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28話 戦闘準備開始

「なんか久しぶりにちゃんとした空気吸った気がするなぁ。」


到着や否や独り言でつぶやくマグマ。


「まあなんか砂やらいっぱいあったし、せっかくの森林も腐敗臭が多少出てたのも出たから、いい空気ではなかったですね。」


そこに同意をするキース。


「すいません。カナンはポイントとってないんですよ。」


何故かだいぶ普通になりつつ、バッカーノ。なんだろう。たぶんこっちが素なのだろう。比較的腰が低い。


「いやいいよ。大した距離でも無いし。少し走ろう。」


ドクロさんが言うと、


その意図を感じ取ったのか、姫が動き出す。


ターンターンくるっと周り、


「ウィン♪スピ♪アップ♪」


指で虚空に文字を描きながら姫が踊る。


ぶわっと一瞬全員の体が浮く。


スキルのウィンドとスピードアップとフィジカルアップだ。


単純にウィンドの魔法で体重を軽くし、スピードアップと単純にスピードがアップするスキル、フィジカルアップは全体のパワーをアップする魔法スキルだ。


三つを同時にかけると、風のようにはやく走れる。


そしてこの三つのスキルを同時発動させるのがプロフェッサーのスキルである指スキルである。


これをすることにより、本来単体、つまり一人にしか掛けれないスキルを同時に全員にかけることが出来る。


しかも本来であれば、一人にかけた後、一人ひとりにかけるのが普通だが、踊りながら指をくるくると回転させ一気に全員かけてしまうという離れ業を普通にやっている。


「すごい・・・。」


その早業に同じ詠唱系のスキルを使うキースにとっては神業を見たレベルだ。


その様子をチラッと姫がみる。


「新人さんにはスパルタが必要なの。」


何かすごく怖いことをいっている。


「ドクロさんは甘いの。甘くてスイーツなの。でもそこがいいの。でも甘えちゃ駄目なの。鍛えなおしなの。」


どうやらこの騒動が治まってもキースには平和は訪れないらしい。


「壊れない程度に頼むぞ。」


「わかったなの!どうしよう・・・頼まれちゃった・・・結婚するしかないの・・・。結納はまだなの?」


トリップ寸前だ。

しかも結納とか意味がわからない。


お願いだから手をつなぐレベルで勘弁してほしいドクロさんだった。










はやかった。


付与したこの魔法スキルは本当にはやかった。


なんと全員5分ほどでカナンに到着してしまったのだ。


しかもはやすぎて・・・すらりん。を踏み潰して・・・。


マグマあたりは走っているとき、すらりん。を吹き飛ばすごとに。


「ふにゃりーーーーーーーーーー!」


っと変な奇声をあげていたのは気にしないでおこう。


あいつのすらりん。愛は本物だ。


そんなこんなでギルドハウスに到着をした。


「たっだいまですの~。ふい~久しぶりですの。ここがやっぱり一番ですの。」


キャッキャと楽しそうに回りながら、じゅーたんを踏みしめる。


「思ったより・・・綺麗ですの。てっきり汚れてるのでは?っと心配してたのですの。ドクロさんは駄目夫だからきっと汚すと思ってたのに・・・お仕置きしたかったのにですの・・・。」


すっと小姑のように小指でつぼを立てかけている机に触れる。


ぞわっとドクロさんが毛を立てる。


(大丈夫っすよ。ちゃんと毎日拭き掃除もしてるっす。)


ドクロさんに読唇術でパクパクと合図する。


(悪い。助かった。)


両手で拝むようにゴランに合図する。


「そうですわ。皆さんを私の部屋にご招待しましょう。」


そういうと、今まで開かなかった部屋のひとつ。


とりわけ一番豪華の扉の前にたった。


懐から袋を出すと、鍵を使ってあけた。


「さあみなさんどうぞ。プロフェッサーの部屋へ。」


中に入ると、てっきり神殿と同じように豪華な部屋が広がっているかと思ったら、そうでもなくどちらかというと可愛らしい部屋が広がっていた。


ベッドはよくある普通のピンクのベッド。


真ん中にはちょこんと小さなテーブル。


小物入れ用のタンス。


クローゼットらしい扉がズラーーーっとあるぐらいだった。


「くるくるっと♪」


指スキルを発動すると、テーブルが大きくなる。


その後、ポンポンポンポンっと椅子が出てきた。


「すっすっごーーーーい!!!」


それこそ見た目は魔法である。


たいがいこういうのを見て、女の子はプロフェッサーを目指したがる。


ただ、はっきりいってここまでいくのはまず無理。


この姫だから出来る技術なのだ。


「ではでは、お茶でも飲んでゆっくりしてくださいですの。私は装備を整えますの。」


そういって、小物入れをガチャガチャしだした。


ううう~んっとうなった後、袋に入れ、袋に出す。それを何度か繰り返した後、キースに話しかける。


「キースちゃん。これちょうどいいからあげるの。」


ポンっとキースに投げる。


武器:キエルヘルムの杖+40

キエルヘルムの杖が+40以上の場合、使用者のMPを2倍にする。

ただし、HPが半分以下になったとき、効力は無効となる。


「え?あれなんですかこの恐ろしい杖は?!」


「私のお古なの。使わないからあげるの。」


ぎょっとして反応する。


「いや!すいません!こんな高価なものもらえません!っといいますか普通売ってませんよこんなの!」


「面白い反応なの。大概は喜んでもっていっちゃう人が多いの。そしたら不合格っていって、今の杖も没収しようと思ってたの。」


やはり、ルシアンのメンバーはルシアンのメンバーである。


本当に一癖もふた癖もあるが、基本的に謙虚であればたいした問題は起こらない。


「ドクロさんはね。すごくやさしいの。だから私たちが引き締めないと絶対に駄目なの。」


なんか説教されている気分だ。


「今回も個人を尊重しないで、ちゃんと装備をひとつにまとめていればギルドメンバーが帰ってこなくてもいろいろ支援できたはずなの。」


「いや・・・でもそれは・・・やはり個人のプライバシーは・・・。」


「なの。」


「悪い・・・。」


「でもそれがいいとこだから問題無いの。」


またクネクネしている。


「私が渡せるのはこれぐらいなの。あとは・・・これをみんなに渡しとくの。」


ギルドアクセサリー:譲渡の指輪

譲渡されたスキルや能力を向上させる指輪。

人からの攻撃を35%カットする。


「これって?!」


ドクロさんが驚く。

ドクロさんでも知らないものだったのか。


「そうなの。一ヶ月前・・・つまりできたてホヤホヤの装備なの。うちのギルド専用ですの。ユーリンチと共同制作の末なんとか完成したですの。」


なるほど、だから攻撃ダメージカットもあるのか。

一人で作成すると譲渡のみとなるはずだ。


(ねえ。これすごいの?)


こっそりとキースとゴランに話しかける。


(すごいとかそういうレベルじゃないっす。普通人から攻撃をカットなんて20%とかあれば、神器級だと。)


(ふえええ・・・すごいんだね。)


(ある意味、ルシアンっぽいと言えばルシアンっぽいですね。)


残念なことにバッカーノは装備できない。


ギルドに入っているもののみ装備できるギルド専用装備なのだ。


まったく別の話だから一応は、ファブニールにもあるのだが幹部のみしか装備は許されていない。


簡単にポンポン作れるものではないことはたしかである。


「これで死人は出すことなく、いけそうだな。」


こくっとうなずく。


「ドクロさん。もし、最悪の場合は『アレ』やるからね。」


思いのほかするどい目を向ける。


「まあそうだな。その時は頼む。だが姫に危険が及ぶ可能性があるから最後の手段だ。」


「はいなの。」


ほほをポッと染めたあと、ニコっと笑う姫。

いつもこの状態であればいいのにと思うドクロさんだった。


これで準備は整った。


少し休んでいきたいところだが、この間にもあの街は世紀末覇者の状態であるし、実際、あいつらは森にいたら一般人でも関係なくあやめる気がする。


悠長にしている暇はないわけだ。


「悪いな。休みなしでこのまま行こうと思う。」


それを合図に皆、こくりとうなずいた。


「では、神殿に戻りますね。」


虚空のゲートを開き、また神殿に全員戻った。

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