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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
【ハヤテの章③】ゲーム内生活10日目【AWO】

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67話 奇妙な共闘

「お嬢さん方、とんだ災難に巻き込まれたね」


「えっと、すいません。こんなことになるとは!」



 過去の自分から語りかけられ、必死に今の自分で対応する。

 前に躍り出たのはアキカゼ・ハヤテ。

 そしてその眷属であるリリー。

 真名を解放する前の彼女は、おちゃらけながらも敵に突進してい行く。



「|◉〻◉)合わせます!」


「|ー〻ー)なんだか貴方とは初めて会う気がしませんね」


「|◉〻◉)なんででしょうか。僕も合わせやすいなと思っていたところでした」


 うちのレイちゃんがリリーに合わせてティンダロスの猟犬の攻撃を凌いでいく。


 きっと知っているのは分裂してからの彼女。

 分裂する前、真名を名乗る前の彼女は一時期真面目ちゃんモードの時があった。



「お爺ちゃん! 対策は?」


「わからない。だが私のスクリーンショットでは耐久こそ高いが、倒せない相手ではないと出ている」


「なら、あたしが引き受けるよ。そっちの人! バフ付きの音楽ありがとね。これで動き回れる!」



 マリンが素早く動き回る。

 慣れたものなのか、アキカゼ・ハヤテも動かしながら対策を練ってるようだ。

 こんなシーンは知らない。

 かつての一場面ですらない。


 まるで当時の私ならばこれくらいやってくれるという信頼のもとに再構築されているかのような感覚。

 ついでに私にもそれをしろと?


 随分な無茶振りだな!

 と思いつつも。

 今の私でこの先頭でどのように立ち回るかも考えているのだから気持ちというのは偽れないものだ。


 今の、お姉ちゃんたちとの遊びが嫌というわけじゃない。

 むしろ前世と違ってAWOの違う一面が見れて楽しくある。


 けどそれと同時に。

 前世の私を目の前で見て。

 少し羨ましく思ってしまう私もいた。


 もう戻れない。

 戻る必要もないと思いながら。

 いつだって無意識に当時の力を振るうことを考えている。


 まるで必死に消したい過去を、無理やり見せられているような感覚だった。



「ユーノ!」


「アイスジャベリン!」


「【影踏み】!」


「|◎〻◎)今です!」


「|◉〻◉)チェストー」


「ああ、逃げられた!」



 健闘はしてる。

 けど、決定打を与えられぬまま乱戦は続く。

 なにせ数が多い。

 けど私なら。

 今の私なら!



「パッキング!」



 その逃げ道を防ぐ手立てがある!

 決定打を与えられるわけじゃない。

 けど、この戦力を生かす知識がいくらでも湧き出る。



「わ、閉じ込められちゃった!」


「けどその形状は!」



 丸くない。

 だがこの場合は、相手の動きを封じるスキルを有していることを相手に伝えることに意味がある。



「君、さっきのは形状を変えられる?」


「はい」


「マリン、彼女の力ならこの戦いを優位に戦えるかもしれない」


「そうなの?」



 マリンお母さんは、私にはメモくれずに前世の私に視線を寄せた。今の私は彼女の娘ではなく、ライブに侵入してきた不届き者でしかない。

 どちらを優先するかは明らかだ。


 けど、前世の私が明らかにこちらを意識している。

 マリンも仕方なしという感じに私へ意識を寄せた。



「そういえば、君の名前を聞いていなかったね。名は?」


「ハヤテと言います」


「ハヤテ……お爺ちゃんと同じ!」


「私と同じ名前を持つ。じゃあ貴方が?」


「どこの誰と比べられているかはわからないが。アキカゼ・ハヤテという存在なら私がその当人だよ、お嬢さん」



 流石に同名をそのまま呼ぶことはしないか。

 その上でお嬢さんと呼ぶ。

 向こうは私を私だと認識していないんだ。


 当たり前か。

 私だけが一方的に知っているだけ。

 向こうは私を知覚していない。

 つまりは情報をもとに作られた存在であるともいえた。

 ここは厳密な過去ではない。

 情報をもとに作られた世界でしかない。



「お嬢さん。私にいい考えがある。少しお付き合い願えるかね?」


「えっと?」



 胡散臭い誘いだと思った。

 だが、前世の私がどんなに荒唐無稽な人間かなんて、当の本人が一番理解している。



「お爺ちゃんの言うことは絶対だよ! 最初はちょっと胡散臭く聞こえるけど、あたしは従って損をしたことないもん」


「あっはっは。マリン、それは私を褒めているのかな? 貶めているのかな?」


「もちろん、褒めてるよ!」


「よくわかりませんが、アキカゼさんに従えばうまく行くんですね?」


「そうなるように努力はするつもりさ」



 意地悪な出題者もいたものだ。

 薄く笑いながら、彼の提案をパーティチャットで現メンバーに伝えた。



ハヤテ :昔の偉人が参戦してくれることになったよ!


トキ  :お母さんと一緒に参戦かぁ!


ミルモ :うちのお母さんは?


アキル :うちのお母さんはまだゲームで遊んでないかな?



 居るとは思うけど、ここにはいないんじゃないかな?

 本当に、私をその気にさせるためだけに用意された舞台だ。

 都合よく全員の親族が揃うなんてことは……


 そう思っていた矢先、空間が歪んだ。



「あーあー、あんたって人は騒ぎの中心に絶対いるんだから」


「シグレちゃん?」



 ミルモ :お母さんだ!



「マリンちゃん! 何か手伝えることがあったら言ってね!」


「ルリちゃん! 助かる!」



 アキル :うちのお母さんも出てきた


 トキ  :すごい! まるでドリームマッチだ!



 お姉ちゃんたちは大興奮。

 戦闘をしながらレイちゃんがほくそ笑んでいる。

 粋な計らいをしちゃって!


 それから、アキカゼ・ハヤテの作戦立案を共有。

 もりもりハンバーグお爺ちゃんが参戦!

 オクトお爺ちゃんや、パープルお爺ちゃんまで。

 要はレイちゃんが一度でもあったプレイヤーが一堂に集まって、一緒に討伐戦に参加した。


 お姉ちゃんじゃないけど、これはドリームチームのようだった。


 過去にこのメンバーと一緒に行動したことなんてないというのにね。

 そりゃ個人でのお付き合いはしてたさ。

 けど集団行動に向かないメンバーがほとんどだから。

 なんで生産職のオクトお爺ちゃんまでバトルに出張ってきてるのやら。



 ミルモ :お母さん!


 トキ  :こっちの声は聞こえてないのかな?


 アキル :この状況に関与できるのはハヤテちゃんだけなのかも


 トキ  :ハヤっちだけずるいー

     :あたしもお母さんとおしゃべりしたいのにー



 代われるんならいくらでも代わってあげたいよ、こっちとしては。



 ハヤテ :今はそれどころじゃないでしょ

     :演奏が途切れたらお母さんたち苦戦しちゃうよ


 トキ  :それはやばいね


 ミルモ :よーし、自動演奏に合唱まで入れるよ


 アキル :がんばるね


 ハヤテ :え、合唱って私も?

     :パッキングという大仕事を請け負ってるんだけど


 トキ  :がんば



 めっちゃ人ごとでマルチタスクを託された。

 くっそー!



「ふむ。この音楽はチェインも繋ぐのか。ますます興味深い」



 そして、私たちの音楽の特性にアキカゼ・ハヤテが気がついた。一番に気づくのはやはりこの人だ。

 それくらい、レイちゃんの中では伝説になっているんだね。



「これは使えるね。マリン!」


「何、お爺ちゃん?」


「彼女たちの音楽はチェインとしてつながる! うまいこと差し込めば攻撃の威力を上げられるぞ」


「それはありがたいね! お爺ちゃんは合わせられる?」


「拙い攻撃で申し訳ないけどね!」



 取り出したのはアトランティス陣営に所属した時のジョブ、テイマーで使役したヘビーを取り出した。

 そこに自前のレムリアの器を取り出す。



「お嬢さん!」


「ラー、らららー!」



 ヤケクソだった。

 歌を歌いながら、パッキングのタイミングを合わせる。

 形がうまく定まらない。

 それでもアキカゼ・ハヤテの影踏みがマリンお母さんの攻撃体制を整えた。



「マリン、集中砲火だ!」


「全力で行くよ『霊装』もつけちゃう! 銀姫の騎士!」


 超加速、もとい瞬間移動での切り付け!

 中にはド・マリー二の野菜ジュースが少量内包されている。

 逃げ出すほどの量は仕込まれていない。

 数が多いので、



「チェックメイトだ! ヘビー、レーザー攻撃」


[キュォオオオオオオオオン]



 特大級の蛇の目からは極大なビームが照射。

 小さなパッケージに熱源が収束していき、やがてその莫大すぎる耐久は0になる。



「1匹撃破! あと9匹!」



 作業、というにはそれなりに手間をかけた戦闘。

 全ての作業を終える頃には、結構な時間を経過させていた。


 バトルリザルトには大量の記憶のかけらに、スキルパーツ(白)の文字。

 数は1こと多いが、使い道は一つしかない時点で宝の持ち腐れは確定だった。


 戦闘終了とともに、私たちは元の世界に戻ってきていた。

 白昼夢にしては、随分と危険な夢だった。

 普通に全滅もありえた。



「|◉〻◉)戦闘お疲れ様でした、みなさん!」


 

 レイちゃんだけがニコニコ顔で、わたしたちに声をかけていた。何はともあれ、恋1日を体験したことは確かである。


 またリノちゃんに土産話をしなきゃいけない。

 そして、その執筆者はやや放心気味にさっきまで起きた現象をどう言語化するかで悩んでいた。



「みんな、毎回こんな濃いプレイしてんの?」


「流石に今回ほど濃いプレイは」


「前回も相当だったよ?」


「そうだっけ?」


「|◉〻◉)ある意味してるとも言えるし、してないとも言えますね」


「結局どっちなのさー」



 当初はどうなることかと思われたアキルちゃんとの遊ぶ約束は、出会った当時はこうなるとは思えないエンディングを迎えて解散となった。


 ミッションコンプリート、というにはあまりにもいろんな出来事が起こりすぎた。

 スキルパーツの取得だけでは終わらない。

 過去へのジャンプに、偉人との共闘。

 普通に遊んでいたらまず体験しないようなことが1日のうちで何回も起こった。


 だというのに、次もまた遊ぼうと約束をしてくれた。

 タフだなぁ、と思う。


 私だったら付き合いを考えるレベルだよ?

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