マイペースなの?
「それは猫って言いたかったんじゃない?」
「月」
目の前の男が後ろを振りかけるのにつられて私も見ると別の男が立っていた
眼鏡をかけた短髪黒髪の優しそうな雰囲気(優等生タイプ)の人だが、こいつも整った顔をしているが目の前の奴と同類なのは目を見てわかる
どう見ても私を小馬鹿にしている
腹黒タイプだ
といっても本人は上手く隠しているつもりで私にはばれているからまだまだひょっこレベルな気がするけど
「猫って、…ああ、猫が追いかけるのが鼠だからか。は、ふつー間違えるかー?」
こいつ、またもや鼻で笑いやがった
くそぅ、美形だからってなんでも許されると思ってんなよ…!
「たまたま、猫が鼠を追いかけるのを想像してたら鼠って言い間違えただけです!」
「お前…そこまで馬鹿なのか」
今度は憐れみの目で見てきた!
なんでよ、誰だってそういう間違えするよね?!
…え、するよね?!
「いや、しねぇよ」
「するわよ。オニギリ食べたいと答えようとして、思わず具で答えてしまうのと同じでしょ?!」
「お前だけだろ」
「人間誰しも間違う時はある!」
「俺はそんな間違えしねぇよ」
「あなたが人間じゃないからでしょ?!」
「は?」
「そんな整った顔してるし、狐か化けてるんでしょ!」
「はぁ?!誰がだ!どっからどう見ても人間だろ!」
「どうせその綺麗な顔であちこちの女のコを騙しまくってるん」
「はい、すっとぷー!」
どんどん近付いて行き、至近距離で言い合いをしているところを誰かの手で遠ざけられた
さっきの眼鏡?
と思いつつ振り返ると、眼鏡の奴に似た面差しではあるが、眼鏡はかけてなく、さらに邪気もなさそうな人物がニコニコ笑っていた
多分、双子なのだろう。しかし、髪は透き通るような白金で長さもあり、後ろで縛られており、外国人っぽく見える。眼鏡は純日本人だと感じるのに、同じ顔でもこんな事があるのか…
「はい、どーどー。海ちゃんがそんなに大声出して反論するなんて、珍しいねー。こっちのお嬢さんも落ち着いて?海ちゃん口が悪いんだけど、悪気はないから許してやって?」
「悪気が無ければ許されると思ったら大間違いです」
「事実を言ったまでだ。猫には動くものを捕まえたがるだけで、逃げるものを追う習性はない」
「まあ、確かに」
え、まじで?
苦笑したニコニコ顏に顏を向けると頷かれた
「…」
「ほーら、見ろ」
やっぱりバカじゃねぇかと言わんばかりの顔にちょっと、いやかなりムカついた私は奴の足を思いっきり踏みつける
「いっ!…っ、なにしやがんだ、てめぇ!」
涙目になった顔に少し溜飲が下がり、ほくそ笑む
「それで、あなたたちは誰ですか?」
「おい、無視かよ」
「ああ、自己紹介が遅れました。私は藤見月夜。隣の私と同じ顔が双子の朝日です。そしてあちらが椎海深」
騒ぐ男を無視してサラリと自己紹介した眼鏡さん
うわぁ…本当にいるんだ、こんな人…
思わず出た感想は自分の中にとどめているつもりだったのだか、どうやら顔に現れていたようで、どうしました?と、聞かれた
だが、ここで本音など言ったら人間として駄目だと思う…
「素直に言った方が身のためですよ…?」
いきなり低い声で耳元で囁かれ、飛び上がるように後退る
それと同時にパニックになった私の口が思わず本音を零し始める
「うぎゃっ!っ、その年で一人称が私とか、丁寧な喋り方やキラキラした笑顔を振りまく人が漫画の世界以外にもいるんだと関心していたというか、ぶっちゃけちょいひいているというか、って、あ」
言っちゃったー!!
慌てて口を押さえるももう遅い
「ふうん?」
ひぃぃぃぃぃぃぃ!
「す、すみません!すみません!今のはちょっとはらなんていうか冗談?みたいな?あははははは」
「それを信じるとでも?」
…ごもっとも
もはや直視出来なくなった私はひたすら視線を逸らす
すると、先ほどの男がいまだに足を踏まれたことを怒っている姿とニコニコ男が私たちの会話で爆笑しているのが目に入った
うん、なんか、自由だなって思った
こちらのフォローをいれるどころか、一人は話を全く聞いていないし
…この人たちそろいもそろって、マイペースすぎない?