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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
『自称ライバル』<12日目・朝>

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96話 ミスを補い合う関係

「青と赤は首装備なんだ?」



 卵形態から装備形態に戻す。

 男の時だったら形状に拘らないが、女子は見た目にこそこだわるのだ。

 特に形を変えられるのが一番大きい。

 今のアバターに似合う、且つ動きやすい装備となると色々悩んでしまうのだ。


 一番目は【緑+青】の腕輪。

 アキルちゃんからプレゼントしてもらった髪飾りと反発しないような組み合わせが望ましい。


 あれ、これ以外と組み合わせが難しいのでは?

 あればあるだけ欲しいと願う私に、揃えば揃うだけオシャレの幅が狭まる未来が見てとれた。

 いや、形は変えられるからその時の気分で変えればいいか。

 

 私は固定観念に囚われすぎるきらいがあるな。

 もっと自由に考えなきゃ。

 お姉ちゃんたちに置いていかれちゃう。

 


「見てみてー、ストールにしたー」


「あー、それ可愛い」



 お姉ちゃんがマーメイドスタイルでもおかしくないストールを見せびらかしてくる。

 あれは可愛い。私もちょっと真似してみたくなった。

 双子だし、いいよね?

 色違いを確認してもらう。

 髪色を逆にしたストールはそこそこ人気だ。



「首って他に何か装備あるかな?」


「チョーカーとかリボンとか?」


「動物モチーフだからって流石に首輪はちょっと。だったらこの長ーい尻尾に何かつけたいな」


「わっ、それいいですね。リノさんとお揃いにさせてもらっていいですか?」


「いいよー。モミジは何色が好きとかあるの?」


「白が好きです」


「へー、意外」


「もう、リノさんはいったいわたくしをどのように思っているんですの?」


「あはは、ごめんって」



 プリプリと頬を膨らますモミジちゃん。

 リノちゃんは困ったように笑いながらモミジちゃんと仲良くしている。


 今のモミジちゃんは誰にでも友好的だ。

 一生このままでいてくれないかなってみんな思ってるよ。



「みてみてー、しっぽリボン! モミジとお揃いにしたんだ」


「少し恥ずかしいですが、似合っていますでしょうか?」



 元気よく尻尾を伸ばすリノちゃんに対し、モミジちゃんは恐る恐るスカートをたくし上げて尻尾を取り出した。

 先端には結んだリボンが儚げに佇んでいる。



「おー、いいねぇ! あたしも尻尾のある種族にすればよかった!」


「っていうかミルっち。生やせるんじゃない、尻尾?」


「まさかこの首装備を?」


「いけるいける」



 まぁ楽器にもなったしね。

 何にでもなると思う。

 似合うかどうかは別として。



「みてみてー、尻尾! 生やした!」



 そこにあったのは悪魔みたいな尻尾。

 妖精設定どこいったの?

 ご丁寧に頭から角まで生やして。

 腕輪をヘアバンドに変えちゃったか。

 


「わー、ワルワルミルっちだ!」


「ナイスショット! いいよ、ミルちゃん。いい感じ、こっちにサービスショットちょうだい」


「うっふーん♡ って何やらせるのさ!」


「あははははは」



 完全に周囲の悪ノリで黒歴史を乱造するミルちゃん。

 すっかりモミジちゃんとのことはどうでもよくなったみたいだ。



「ふふふ、なんだかこのように普通に遊ぶのも楽しいものですわね」



 どこか、遠くを眺めながらモミジちゃんは微笑む。

 望んでも絶対手に入らない境遇だと信じて疑わないのだろう。

 


「モミジちゃんは普段何をしてるのー?」


「お勉強が主ですわね。お父様やお母様は今のうちから勉学に励むことは将来のためになると言われてきております。それと同時にお父様の会社のゲームの広告塔として活躍しておりますわ。お稽古も日に5本。並行してどうすればEPOに人を呼べるかだけを考えて生きていますわ」


「うわっ」


「そんな生活してて息苦しくないの?」


「社運がかかっておりますから。わたくしの身一つでそれが成し遂げられるのなら、喜んで歯車となりましょう」



 そっか。

 彼女は頑張りすぎちゃうんだ。

 それであの人が無理をさせすぎないように表に出て彼女を休ませているのだな?



「なんだか、大変そうだね。私、モミジのこと勘違いしてた」


「普段の私はリノさんにどのように接しているのですか?」


「そうだねー」



 リノちゃんは思い出しながら日常を語る。

 それを聞いてモミジちゃんは謝りっぱなしだ。

 

 そこにあったのは完璧に両親の言いつけを守る娘の姿があった。実際にそこまで全てをこなせる体力は今のモミジちゃんにはない。

 足りない分を補うように、あの人は出てきていたんだろう。

 お姉ちゃんと私のように。


「ねぇ、モミジちゃん。EPOってどんなゲームなの?」


「説明は難しいですわね。ですがお父様曰く。かつての地球を思い出すのを目的としたファンタジー世界の上に地球を構築する遊びですわ」


「地球、って言うのはあたしたちが住んでる星のことだよね?」


「はい」


「それをファンタジー世界に再構築すると言うのは?」


「ファンタジー世界を今っぽくしちゃうってこと?」


「そうではありません。ファンタジー世界に地球の歴史を刻んでいくと言う試みなのです。例えば歴史を過去から刻んでいけば、その星は地球になるのか? プレイヤーはその年代ごとに目的が設定されていて、達成すると年表に名前が刻まれるんです」


「へー」


「説明聞く限りでは難しそうだね」


「歴史の目標を達成できなかったらどうなるの?」


「そのまま次の年の年表に移るんです。それで、最終的のどれだけ今の時代に近づけるか、類似点がどれだけあるかで最終的なポイントが発表されて、それがランキング形式で発表されます」


「ランキング? ちょっとログインして歴史に名前を刻むだけで?」


「はい。他のゲームと異なり、累積ログインではなく。断片的に時代に介入し、より良いポイントを稼げたプレイヤーには現実でも使えるクレジットと、次のイベントの際に扱えるスタートダッシュチケットを配られるんです」


「つまり、初回は運だけど、何回もランキング入りし続ければ何回もランキングの常連になれるし、お小遣いも稼げちゃうんだ?」


「そう言うことになります。ですが、ログインタイミングによってはどこに配属されるかもわからない完全なランダム。偶然立ち寄った世界ではそれぜれが別種のコミュニティを形成していたり、なかなかとっつきにくい部分があるのも確かですわ」


「そう言う場合は事前にログイン時間を決めたりするんじゃないの?」


「はい、ミルモさんのおっしゃる通りです。勿論そう言う方もおります。ですが、最終発表までにかかる日数は30日。がっつりログインできる方は少なく、それこそ世界の歯車のようにミッションをこなすようなプレイングが求められますわ」


「ある意味ではそれが狙いでもあるわけだ」


「ハヤテさんは聡明であられますね。その通りですわ。これは誰か一人の失敗を、他の誰かが埋めることでポイントにチェインを決めるものなのです。聡い方はあらかじめログインタイミングを見極めて入られております。他の方がミスをしても、巻き返せるポイントを熟知しているのですわ」


「話を聞いてる限り、ミスした人のカバーをするとポイントが高いんだ?」


「トキさん、正解です。最終的にポイントが高ければ高いほど他のサーバーを出し抜ける。今EPOではおおよそ300のサーバーで世界を構築しております。月末なのでイベントも佳境。広告塔としては頑張り時なのですわ。今は一人でも多くの新規を入れ、ミスをカバーさせて高ポイントでチェインさせる方が多く潜んでおります」


「なんかミスする前提で頼られるのも癪だよね」


「ふふ。本来はミスなんてしなくたって普通に遊べるゲームですのよ? ただ、そのプレイングに目的を持たせることで、みんなが主人公になれる。それがEPOの真の目的なのです。皆がどこかの誰かのプレイングを引き継ぎ、カバーをして誰かにバトンを渡すのです」


「なんだかリレーみたい」


「はい、リノさんのおっしゃる通りです。このゲームは初心者から熟練のプレイヤーの全てが一つのことを目標として遊ぶリレーのようなものですわ。世界は30日で一周して、最後に発表がある。どのサーバーが今の地球に似た発展を遂げたか。それを競い合うのです。クレジットに関してはお小遣いのようなものですわ。頑張った分の報酬だと思えば、次も遊んでみようと思うのではないですか?」


「そうだね。お小遣いのために血眼になるのも違うけど」


「でも、どこかで頭打ちになっている?」


「ハヤテさんには隠し通せませんね。ええ、結局最終目標が同じなのですぐに運営の癖を見抜かれてしまうのです。全く異なるイベントを入れて気を逸らせてはいますが……離れて行く人が多く」


「それで止むを得ず学友を誘うような真似を」


「結局無理に遊ばせても難しくすぐに離れてしまうのはわかっているんですが、どうにもいても立ってもいられず」



 彼女なりに頑張っている。

 けれどそれでもどこかで限界が来るのだ。



「ぶっちゃけ、問題点は上げればキリがないけど」


「運営関係者として聞いておきますわ」


「イベント期間が長すぎる。一週間で良くない?」


「いえ、でもそれだと必要な期間が少なすぎて」


「勿論、一週間で終わりじゃなくて、一週間ごとに区切ってみたらってどうかって話。人によってはクレジット目当てで始める人も少なくない。それが蓋を開けたら一ヶ月後はコストパフォーマンスを考えたら悪いにも程がある」


「わたくしたちも慈善事業ではありませんので」


「なので課金ブーストパックの販売もする」


「イベントが過ぎたら全て巻き戻ってしまいますのに?」


「巻き戻さない効果を課金パックに持たせるんだよ。課金の強みはここで活かしておかなきゃ」


「なるほど。他には何かアイディアはありまして?」


「イベント終了付近では課金パックの割引セールを開始する」


「あ、そこで一定の需要を得ると?」


「一度買ってそれに味を占めた人は、また買いたくなる。でも恒常的に買うには少しお高い。割引にしてちょうど手が出しやすくなる値段にするとかどうかな? 勿論配るクレジットで調整してもいい」


「あ、それなら遊んでみたいかも」


「スタートアップキャンペーンで無料配布とかもしてさ。それは一ヶ月後に巻き戻っちゃうけど、どんなものか触らせないと課金できない層が欲しいってならないと思うし」


「なるほど。資金の回収を課金でする案はありましたが、お金を回収するのが目的のプレイヤーとは相性が悪いと思っていました」


「勝たなきゃお金もらえないんだから、勝つためには課金するでしょ!」


「は、はい!」



 本末転倒だが、実際勝負がかかってる場所で課金するプレイヤーは少なくないだろう。

 お金目的の人もいるかもしれないが、もし子供に誘われた親やおじいちゃんなら全力で課金するだろう。

 私ならすると思う。



「あとはアバターの種類とか」


「あの、お話を聞いてました? プレイヤーはその時々で役割が変わって、テーマに沿って仕事が割り振られるのです」


「それはそうだけど、行動するときは課金することで自分の好みのアバターを作れるってなったらきっとのめり込むプレイヤーはいそう」


「それだとEPOの趣旨が」


「今はプレイヤーを集めることが優先されるんだよね? 趣旨は問題が起こってから改修すればいいから!」


「は、はいぃ!」



 私たちから目まぐるしい数の改良案を受け止めて、モミジちゃんはその全てをメモに書き留める。



「そんで、実際にそれのどれかが実装れたら遊びに行くから。またそのトキダメ出しするから、覚悟しておいてね」


「あの、遊びに来てくれるんですの?」


 

 今の話を聞いて、散々ダメ出しを受けて。

 EPOでは遊んでくれないと思い込んでいたモミジちゃん。



「こっちの要望をあらかた呑んでくれたらの話ね?」


「でしたら是非!」



 お姉ちゃんはぶっきらぼうに言う。

 そりゃこんだけ干渉しといて放置は流石にね。

 その頃までに、私もログアウトできるようになればいいなぁ。


 と、そこへ。



「話は決まったか?」


「ジョンさん。少し、ずっと悩んでいた悩みが晴れ渡ったようですわ」


「そりゃよかった。そろそろログアウト時間だ。一旦解散しよう」


「え、もうそんな時間ですの?」



 この空間では時間が止まっているはず。

 しかし金狼おじいちゃん(ジョン)は腕を指でトントンとするジェスチャーをした。



「目標は達成しただろ? お友達とお話ができて、EPOの問題点もわかった。お嬢様にはやることがある。お友達に来てもらためにも、ここで足踏みしている時間はないんじゃねぇか?」


「ええ、そうですわね」



 どこか、ジキンさんがインストールされたような雰囲気。



「ではみなさま。わたくしはこの辺で。また、遊んでいただけますか?」


「勿論! 友達だかんね」


「では。またお願いします」



 綺麗なお辞儀をして、モミジちゃんはログアウトした。

 私たちと同年代なのにハードな暮らしをする女の子。


 残された私たちは各々思うことがあった。



「とりあえず、一回ここの農園から出る?」


「だね」


「なんか急に残してきた宿題に手をつけたくなっちゃった」


「あたしも。もっと純粋にEPOに向き直んなきゃって」


「それにしてもハヤテ。今日は随分と親身になって相談してたね?」


「そうだね。私はこのゲーム以外で遊んだことないから。純粋にどんなゲームがあるんだろうって気になってる」


「その割には課金って言葉良く知ってたね」


「お姉ちゃんがWBOにお小遣い全振りしてるの知ってるからね」


「これは悪い見本」


「反面教師」


「な、なななんだよー。ミルっちもリノっちだって限定武器の強化に課金したじゃんかよー。あたしだけ責めるのおかしくない?」


「ふふふ。そうだね」


「そう言うことにしておきますか」



 どこか他人事のように、ミルちゃんとリノちゃんがお姉ちゃんから距離を置く。

 

 この日はなんだかんだと皆思うところがあってお開きとなった。いつの間にかレイちゃんは農園から姿を消していた。


 あの子、本当に神出鬼没だな。

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