情報の中で彼女が大事そうに持っていた紙の束があるのを発見するものの諜報部の物では調べることが出来ず、その忠実な写しを持ってくることで調査とした。
イリスもその紙に書いてあった言葉は分からずに困惑していたものの、エデンスがその文字を読み解くことに成功する。
エデンス曰く、イリスのポジションは自身にちょっかいを出す悪役であり、自分が王子と幸せの道を進むための噛ませ犬だと言う。
王子と聞いて即座に、エデンスから距離を取ろうとするイリスであったが、書かれているのはエデンスではなく、こっちの国の王子の事だと言う。
それが判明してからはエデンス監修の元、嫌な噛ませ犬キャラとして歩みそれを成し遂げることに成功したのである。
「成功したんだ、そろそろその野暮ったい髪をどうにかしたらどうだ?」
「一文無しの娘がそんなことできる訳がないでしょう?」
ましてや自分でうまく切れる訳がない、と続ける。
イリス自身、学園の制服のまま国外に追い出されようとしているのだ、身の回りの物は普段から下女に運ばせているのでそう言ったものを持っている訳がなかった。
「良かったら、俺に切らせてはくれないか?」
「…一般人の髪を王子に切らせると思いですか?」
「ここは俺の国の領地だから、ここにいる人間は俺の言うことを聞かなきゃならない」
「……横暴ですね。でもこれ以上エデンスに迷惑をかけるのも、あれでしょう。ここら辺で私はどうにか生き延びます。最悪、身を売れば死ぬことはないと思いますし」
「はぁ、俺が何のためにあんな変な女をダメ王子とくっつけたと思っている」
馬車の壁に手をつき、かなりの近距離に顔を接近させるエデンス。
「それは、私の妹の夢を叶えようと言う企画の成功を手伝ってくれたからでっ!?」
「お前が欲しかったからに決まってるだろ?」
近づけた顔をそのまま移動させ、そっと触れるだけのキスをする。
「な、なななな何をするんですかエデンス!」
「隣国の令嬢を娶るのにかけた根回しはそれなりに根気がいるもんだっんだぜ」
「~~~っ!?」
そのままに、今度はむさぼるように強引に口を開かせ舌を入れ、イリスの歯に這わせる。
その間彼女は驚きと、呼吸の不足による酸素の低下から極端に体力を消費する。
エデンスが口を離す頃には、息を上げ、頬を紅潮させた少女が居た。
「行く場所ないんだろ?大人しく俺のモノになれよ」
「私は、どうにが、生きて行けます」
「頼んでるんじゃない、命令なんだよイリス」
…只々、一方的にイリスは迫られ、厳しい修行の中でこう言った男性とのそれは未経験なイリスはオーバーヒート状態であった。
下女たちが、そう言った恋愛ものを夢見て話をしているのは知っていた。
だが、自分自身がそう言った立場にいることに混乱しかなかった。
「こんな、聖女候補でもない、気味の悪い女をっ!」
「俺が他の男に眼を付けられる前に近づけたくなかったからな」
「社交性もない!」
「俺の隣にいてくれればいい」
「変人!」
「知っているよ」
「色欲魔!」
「キミを俺だけのモノにするため頑張ったんだ、これくらいいいんだろ?」
「っ!」
抱きしめるエデンスから返される言葉は全て肯定。
逃れるに逃れることができない。
イリスにはそう言った知識もなかったのだ。
そんな葛藤をしているうちにとある場所に着いた。
「楽園…」
「そう王家に伝わる聖地だ」
一面に花が咲き乱れ、月の灯りだけが一層その場所を神秘的に見せていた。
この世界で広く知られる教えを解いた聖人の墓があると言われる楽園は書籍の中でこの世界のどこかにあると言われ続けており、その場所を探し求めるためだけに一生を費やす学者がいたと言われているほど、どこに存在するかも分からなかった聖地、エデン。
それが自分の目の前にあることをイリスは只々感動していた。
エデンスは手をひき、高さ2m近くある石板の前にイリスを連れて行く。
そこで彼は膝をつき、イリスの手にそっと口づけをし、心臓を掲げるように拳を胸に重ねる。
「我母たる女神の子、救済の聖女イリスの名を冠する貴女の隣でこの国を豊かに貧困を無くすことを此処に誓います」
この石板はかつて世界を救った勇者とそれを支えた聖女の墓。
「どうか、私の隣でともに歩んでください」
その地にて彼女は誓われ、求婚された。
当然彼女はためらう。
確かに自分自身にもっとも親しくしてくれた異性であり、そういった感情が無いと言えば嘘になる。
だが、自分にそんな資格があるとは思えないのだ。
否の声を上げようとした瞬間、胸に暖かな波が押し寄せてきた。
その波は高まって行き、自身からからあふれ出して周囲一帯を桜色に染め上げた。
「こ、れは聖女の」
聖書の一説にある、勇者が恋した少女が聖女になる際に起きた現象と同じである。
「私に、その資格は、あるのでしょうか」
「是に」
涙を流すイリスとエデンスの元に、白く輝く指輪が付けられたのであった。
その後、エデンス教国には度重なる試練が起きるものの、聖女と王の手によって乗り切り、繁栄の道を辿って行った。




