38話 あまり仲良くない方の親戚
私はお母さんたちを引き連れて、再びギルドに赴いた。
するとそこには列車君がいて。
「|◉〻◉)あれ、懐かしい匂いがする」
全く違う反応を示した。
「先生、きて」
「|◉〻◉)呼ばれて飛び出てじゃジャジャジャーン☆」
うわ、なんか変なの出た!
っていうかあれは幻影?
そういえばお母さんはクトゥルフ陣営だったか。
「|◉〻◉)姉、さん?」
「|◉〻◉)やはり僕の妹でしたか」
妹!?
列車君女の子だったの!?
いや、サハギンの性別なんて見分けつかないけど。
でもそっかー、姉妹か。
変なところで納得しちゃったよ。
「えーと、列車君はその人と知り合いなの?」
「|ー〻ー)はい。僕のたくさんいる、あまり親しくない方の姉です」
「|◎〻◎)ガビーン!」
先生と名乗ったサハギンはものすごく驚いている。
姉妹であっても、数が多すぎればこういうこともあるのか。
悲しいなぁ。
「先生、他の姉妹とコミュニケーション取ってなかったの?」
「|◉〻◉)僕はマリンさん専用幻影なので。サポート範囲は自ずとマリンさん周りで固められちゃうんですよね」
「つまり列車君も誰かの幻影候補であると?」
「|◉〻◉)じー」
なんかじっと見られちゃってるんですけど。
もしかして、これ私に目をつけてる?
勘弁してよ。
お姉ちゃんとかどう? とっても魅力的だと思うなー。
なんて。
「えっと、そんなわけでまたアクアリアに連れてってもらうことは可能かな?」
「|ー〻ー)問題ないです。むしろ僕の拠点を姉さんに見せるのはちょっと恥ずかしいというか」
「|◉〻◉)えっちな本とか隠してると?」
サハギンのそういう系の本が!?
「|◉〻◉)ほら、こういうデリカシーのなさが疎遠になったきっかけというか」
「先生!」
「|ー〻ー)違うんだよー。落ち込んでる場の空気を明るくしようと軽くギャグを」
「求めてないので、次からしないでもらっていいですか?」
「|ー〻ー)はい……」
先生は黙り込んだ。
やはり上から強くいうことでイニシアチブを取ることができる。
こういうところはスズキさんとそっくりだよね。
まぁスズキさんの一部であるスズキ先生が派生元からかもだけど。
「|◉〻◉)でもなんか。始祖様にお叱り受けたみたいで懐かしい、不思議な感じ」
始祖様って何!?
もしかして前世の私のことが今そう呼ばれてるの!?
やめてよね、風評被害だ。
「|◉〻◉)はい、なんかそう思いますよね? 奇遇です」
「|◉〻◉)やっぱりこの子って?」
「|◉〻◉)そうじゃないかなって、目をつけてるんですけど」
「本人は頑なに否定してるよ。ほら、行こうか」
ぬめっとした手を取って、私たちは用水路に赴く。
私たちはマリナーモードになって、用水路に潜った。
リーガル:こういう視点で見れるのはいいな
パープル:水泳、続かなかったのよねー
カネミツ:検証班は何度溺れたか
マリン :え、水の中でご飯食べるのは普通だよね?
オクト :お義父さんの基準を日常に持ち込まないで
ハヤテ :失礼な
ひより :わー、用水路の中ってこうなってたんだ
シズラ :姉さんはこっちには来なかったの?
リーガル:獣人系は水を嫌うからな
シズラ :なるほど
オクト :僕もこの速度で泳げたら世界は変わってたかな?
パープル:誰も賛成しなかったわよ、きっと
リーガル:錬金のトップに抜けられて困るのは俺らなんだよ
ひより :一個人に頼ってるゲームはどうかと思うけど
オクト :今ならお義父さんの気持ちもわかるよね
パープル:さっさと引退しちゃえばいいのにって言ってるのよ?
オクト :体が動くうちはやり込みたいんだよ
なんだかんだで、みんなゲームバカなのだ。
いい年をして、まだゲームに固執してるのなんて相当のゲーマーでなければ務まらないよ。
雑談をしてる間に用水路を抜けて、例の抜け穴を通る。
「|◉〻◉)姉さん、こっち。はぐれないでね」
「|◉〻◉)なんか僕、迷子になること前提で話されてます?」
「先生はすぐどっか行っちゃうもんね」
「|◉〻◉)ひどい」
「手を繋いであげようか?」
「|◉〻◉)わーい」
オクト :まるで親子だね
ハヤテ :誠に遺憾である
こちとらまだ女子中学生だというのにね。
「さて、この先が水底の街だよ。みんな見えてるかな?」
みんなからの反応が薄いので呼びかけてみる。
すると。
オクト :待って待って、スキル派生が増えたんだけど
マリン :私は特に
パープル:え、そうなの?
「はーい、一旦整理しよう。生えたスキルを各自報告。雑談は以降に回して」
「さすがのチーム統率力ね」
それって今の私に言ってる?
それとも前の?
まぁあまり気にしなくていいか。
話は簡潔にまとめればまとめるだけいいからね。
オクト :水中呼吸、水圧耐性、無の呼吸
パープル:水中呼吸、海底歩行、水圧耐性
リーガル:水中歩行、水中呼吸、古代泳法
ひより :水中呼吸、水中移動、無の呼吸
シズラ :水圧耐性、水圧調理、加圧調理
カネミツ:水圧耐性、海の目、海の手
「随分とばらけたね」
「全部深海種族の特性だけどね」
「でもシズラさんの水圧調理はイベントを起こして伝承されるやつだよ」
「そうなんだ? パッキングされてても獲得できるのってすごいわね」
「お母さんもきっと獲得できるよ」
「残念ね。私こっちで調理スキル取ってないのよ」
あっ。そうだ。
昔からのアカウントなら確かに。
普段料理を教えてくれるから、てっきりこっちでもと思ってた。
じゃあ待って、料理スキルなしであれほどの料理をさっき仕上げたの?
確かに私の料理も美味しいとは言ってくれたけど、全員お腹いっぱいでろくに判断できなかったんじゃないの?
やっぱり料理勝負で後出しって不利だよ。
なんで私はそれを引き受けちゃったかなー。
いや、それはともかくとして。
シズラさんが水圧調理を引き継いでくれたのは助かった。
これで素材を下すだけで良くなったしね。
「なんというか、小さな街だね」
「街というよりは水の中にある拠点という感じだよね。囲いもないし、敵愾生物もいない、のどかな田舎町みたいな」
「私、田舎知らない」
「あっ」
ジェネレーションギャップ!
親が知らないのにその娘である私が知っているのもおかしな話だが。
リーガル:このちょいちょいミスをする感じ
オクト :お義父さんぽいでしょう?
カネミツ:もはや隠す気すらないよね
だなんて、一方的に言われる始末。
ひどくない?
その後はお母さんと一緒にわかめに巻かれて眠れるかチャレンジしたり、水圧調理で仕留めたモンスターで一緒にお料理とかした。
水の街から帰還して、やっぱり気がつくのだ。
用水路に入った時間と、出た時間で明らかに時間の経過が遅いと。
そしてこれが極め付けだろう。
カネミツさんの検証班がそのまま用水路に向かうが、そこに私たちの通った抜け穴はなかったと報告を受けた。
やはりあの街自体がイベントの派生先になっていて、試練を克服するために『スキル』を授かったのだと。




