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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
【ハヤテの章】7/28【火】AWO通常プレイ

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52話 異界農園ド・マリーニ

「着きました」



 イースさんからの呼びかけに応じた時、気がつけば異世界。

 いや、異空間と言った方が正しいか。

 明らかに先程までいたセカンドルナとは情景が異なる。

 言葉通り、特別な空間なのだろう。



「ここが私の農園です。錬金工房を見せましょう、こっちです」



 トキ  :なになになに? 何が起こったの?


 ミルモ :気がついたらパッキングされてた!

     :ハヤっち、説明を求む!


 リノ  :ハヤちゃんは何か知ってるの?

     :この現象について


 ハヤテ :あー、なんていうか

     :うまく説明はできないけど、怖いところだよ

     

 トキ  :見たところ普通の畑っぽいけど?



 と、お姉ちゃんにはそう見えるのか。

 私はその実態をあまりにリアルに見抜くことができている。

 ここにある木々は、イ=スの民そのものだ。

 

 霊魂、精神データとでも言うべきか。

 それらがそこら辺の野菜に宿っている。

 ほら、そこの人参がこっちみた!

 

 ギョロっとした目がついてる。

 気のせいじゃない!


 これ絶対アイディアロールを成功したパターンだ。

 幸運ステータスが高すぎるのも厄介な場所だよな、と思いつつイースさんに誘われて錬金工房へ。



「ここで肥料を作ってるの」


「材料はさっきの命のかけらだけで良いんですか?」


「それ以外は畑で取れるからね。お祖父様はそうやって先祖の霊を鎮めていたわ」


「先祖の霊を、鎮めるための肥料なんですか?」



 聞いていた話と違うぞ?

 この肥料を用いなければ、報酬のアイテムを生産できないという話だったはずだが。



「そうね。私たちは恩義あるプレイヤー『アキカゼ・ハヤテ』の帰還を望んでいる。あなたはその人のことを知らないかしら?」


「詳しくは」


「そう、時の流れとは残酷ね」



 トキ  :アキカゼ・ハヤテってあれだよね?

     :私たちの曽祖父ちゃん!

  

 リノ  :そんな人がどうして?


 ミルモ :お母さんから聞いたことあるよ

     :なんでもものすごい人だったとか

     :私はちょっと気になるなその人がNPCにどこまでの影響力を持っていたか


 トキ  :ミルっちはブログのネタにする気満々なだけでしょ?


 リノ  :そういえばブログ当番だったね


 ミルモ :ち、ちち違わーい!



 この慌てぶり、図星だな?

 何はともあれ【錬金】の真髄を見れるチャンス!

 逃す手はない。



 ハヤテ :これから錬金の秘匿レシピを教えてもらうから、ミルちゃんたちはここでお昼休憩してて


 トキ  :お昼は食べたばかりなんだけどね?


 リノ  :暇なのは確かだよ


 ミルモ :なんだかすでにお腹すいてるけど


 トキ  :そういえば小腹が


 リノ  :ここはハヤちゃんの要望に応えておくべきところ!



 みんなすっかり空腹って感じだ。

 私は料理を封じ込めたパッキングとお姉ちゃんたちを緊急避難させたパッキングに別のパッキングを被せて、その二つを解放すると言う荒技をこなした。

 中では料理が突然出てきた感じだろうか。

 

 

 ミルモ :なんかお料理巨大化してない?


 トキ  :それ、思った


 リノ  :いっぱい食べれていいね!

     :ハヤちゃんのお料理美味しいから


 トキ  :あげないよ?


 ミルモ :そこをなんとか!


 リノ  :なんとか!



 料理が巨大化する?

 そんな現象あっただろうか?


 それともこの空間が不安定で、予想だにしないことができているのかもしれない。


 まぁ、この三人は食い尽くし系なので多少多くある分には平気か。


 なぜか最後には私を奪い合う構図が生まれていて笑った。

 私は誰のものでもないよ?


 こんな他愛のない話題で盛り上がれるのもある意味今のうちだけだろうね。



「随分と楽しそうね。そういえば、他の三人は?」


「少しここは刺激が強すぎるので、別の場所に隔離させてもらっています。料理スキルの【パッキング】と言うものなんですけどね?」


「料理スキル……あいにくと門外漢だわ」


「知るだけで世界が変わりますよ?」


「必要ない、と言いたいところだけど。せっかくの機会だわ。こうして知り合えた縁を大切にしないといけないわね」



 この人はどこかおとなしそうな雰囲気の中に絶対に曲がらない芯の太さを併せ持つ人だった。

 特に【錬金】に関する知識が豊富で、いくつかの『禁忌』に触れることにも果敢に挑む傾向にある。


 今回教わったレシピもまた、その類だった。



「できました!」


「本当に一回で成功させてしまうのね。私なんてこれを成功させるまで軽く二年はつぎ込んだわよ? それを見ようみまねで一回でなんてされたら……」



 軽く嫉妬してしまうわ、とイースさん。

 こればかりはこの肉体スペックのなせる技。

 お姉ちゃんの幸運体質によるとしか思えないんだよね。


 本人が全くその事実に気がついていないと言う不幸はあるけども。



「あとはこの肥料を撒くだけですね!」


「本当はそれだけではダメなのよね」


「そうなんですか?」


「あともう一つ、何か切っ掛けが欲しいところなの。どうにもここ最近、祖先の霊が活発化していて。畑の野菜も異形化してしまっているのよ」


「やっぱりあれ幻覚じゃなかったんですね」



 ミルモ :幻覚って何?

     :そこんところ詳しく!


 トキ  :私も知りたい!


 ハヤテ :【画像】こんな感じ




 私はギョロッとした目がついたにんじんや大根、ピーマンなどの画像を提供した。



 ミルモ :きっも!


 トキ  :うぇ、もしかしてここの農園のお野菜全部これ!?


 リノ  :ハヤちゃんはいち早くこれに気がついて私たちを非難させてくれたんだね


 ミルモ :パッキングの正体見破ったり!


 ハヤテ :もし大丈夫なようなら解放するけど?


 トキ  :すいません調子こきました


 リノ  :ミルちゃんは後で縛り付けておくから解放するのは許して


 ハヤテ :まぁここにいる間はパッキング最優先ってところで


 ミルモ :助かるー


 トキ  :今はハヤテの食事で目の保養しておくね


 リノ  :さんせー



 チャットでは賑やかに食事しているようだ。

 何でもかんでも見えることはあまりよくないことも見えてしまうからね。

 アイディアロールは振らせないこともこっちの世界あるあるだし。



「大丈夫? 一人で表情が忙しい感じだけど」


「一緒に来た子と連絡のやり取りをしていて」


「あらそうなの。いなくなった人と連絡ができるのね、羨ましい限りだわ」


「そういえば、この肥料の使い道も教えてください」


「本当にチャレンジ精神旺盛ね。いいわ、ここに連れてきてしまった以上、黙って返すわけにもいかないから」



 そう言ってイースさんは農園のど真ん中に聳え立つ、その場に不釣り合いな大木な根元を掘ってそこに肥料を撒いた。

 結構な重労働だ。

 私も率先して手伝い、穴を掘る。



「普段ならこれで落ち着いてくれるのだけど……きたわね」



 突如ガラスが割れるイメージ。

 そして現れたのは真っ赤な色味のハウンド/シャドウ型だった。

 これじゃあ、見つけてくださいと言ってるようなものだ。

 潜む影、どこにもなくない?



 ミルモ :戦闘?


 トキ  :もしかしてこれ?


 レイ  :|◉〻◉)あ、こいつです! 赤いスキルパーツ落とすの!


 リノ  :ここであったが百年目!


 ミルモ :ハヤっち、解放してくれていいよ!



 さっきまで表に出ることを嫌がっていた女子中学生たち。


 しかし、そこにお目当てのドロップアイテムを落とす敵が現れたのなら話は別である。


 レイちゃんもさっきまでいなかったのに、急に存在感を出してきたよね。


 もしかしてずっとこのチャンスをうかがってた?

 まさかね。


 私はミルちゃんたちを解放、戦闘に入った。


 それぞれの楽器を用い、音楽を奏でる。

 最初こそは何も通用してない感じだったけど、私とお姉ちゃんの合唱で動きを止めた。

 やがてブルブルと震えたあと、それは突然巨大化。


 さっきよりも俊敏に動いて私たちを引っ掻きまわす。

 私たちは楽曲の手を止めてバラバラに分断された。



「こいつ、強い!」


「まずはわたしが斬ってみる!」


「手を貸すわよ」



 今やこの農園を悩ませている赤いシャドウハウンド。

 攻撃は相も変わらずSP吸収の噛みつき攻撃。

 さっき回復したENも吸収しちゃう、プレイヤーを一番殺してきたモブの代表格。


 飛び出すリノちゃん。

 それに合わせてイースさんが弦楽器の代表であるバイオリンを持ち出した。


 まだぎこちない音律。 しかしそれがシャドウハウンドの動きを止めた。


 私たちの楽器での演奏も同様だ。

 ただ、歌を合わせると急に元気になるのが曲者か。



「もしかしてこいつ、あたしたちの歌でげんきになってる?」


「まさか」



 まさかとは思う。



「こんなことは初めてよ。私も色々試したけど、こいつは鈍い音が嫌いみたいなの。だからこう言うのを引っ張り出して撃退してるのだけど」



 歌うことで私たちのバフの恩恵を受けてしまったようだ。

 奇しくもそれは、リノちゃんに向けたバフと同様に。

 力と敏捷を増加させるものだった。



「よかった。これぐらい強い方が張り合いが持てる」



 ただそれ以上に、リノちゃんが侍気質だったのが意外だった。


 結局私たち三人はチェイン要因で実際に戦ってるのは彼女だけだからね。


 音で翻弄し、隙を作り。歌でバフを撒くことしかできないが、それでバトルジャンキーのリノちゃんが満足できたのならよかった。


 特に最近覚えたての【一閃】と【瞬歩】を用いてシャドウハウンドを追い詰めたのがあまりにも格好良くて惚れてしまう感じだったよね。


 戦う女の子もいいよね。

 ミルちゃんはその様子を激写。


 お姉ちゃんと私は応援歌を歌って一人戦場で戦う彼女の勝利を見守った。

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