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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
『幻影と幻装』<10日目・夜>

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76話 現地集合

「お姉ちゃん、これはどういう?というかここはどこ?」


「どこって、WBOだよ。てっきりみんなここに遊びに来たと思ったんだけど」



 え、違うの? とばかりに聞き返してきた。

 そんな私たちを横目に、ステージは大盛り上がり。

 分身したレイちゃんがサイリウムを振って、ステージ上ではアイドル衣装をきたレイちゃんが美声を披露していた。

 普段はどこか間延びした声の彼女らしくない感じだった。


 なんかイキイキしてる?



「|◉〻◉)ノイエーイ、乗ってる~?」


『くそ、体が勝手に! ええい、我にこのような活動をする意思など! グヌォオオオオオ』



 ナイアルラトテップは何かに操られているようだね。

 というか、こんな不思議空間で当然出てくるはずの正気度ロールが起こらないのが不思議だった。

 何かに守られてる?

 または見えない力が働いてるのかな?


 まぁこっちは健全なゲームっぽいしね。

 何でもかんでも怪異が絡んでくるAWOってやっぱりおかしかったんだ。



「うそ、あのナイアルラトテップがいいように扱われてる!」



 お母さんが引いてる。

 一般プレイヤーからしたら問題児だもんね、彼女。

 しかしお姉ちゃんからしたら私にするのと同じような感じだ。

 お姉ちゃん一人では無理だっただろう。

 ならば直接的な関わりがあるのはレイちゃんかな?



「|◉〻◉)レイと言いましたか、あの子やりますね」


「イエーイ! あたしたちのライブに来てくれてありがとう!」



 そこにあったのは冒涜的で、それでいて熱狂的な音源だった。

 もしかしてお姉ちゃん、こっちでAWOの【集音】スキルでも使ったんだろうか?

 それぐらい、なかなか聞かない音のオンパレードだ。


 ライブ? が終わったのでこちらの要望を告げる。

 


「お姉ちゃん、とりあえずこっちの説明するね」


「オッケー。二人とも、ちょっと休憩ね。今妹が説明してくれるから。あー、いっぱい演奏したら喉乾いちゃった。ハヤテ、ドリンクとかある?」



 話聞いてた?

 今説明するっていう流れだったじゃん。

 お姉ちゃんらしいといえばらしいけどさ。

 実家のノリで接してくるお姉ちゃんに、私はアイテムストレージをガサゴソしながら対応する。



「あるにはあるよ。野菜ジュース」


「野菜ジュースってアレ?」



 曰く付きの農園の見た目がきもい野菜ジュースだね。

 あってるよ。



「アレ」


「アレかー」


「それ以外は手持ちないんだよね。ここには幻想武器を持ち込めないから。調理台作るのには四人必要だし。私とお姉ちゃん、レイちゃんを含めても三人しかいないよね?」


「え、そこにアルプちゃんいるよ?」



 まるで幻想武器を所持しているみたいに話を振ってくる。

 いや、いるけど所持できるの?



『は?』



 威圧すご。

 ナイアルラトホテプがすんごい形相で睨みつけてきた。

 今の彼女に目らしい目はないけど。

 お母さんたちも見るからにそわそわしてるし。



「とりあえず、こっちはAWOを遊んでる時に、突然こっちに連れてこられたんだよね」


「え、別のゲームじゃん! 行き来できんの?」


「レイちゃんはどうやってWBOに来たの?」


「|◉〻◉)なんか~、繋がったので~」



 要領を得ない返答きたな。

 いつものレイちゃんっぽい。


 そういえばいつの間にやらバックダンサーは消えていた。

 ステージを設置すると出てくるのだろうか?

 つまりアレもスキルの一部と見ていいだろう。

 貴重なスキル枠をバックダンサーで使うなんて勿体無い! と思ってしまうのは私だけかな?



「そうそう、ここにくる前AWOでミルちゃんやリノちゃんと会ったんだけど、どうも今のレイちゃんて100年後のレイちゃんだって話じゃない?」


「そうだっけ?」


「|◉〻◉)僕はそういう認識ですね。こうして再びマスターと出会えたのは感慨深いです」


「|◉〻◉)僕としては君の状況についても知りたいかな」



 ここに来て、先生が割って入ってくる。

 普段のおちゃらけた先生らしくない、割と真面目モードだ。



「|◉〻◉)あ、どこかの誰か!」


「|◉〻◉)その言い回しは傷つく」


「100年も経ってるらしいから」


「|◉〻◉)僕は億単位で生きてるのでよくわかりませんが。100年程度で記憶から消えるってことは封印とかされてたんですかね?」


「封印? 物騒だね」


「それでハヤテ、ジュースは?」



 今重要な話してたでしょ。

 この場所にどうやってレイちゃんが関わってたか。

 なんでナイアルラトテップがここに関与できるとか、そういうイベントだよ?

 なんで自分の要求ばかり通したがるんだろうか。


 ここ、本来は閉じ込められたお姉ちゃんの原因を究明する重要なとこだから!

 もうちょっと我慢して!



「ナイアルラトテップに協力を仰がないと無理そうだけど、お姉ちゃんできる?」



 そんなわけで、無茶な要望を繰り返すお姉ちゃんに、まずは幻想武器の所持者を見つけてこいと要求し返す。

 お姉ちゃん曰く、ナイアルラトテップがその候補らしいが。

 言うことを聞かせるのに一番適してないゲームマスターだよ、その人。

 レイちゃんは、配ってたし持ってるってことは確定だけど。

 だからと言ってお姉ちゃんにナイアルラトテップをどうこうできるわけがない。

 いや、でも一緒にライブしてたし。



「任せなさい! アルプちゃんは口では嫌々いうけど、なんだかんだで付き合いいい子だよ。ね、出してくれるよね? 一緒にジュース飲も?」


『ふん。この不快な首輪を解除してくれたら要望を答えてやらないでもないがな』


「だって、レイちゃん」



 首輪には『ぽち』と可愛く書かれている。

 仕掛けたのはレイちゃんか。


 口の端が上がってるもの。

 それを解除したら、すぐに攻撃されそうな気配もあり。

 さて、どうしたものか。



「とりあえず、パッキングしとくね」


「ん? まぁいいけど」


『おい、やめ!』



 困った時のパッキングである。

 ナイアルラトテップは弾かれるように私に向けて触腕を振り下ろす。

 いやだった?

 でも残念、遅過ぎました。


 パッキングを行うと宣言したら、もう動作に入ってる。

 それが私だよ。

 覚えといてね。



「何か楽しそうな気配。あなたも楽しみなさいな、ナイアルラトテップ」


『クトゥルフの犬め!』


「わんわん! とでも言っておけばいいかしら?」


「マリンちゃんも何かと楽しい物好きらしい。とりあえず、君たちは刺激が強いので僕の防御結界の中に居てもらおうか。涅槃、うちの奥さんと娘を見守っててあげて」


『目が腐りそう』



 お父さんの幻影はとても嫌そうな顔をしている。

 久しぶりの出番で嬉しい反面、自分以外は全員魔導書陣営ならそれも仕方ないか。



「後で眼帯買ってあげるから」


「あー、防御ならうちの神様も得意だな」


「あたしは特に聖魔大戦関わってないからねー」



 今のひよりおばちゃんはまだベルトが巻かれていない状態。

 種族的には聖典から招待されそうだけど、どうなのかな?


 かつての彼女も行いから聖典に招かれた実績がある。

 実際のところは先頭に一切降ってないらしいが。

 パッシブ曲の私が活躍できてしまった前例があるので、それは通用しないだろう。


 それはそれとして、パッキング中の彼女、ナイアルラトテップは異形姿を卒業。


 人間形態のアルプの姿を取った。

 どうやらこの空間内では外からの無限のエネルギーを取り込めないらしい。

 へー、そうやって変身してたんだ。

 まぁどんまい。



『どうして僕がこんなことを……』


「まぁまぁいいじゃないの」


「まぁまぁ。美味しいジュースあげるから」



 なんだかんだでお姉ちゃんも動じないよね。

 顔見知りとはいえ、記憶操作してくるような相手に友達感覚だ。

 ライブを通して絆が生まれた?

 まさかね。



「|◉〻◉)よかったですね、ぽち」


『このお魚さんはいつか必ず酷い目に合わせるって決めたから』


「|>〻<)きゃー、こわーい」



 まるで怖がっていない茶番を見守りながら、異空間にて調理台が完成する。

 本当にアルプちゃんは幻想武器を所持できていたのだと判明する。

 カテゴライズなんなの、これ?



「そういえばここ、水圧調理が使えないんだった、どうしよう」


「そういうことならお母さんに任せなさい。領域展開しておくわ。水圧調理も使いたい放題よ!」


「わ、最高!」



 ちなみにジュースを作るのに水圧調理は関係ない。

 今ここでジュース以外のものを作れるかどうかの確認だった。

 何せこっちに来たのが曰く付きの食材を食べた結果によるのなら、元の空間に帰る方法もまた、料理に関するものだと思うから。


 前回は都合よくティンダロスの猟犬が来てくれた。

 けど今回は、道中で出会ってもいない。


 そもそもゲームが違うので現れてくれるかも怪しいときた。

 だから、そもそも料理をした程度で元の空間に帰れるかも怪しいのだ。


 とはいえ、何もしないと言うのも手持ち無沙汰に感じる。

 せっかくはらぺこさんがいるのだ。

 ここは私が料理を披露して満腹に導こう。


 もしかしたら、それで何かが解決するかもしれないから。


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