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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
『VR初めてのお使い』<10日目・昼>

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55話 アキルちゃんは友達が少ない

「お母さんお母さん! お昼ご飯は何?」


「あらトキちゃん。今日も元気いっぱいね」


「|◉〻◉)お姉ちゃんはそれだけが取り柄だからね。長期休み中と言っても課題は出てるのに、朝からゲーム三昧だよ」


「ちょっとハヤテ、気が滅入ること言わないで!」


「そうよ、ハヤテ。宿題は二学期までに間に合えばいいの」



 似たもの親子である。

 まぁ夏休みが始まって2日目のお昼。

 休みはまだまだ潤沢だ。

 今から焦る必要はないと言われてるような気がした。



「そんなことより、あなた達。朝から随分と大冒険をしてきたみたいじゃない」


「え、なんで知ってるの?」


「お母さんとシズラさんはお友達よ? 話くらい聞いてるわ。今日は金策に勤しんでたって?」


「そうなんだよね。めちゃくちゃ儲かる予定だったの」


「|◉〻◉)なぜか知らないけど周りでもたくさん取れてて結局稼ぎにはならなかったんだよね」


「そこなんだよねー」



 本当は全部知ってるお母さん。

 シズラさんが話してくれただなんて嘘っぱちだ。

 それでも知ってそうな範囲を裏でやりとりしてるんだろうね。

 会話でボロを出さないように。


 リアルでのお昼ご飯は冷やし中華。

 お姉ちゃんは苦手なきゅうりを皿の端に寄せてカニカマから先に頬張り始める。

 酸味の効いたタレはお姉ちゃん用にめちゃくちゃ薄くした上で、ごまドレッシングがかけられてあった。

 こうしないと食べないのは承知の上での配慮である。



「きゅうりはハヤテにあげるー」


「|◉〻◉)私、いつから河童になったの?」


「河童って何?


「確かきゅうりが好物な妖怪だったかしら」


「ハヤテは博識だねー」


「|ー〻ー)そもそも歯がないから食べられないんだよね。丈夫な胃袋も欲しい」


「そう言うのは搭載予定にないわ。なので責任もってトキが食べなさい」


「はーい」



 さっきまでの明るい雰囲気はどこへやら。

 きゅうりを頬張っているときの姉は宇宙の真理を知った猫のように真顔で咀嚼を開始した。

 そんなに嫌いか。

 味噌をつけて食べたら美味しいのに。


 これは一緒に遊ぶ私が姉を改心させてやらないと。

 謎の使命に燃えつつ食事は終了。

 お昼から遊ぶ子の特徴を教えてもらう。



「アキルちゃんはねーものづくりが得意な子なの」


「ハヤテと一緒だね」


「|◉〻◉)ちょっと興味出てきた」


「生産といってもアクセサリーとかそう言うのよ? 貴金属とか、ブレスレットとかそう言う工芸品。なぜか参加するパーティが毎度解散の憂き目に会うらしいの」


「気難しい子なの?」


「素材要求が激しい子らしくて。その代わり、作り上げる商品は本当に高品質らしいわ」


「|ー〻ー)職人肌なんだ?」



 なぜか私にジッとした視線が集まる。

 気のせいかな?

 人形だとゲームほど直感は働かないものである。



「別に素材くらい分けてあげたらいいのに」


「|◉〻◉)求めてるのは赤のスキルパーツって言われたら?」


「あー、ちょっとお昼の戦力じゃ無理かもね」


「スキルパーツって何?」


「良くわかってないフレーバーアイテムかな? まだストックあるから後でお母さんにもあげるね?」


「助かるわ」



 そんなこんなで二度目のログイン。

 待ち合わせ場所にはやたらハイテンションなお母さんが二人。



「ルリちゃーん!」


「マリンちゃーん!」



 大きく手を挙げながら小走りで駆け寄ってハグ。

 今どきここまで大袈裟な挙動をする親なんてそうそう見ない。

 女子のノリというやつだろうか?


 対する子供達は、それを遠目に若干引いているのが現実である。

 お母さんはほら、顔が売れてるもんだから周囲からの視線がね。



「紹介するわ、うちの娘のトキとハヤテよ」


「よろしくね、トキちゃん、ハヤテちゃん。ほらあなたも自己紹介なさい」


「アキルよ。年齢は私の方がお姉ちゃんだから、ちゃんと言うこと聞くのよ?」



 初手威圧である。

 年上というように年齢は16歳。

 華の女子高生であった。



「アキルちゃん! よろしくね」


「お姉ちゃんはこんなんだけど合わせてよろしくお願いします」


「ちょ、ハヤテ?」



 急にハシゴ外すのやめて! と非難の声。

 それを見ながらもどこか羨ましそうな顔をされた。


 

「よろしく。正直どんな子が来るのかと思ってたけど、ハーフマリナーとはね」


「ハーフマリナーは嫌だった?」


「問題ないよ。ちょっと今高難度の採取クエスト中で、戦力はいくらでも欲しいところだったの」


「そうなんだー」



 私とお姉ちゃんはニコニコしながら内心どうする? 打ち明ける? みたいなアイコンタクトを飛ばしあう。

 今回の参加メンバーは全員非戦闘員。

 直接的な攻撃スキルを持たない賑やかしであった。



「後もう一人待ち合わせてる子がいるんだー」


「どんな子?」


「シルキーの女の子だよ」


「シルキーかぁ」



 明らかに残念そうな顔。

 本当に戦力でしかプレイヤーを見てないんだなぁ。

 残念というか、人によって得手不得手はあるだろうに。

 効率優先! という態度が透けて見える子だった。



「まぁまぁ、ミルちゃんもバッファーとしては優秀だから」


「うんうん、それを上回ってやかましいけどね」


「うるさい子かー。ちょっと合わないかも」



 うるささで言えばうちのお姉ちゃんも相当なんだけど、どうも本人は自覚がないようだ。

 それはあれかな? ミルちゃんと比べたら自分はマシと思ってる証拠だろう。


 ミルちゃんが工事現場の騒音レベルなら、お姉ちゃんは真夏の蝉の騒音だ。

 リアルで体験したことのない世代だから知らなくて仕方はないと思うけど。



「待たせたかね? チミ達」


「あ、きたきた」


「この偉そうな子が?」


「およ、そっちのドワーフが今日の遊び相手?」


「アキルよ」


「ミルモだよー。ミルっちって呼んでね」


「よろしくミルモ」


「もー、ノリが悪いぞ? そう言えば今日レイっちは?」


「まだ他にも人が?」


「ううん、良く遭遇するNPCなんだ。私たちのログインに合わせて接触してくるんだけど、今日はまだ本当に見かけないね」




 レイ  :|◎〻◎)これ、私が参加してもいいんでしょうか?




 そのタイミングでフレンドチャット。



 レイ  :|◉〻◉)【ヒント】右斜め前の露天席で食事中



 居た! 今日は前回脱ぎ捨てた着ぐるみはきてない女の子モードだった。

 もしかして修復が間に合ってないのかな?

 それとヒントを出すってことは見つけて欲しいのかもしれない。



「今連絡が来たよ。ちょうど食事中ですぐ近くにいるから一緒にENを回復させようって」


「NPCなのにENを?」


「戦闘要因なんだよね」



 もしかしたらこのパーティで一番強いまである。

 なぜかド・マリーニでは戦闘しなかったけど。

 もしかしてイベントの効力で戦闘に参加できない制約があった?

 いや、最初から私たちが彼女を戦力として見てなかったのかもしれない。



「なるほど、誘いましょう!」


「それじゃあお母さん達はこの辺で」


「ええ、積もる話もあるし」



 そういって、お母さん達は近くのレストランにフェードアウトして行った。

 あとは若いもの同士でよろしくしてやってという流れだろう。

 いや、女の子同士で遊ぶだけでそこまでの意味はないけどもさ。



「あなたがレイ?」


「そういうあなたは?」


「後ろのふ二人と今日遊ぶ約束をしたアキルよ。あなた、戦えるんですって?」


「槍技には心得があります。戦えるといってもどれほどのものをご所望かはわかりませんが」


「戦えたらそれでいいわ」


「はぁ」

 


 いきなり話しかけてきて、戦闘要因として確保はあまりにも会話が無さすぎる。


 お母さんが言うように、これはパーティクラッシャーの素質が有り余る。

 最初から仲良くする気なんてこれっぽっちもないと言われてるみたいに感じちゃうからね。

 ミルちゃんも思うところがあるようにいきなりフレンドチャットで愚痴をこぼした。



 ミルモ :この子何様のつもりなの?


 トキ  :初手から上から目線だったよ


 ハヤテ :まぁまぁこんな性格だからどこでもうまくいかなかったみたいで


 ミルモ :あたしもちょっと苦手なタイプかも


 ハヤテ :多分リノちゃんなら話が通じると思うんだよね。阿吽の呼吸っていうの?


 トキ  :肝心な時にいないんだよね、リノっち


 レイ  :|◉〻◉)僕たちで接待してあげればいいんでしょうか?


 ハヤテ :最初はそうだね


 トキ  :今日はアキルちゃんに振り回されるの決定かー


 ミルモ :普段はハヤっちに振り回されてるもんね、あたし達


 ハヤテ :えっ?



 何それ知らない。

 このパーティの常識人枠だと思ってたのって実は私だけだった?

 衝撃の真実を知り、目の前が暗くなる。



 トキ  :えっ


 ミルモ :まさかハヤっち、自覚なし?


 レイ  :|◉〻◉)振り回してる本人は案外無自覚のことが多いですもんね


 ハヤテ :だねー



 これ以上ボロが出る前にフレンドチャットから撤退。

 私たちは待ち合わせ場所のファストリアからセカンドルナに向いて歩いた。


 一応セカンドルナに入ったことはあるが、向かう先は街では無さそうだ。

 先導するアキルちゃんがあまりにも無口な為、私の方から質問をする。


 

「これはどこに向かってるの?」


「鉱石が取れるところ。でもモンスターが出てきて邪魔されちゃう」


「なるほど。そのモンスターを私たちが討伐する感じで?」


「うん。できる?」


「できなくはないけど、連れてくる前にそこら辺を教えて欲しかったな」


「ごめん。でも採掘は早く済ませておきたかった。ああ、説明が面倒くさい。色々察して」



 トキ  :アキルちゃんは察してちゃんか


 ミルモ :まだ自己紹介らしい自己紹介もしてないのに?


 レイ  :|ー〻ー)これは骨が折れるやつだね


 ハヤテ :逆にリノちゃんはどうやって誘ったの?



 お姉ちゃんやミルちゃんとは対極にいる存在だ。

 どうやって誘って仲良くなったのか謎だった。

 


 トキ  :この話やめよっか?


 ミルモ :さんせー



 明らかに聞かれたくないといった感じ。

 まさか脅して従わせてるとかじゃないよね?

 リノちゃんも困って入るけど、無理矢理誘われて遊んでる風でもなかったし。

 謎は深まる一方だった。

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