56話 お母さんは心配性
無言で着いてきてと示すアキルちゃんの後を、私たちはイツメンによる『AWO吟遊詩人』でチャットをしながらついていく。
そこへ、お母さんから『ママ友の集い』のチャットへ招待された。
その状況を、許可をとってから『AWO吟遊詩人』へ反映させる。
ハヤテ :お母さんからだ
トキ :なんて?
ハヤテ :アキルちゃんは気難しい子だけど悪い子じゃないからって
ミルモ :悪いかどうかはまだ決めかねてる感じだよね
レイ :|◉〻◉)まだ何も分かってない状況だからね
ハヤテ :と、いうことでお母さんをここに呼んでも大丈夫かな?
ミルモ :うーん
トキ :うーん
この反応の悪さ。
子供の遊びに親がでしゃばってきて欲しくないという現れな気がする。
レイ :|ー〻ー)親戚のお姉ちゃんも来そうだから僕はパスで
ああ、先生。
あの一回のやり取りでここまで嫌われたか。
確かにあの決めつけるような物言いは人を選ぶよね。
ハヤテ :分かったよ
:誘わない
:でも向こうからの情報はここで伝えるね
トキ :オッケー
ミルモ :オッケー
レイ :|⌒〻⌒)はーい
それで合意となった。
ハヤテ :ごめん、お姉ちゃんたちはお母さんを呼びたくないみたいで断られちゃった
マリン :まぁ!
ルリ :仕方ないと思うな
:子供は子供のままで遊びたいと思うもの
ハヤテ :じゃあなんで私には連絡を?
マリン :ハヤテちゃんの中身がおじいちゃんであることはもうお話し済みだから
ハヤテ :プライベート!
ルリ :あはは
笑い事じゃないよ、全く。
しかし、家ではおとなしい娘を気にかける母親の気持ちもわかるというもの。
お姉ちゃんを近くで見ている私も、ある意味では大人として頼られているのだろう。
そういう意味では子供と大人の中間地点のようなものだった。
ルリ :現状あの子は他の子からなんて思われてるの?
ハヤテ :もう少し事前にお話ししたほうがいいなーって
マリン :それは少し思ったわ
:あまりにも自分勝手
:あまり印象良くないかも
ハヤテ :お姉ちゃんからは私で慣れてるって
:そう言われて非常に不愉快
マリン :それはねー
ルリ :ブログ、拝見したけど
:相変わらずなんだ?
そんな気安い感じで話しかけられても、私とルリおばちゃんてあまり接点ないんだけどね。
ハヤテ :そこはなんとも
:私は普通に遊んでるだけ
:怪異の方が呼んでないのにくるのが悪い
マリン :むしろ呼び込んでいるのがハヤテちゃん
:のように見えるけど?
ルリ :うふふ
そんな軽い雑談を交えつつ。
マリン :それじゃあ私たちは
:こっそりのぞいてるから
:うまいことやってちょうだい
ルリ :あの子がこのゲームを継続して遊べるかは
:今日にかかってるから
ハヤテ :私の小さな肩に
:そんな重いミッションがかかってるの!?
ふぁいとー、なんて気の抜けた応援を浴びつつ。
私はチャットを開いたままメンバーの元に戻ってきた。
ハヤテ :お母さんたち、こっそり着いてきてるって
トキ :なぬ!?
ミルモ :これはバカな真似できないやつだ
ハヤテ :ちなみにミルちゃんのお母さんにも連絡行くって
ミルモ :今からめちゃくちゃに走って撒かない?
トキ :賛成!
レイ :|◉〻◉)僕、かけっこはあまり得意じゃ
トキ :泳いで! ハヤテも泳いで撒くよ
ハヤテ :最後まで聞いて!
一体ゲームの中でどんな悪さをするつもりなのだろうか、この子達は。
ハヤテ :そこでミルちゃんに相談なんだけど
ミルモ :何かな?
ハヤテ :ミルちゃんに今回に限り、アキルちゃんの様子を撮影して欲しいとオファーがあってね
ミルモ :タダじゃなー
その態度、ミルちゃんのお母さんに逐一報告するよ?
それはさておき、当然報酬ももらってある。
ハヤテ :もちろんタダじゃないよ。報酬の提示もある
ミルモ :物による
ハヤテ :何かトラブルに巻き込まれても30回まで知らんぷりしてくれる権利
トキ :すぐに使い果たしそう
ミルモ :あんまり些細なことに使いたくないやつじゃん。本当になんでもいいの? 規模は?
ハヤテ :前回おじいちゃんたちにおねだりした規模を一回にカウントするレベルだって
トキ :何かしてもらったっけ?
ハヤテ :ほら、スキルチェンジャー
ミルモ :ああ、買えば高いんだっけ?
ハヤテ :アベレージ一億だったかな?
トキ :は?
ミルモ :は?
ハヤテ :あ、金額言ってなかったっけ? 私達はそれぞれトータルで5個貰い受けてるんだよね
トキ :これ、言い逃れできないやつだよ
:どうするミルっち
ミルモ :すっかり機会を失ってた過去の産物が
:トータル5億!?
そっちの方が衝撃的だよ、と慄くミルちゃん。
わかるよ。
つまり今回は一回5億までの補填をトータル30回してくれる権利を得たわけだ。
ハヤテ :引き受けてくれないとお母さん
:チクるかもしれないって
トキ :脅しなんだよなー
ミルモ :分かった分かった!
:引き受けるよ!
:どっちみちあたしにはそれしか道がないんでしょ?
ハヤテ :聞き分けが良くて助かった
:実際隠し撮りはミルちゃんぐらいしか適任者がいなくてさ
トキ :隠し撮りとか聞きずてならないね
ミルモ :激しく同意
ハヤテ :ちなみにこのプロジェクトは、途中退場できません!
ミルモ :だめじゃん、この話来た時点で逃げ隠れできないじゃん!
トキ :骨は拾ってあげるから
こうして私たちはこそこそ隠れるお母さん達から『近場で、コミュニケーション能力を磨けるようになるまで、楽しくゲームをするサポート』つまりはVR初めてのお使いのミッションを賜ったのである。
成功報酬の破格さより、失敗した時のリスクが高すぎるという強迫観念に突き動かされた私たちは、アキルちゃんの案内のもと、件のダンジョンに辿り着いた。
ここで鉱石の採掘、そしてモンスターとの戦闘を行うが。
問題はこのパーティメンバーに戦闘ができる人(?)がレイちゃんしかいないって点なんだよね。




