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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
『AWOパッキング同好会』<9日目・夜>
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42話 孫世代

「パッキング!からの水圧調理!」


「お見事!」



 メガロドンの封じ込めてるパックの上からドリームランドの素材をパーティメンバーごと封入。

 メガロドンを解放することで空間を水圧状態に、かつドリームランド生物に溺水状態を付与した。

 そこへ水圧調理と調味料、料理スキルなんかを合わせて、戦闘は終了した。

 素材となったムーンビーストは後で美味しくいただくとしよう。

 ここはレン高原からほど近いので、眷属が生息しているのだ。



「これ、普通にバトルしても強くない?」


「料理スキルとは果たしてなんなのか、僕にもわからなくなってきたよ」


「私もです。こんなに強いんなら取得しておくべきだったと」


「地味に水圧調理が強すぎるんだよね。これ、普通に戦闘スキルだと思うんだ」


「いや、絶対に違うと思うわ」


「うん、こればかりは僕もマリンちゃんに同意する」


「えっ」



 みんなして一斉に私に白い目を向け始める。

 強いのはスキルで私ではないよね?

 あれー?



「まず最初に、ハヤテちゃん」


「はい」


「パッキングを便利に扱いすぎ。感覚としてはどういう感じで扱ってるの?」


「どうって、掌握領域の感覚で」


「それだ! なんでパッキングの中で意識剥奪とか料理スキルの融合とか起きてると思ったら」


「え、普通はそうしない? だってこれ料理スキルだよね? それで水圧調理って水の中で生きてる魚を相手に振るうからてっきり」



 戦闘スキルだと思ったと自白。



「それで、水圧調理も神格召喚の『権能』の感覚で使ってると?」


「やったらできたから」


「これは変な噂が広まらないのを防ぐしかないわね」


「お義父さんならではの発展系か。確かにこれは呼びかけが必要かな」


「一応ブログも書いてるんだよね」



 ネクロノミコンになりようがないものだけど。

 しかしそれに対して、出た言葉があまりにもひどかった。



「未来のネクロノミコン予備軍か」


「みんなしてひどくない?」



 女の子がその一瞬一瞬を切り取ってる青春の一ページを決めつけてさ。



「そんなふうに言うんだったらフレンド申請しないから!」



 ツーン、と頬を膨らませて視線を合わせないようにした。



「ああ、ごめん。絶対ではないけど、毎回こんなことをしてたら怪異の方からやってくると思っての配慮さ。それにブログがネクロノミコンになるのだったら、そう言う意味でも呼びかけは必要だ。ドリームランド関連はオクト君だけでは手が回らないだろう?」


「私も毎日はログインできないですし」


「そう言う意味でも、僕は協力できると思う。ドリームランドに用があるなら僕に頼めばいいし。どうだろう?」



 確かにお母さんは毎日ログインはしてない。

 もりもりハンバーグ君は今暇してるんだろうか?

 毎日ではなくても、ログインしてたら今後頼ることもあるだろうし。



「そこまで言うんだたらしょうがないなぁ」


「瑠璃の子供たちもここで遊んでいるからね。おじいちゃんとしても常に滞在できる配慮をね」


「へぇ、その子達ももうベルト持ちなんだ」


「いや、ベルトはまだ持ってないんだけど」


「え、無駄な時間を過ごしすぎじゃない?」


「ハヤテちゃん、もっと言動をパッキングして」



 オブラートに包んで的な?

 今の時代はそんなものも必要としないか。

 しかし言動のパッキングとは、なかなか上手い例えだ。



「あ、ごめんなさい。こんなに不器用だったかなってちょっと心配になって」


「実際、お義父さんの行動力は素直に脱帽です。娘の子供へどう接していいかわからないもので」


「ならば私で耐性をつかたらいいんじゃないかな?」



 どうだい、名案だと思うな。

 私は今女の子だしね。

 ちょうど立場的にも孫のポジションだし。

 その場で一回転して、ちょっとアピールしてみる。

 しかし下された判決は。



「いや、無理じゃないかと」


「うん、無理ね。だってハヤテちゃん、背後からおじいちゃんが透けて見えるし」


「ええ、何を言っても響かないし、ダメと言ってもやる姿はまさにお義父さんで、なんの参考にもならないというか」


「そんなに言うなら、ログアウトするよ!」



 そんなのあんまりだ。

 私なりに頑張っての提案なのに。



「わー、ごめんってば」


「こういう先の読めない感じは今時の子っぽいかも? いっそトキっぽく振る舞ってみるとか?」


「お姉ちゃんの?」



 あのズボラな活動を?



「それはちょっと」



 スン…と私の顔から感情が削げ落ちる。



「待って、あの子そんなにダメなの?」



 お母さんからしては、及第点だと思っていたらしい。

 けど実態は、私の口からは言動を差し控えていただくほどだ。



「私の口からはなんとも」


「そうなの、私の前ではいい子にしてたのはハヤテちゃんの影響だったのね。普段はどんなふうに過ごしているの?


「普段はね、運動後に体育館倉庫で爆睡してたり、授業中にWBOの掲示板を閲覧してたり、真面目に授業を受けてる感じではないね」


「わーーーーー!」



 お母さんの羞恥心が限界を迎えた。

 話を聞いていたもりもりハンバーグ君も苦い顔だ。



「え、じゃあハヤテちゃんはいつもその尻拭いを?」


「せめて真っ当なお嬢様に見えるくらいのリカバリーを」


「いつも本当にありがとうね。トキにも強く言って聞かせるから」


「あれは言っても聞かないタイプだよ」



 探偵さんと同じ屁理屈屋那。



「なんていうか。お義父さんも大変だね」


「そうだ、よかったらそのお孫さんとお友達になってもりもりハンバーグ君のことをどう思ってるか聞いてみようか?」


「うーん、それはズルしてるみたいで嫌だなぁ」


「じゃあやらない」


「引き下がるのが早すぎる!」



 ここはもっと駆け引きをするところでしょ、と食い下がってくるが。

 今の私は気分屋なのだ。

 昔の感覚で交渉をすると痛い目を見るよ、と暗に匂わせておく。



「なら私から瑠璃ちゃんに連絡を取って、一緒に遊ぶよう呼びかけてみるわよ?」


「そう言う経緯なら、まぁ」


 

 そう言うことになった。



 ドリームランドの滞在時間はまだあるけど、あまり長居してもリアルに悪影響が出るとして一度ログアウト。

 夜間のログインは、それなりに気を使うのだ。

 特にお姉ちゃんの前ではログイン権を消費し切っている手前、ログインしてましたなんて言えないし。



「それじゃあハヤテちゃん、私の方からルリちゃんの方に連絡しておくから」


「|◉〻◉)ノはーい」



 私はスズキさん人形の中で返事をする。



「あ、ハヤテ! どこ行ってたの? ちょと宿題で教えて欲しいところがあったのにいないんだもん」


「|ー〻ー)そこは自分で解かなきゃダメなやつじゃない?」


「自分でとくと頭こんがらがってダメになっちゃうから!」


「|◉〻◉)仕方ないなぁ」



 そんなこんなで夜は更けていく。

 自主性があるんだかないんだか。


 しばらくしてお母さんから連絡があった。

 もりもりハンバーグ君のお孫さんのことだろう。

 明日のお昼からなら余裕があるそうだ。



「|◉〻◉)お姉ちゃん、明日のお昼のログインに紹介したい人がいるってお母さんから」


「え、誰だろ」


「|ー〻ー)なんでも親戚の子らしいよ。私たちと同じ世代なんだって」


「へー」


「|◉〻◉)お母さんは仲良くしてくれたら嬉しいって」


「そんなの余裕! ハヤテも一緒に遊ぶんでしょ?」


「|◉〻◉)もちろん、お姉ちゃんを一人にしておけないからね!」


「それはちょっと聞き捨てならないなぁ」



 その後私はログに『|◎〻◎)グエー死んだンゴ』と言う謎のメッセージを10数回打ち込むことになった。

 心配したお母さんから突撃されるお約束を経て、私は無事解放された。


 お姉ちゃんの暴れっぷりときたら神格と変わりないよ。

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