現状把握なの?
気が付いたら、こんな所にいた
全くそんな予兆は無かったのに
キョロキョロと辺りを見渡すがどう考えても自分の知っている場所ではない
じっとりと冷や汗が背中に浮かんできて、焦りが私の頭を混乱させる
そしていつ蜂が登場してもおかしくなさそうな雰囲気が恐怖さえも私に襲いかかってくる
心臓がバクバク鳴り始め、どうしようどうしようと思考が上滑りするだけで時間がどんどん経って行く
このままじゃ陽がくれちゃう…
そこまで考えてはっと空を見上げる
そう、そうだよ、ここがどこだかわからないけど、なぜか太陽が二つもあるけど、陽がある限りいつかは夜が来る
それまでに寝る場所や食料、その他にも色々ときちんと考えなくてはいけないことがある
あたふたしていても何も始まらない
都合良く助けてくれる人なんて出て来るわけがないんだから
落ち着いて現状を整理しなきゃ…
そこまで思いたつとストンと何かが落ちたようで、焦りがおさまってきた
先ほどまで力が入らなかった手を持ち上げて握ってみると、ギュッと力が入る
うん、大丈夫
まずはなんでこんなところにいるのか整理しよう
そうして座ったまま今日の出来事を思い返してみることにした
* * *
朝の六時過ぎ
まだ肌寒い中、耳元で鳴るアラームの音と振動で眠りから引き上げられた
あまり寝覚めがよくない私はチラリと携帯を見てアラームを止めるとまた夢の中にダイブする
そんな自分の性格がわかっているので、眠る前の私はすぐに次のアラームが鳴るようにしかけておいてあり、またもや音と振動が始まる
それを何回か繰り返した私は
いつまでも鳴り止まないアラームに、ゔー、と唸り声をあげてしぶしぶ身体を起こしてベットから降りる
「さむ…」
ぶるっと震える身体をおさえて上にカーディガン羽織り、階段を降りる
誰もいないリビングに漂う、しんとした空気が徐々に覚醒を促してくる
父親も母親も今はいないのだから、静かなのは当然だ
ふっと心によぎったものを見ないふりをして、無言で誰もいないリビングから目を逸らす
キッチンに立ち、朝食を作り食べると学校へ行く仕度を始める
いつものごとく、起きるのを渋ったために時間がギリギリなので慌てて済ますと家を飛び出した
制服のスカートが翻るのも気にせず全力で走ると電車の時間にちょうど間に合った
ほっと息を吐いて待っている人の列の最後尾に並びスマートフォンを取り出すと、メールが届いているのに気が付いたので操作してメールの画面を開く
待ち合わせをしている友達からかと思ったが知らないアドレスからで、広告のメールかと思い開いてみると何やら変なことが書いてあった
『あなたの素質を確認したところ、規定以上の数値が出たのでチャンスを受け取る権利を獲得しました。強くなりたいですか?』
「は?」
広告にしてはそっけない、色も写真も使われていない黒い文面の下に、はい、いいえ、のボタンだけがあるメール
意味がわからない
「なに、これ?」
よくわからずに電車に乗り込みながらもそのメールをじっと見つめる
普段なら、くだらない、と一蹴する内容だが、今はどうしても見逃せない一文があった
『強くなりたいですか?』
ただのイタズラメールだとわかっているのに、もしかしたら変なウィルスがあるかもしれないのに、心にひっかかったものがあった私は思わず、はい、のボタンを押してしまう
するとそれは返信のメールを送る合図だったらしく、何もしていないのにメールが送信されてしまった
さすがにマズイと思い取り消そうとするがその前に送信されてしまった
すぐさま別のメールが送られてきたので、どんなやばいことになったのかとそれを開くとーーー
『了解しました。あなたに挑戦する機会を与えます』
…更に意味不明だった
イタズラにしては内容が変すぎる
了解したって言われても…
あなた誰ですか?
というか、挑戦する機会を与えるってどうやって?
疑問がつのっただけで全く解決しなかった
そうしているうちに駅に電車が着いたので、まぁいいやとスマートフォンをしまって開いたドアをくぐって電車を降りることにした
そうして踏み出した足が踏んだのは、硬いコンクリートではなく柔らかい芝生で、周りの景色は駅のホームからジャングルに変わっていた
原因、もしかしなくてもこのメール?