28話 水底市場
宿屋体験をした私達は、そのまま市場を練り歩いた。
トキ :へー、いろんなものが売ってるね
ハヤテ :ね
ミルモ :お土産買おうよ、お土産!
レッシャ:|◎〻◎)買うのはいいけど、ここは魚人専用通貨だよ?
ハヤテ :専用ですか?
レッシャ:|ー〻ー)うん
列車君曰く、街に入るまではアベレージで通行証を買い付けることができるけど、街の中での買い物は専用の通貨が必要になるとのこと。
それは青いコインだった。表にはクトゥルフさんが彫られていて、裏にはルリーエが彫られている。
思いっきりクトゥルフ陣営の拠点だ、ここ!
ハヤテ :これの入手手段は?
レッシャ:|ー〻ー)街の冒険者ギルドで仕事をこなすともらえるよ
なるほど、通貨の区別はしていても、仕事内容はそうそう変わらないみたいだ。
クエスト内容はまちまちで、ギルド員を唸らせればいいという非常にゆるいものから、エリアボスの討伐など幅広く扱っている。
最終的時にはこの街の暮らしが楽になる何かをすればいいみたいだ。
トキ :え、どうしよ。まさか地上のお金が使えないとは思わなかったよ
レッシャ:|◉〻◉)長い付き合いなので、ここは僕が出すよ
ミルモ :お、列車君太っ腹ー
ハヤテ :気をつけて、この二人の物欲には際限ないよ
トキ :ひどい
ミルモ :そんなことないもんね、トキっち
ハヤテ :有り金は全部消費しちゃうくせに?
ミルモ :…………
トキ :もー、自分で稼いだお金なんだから、使い道くらい自分で決めたっていいじゃん
ハヤテ :パーティで貯めたお金を一方的に使うのも個人の自由だと?
トキ :…………
ハヤテ :リノちゃんには後で説明しておくけど、本当ならみんなからいうのが筋だよ?
トキ :ごめんなさい
ミルモ :ごめんなさい
二人の浪費グセは激しい。
正直、個人で稼いだお金をどうこういうつもりはなかった。
けどパーティで貯めたお金に手をつけちゃうのは違うと思うな。
二人は頑なに私には秘密にしたがるし、財布の紐は私がしっかり握っておかないと。
これじゃ留守にしてるリノちゃんに申し訳が立たないよ。
レッシャ:|◉〻◉)事情はわからないけど、ここはそこまで大したものは置いてないよ、水の底なので食材も水棲系しかないし
ハヤテ :水の中のお食事、気になります!
トキ :ハヤテちゃんはやっぱりそっちだよね
ミルモ :列車君のお弁当箱も凝視してたし
ハヤテ :だって、魚人が好む煮魚って興味湧かない?
どんな味付け、煮付け方への興味は尽きないじゃない。
魚なのに煮魚食べるんだ? とか。
気になるのって私だけ?
その後、二人は猛省して私に買い物の権利を優先させてくれた。
主に買い込んだのは食材だ。
ここでは地上では見かけない食材が豊富に揃っているのだ。
ハヤテ :ここの食材を地上に持っていくだけでも有り難がれるんじゃ?
レッシャ:|◉〻◉)それは難しいかな? 水圧耐性を持ってる個体は地上じゃ潰れちゃうから
ミルモ :あ、おじいちゃんから聞いたことある! 深海魚も似た感じだよね
トキ :つまりどういうことだってばよ
ここでみるちゃんが意外な博識ぶりを見せる。
さすが探偵さんの家系。
ハヤテ :つまり、ここの食材はここでしか食べられず、地上には出回らないと?
トキ :どんな味がするんだろうね
ミルモ :ハヤっち! あたしたち、この食材がどんな味をするかリノっちに伝える義務があると思うの!
トキ :そうだよハヤテちゃん、これってブログのネタにうってつけだと思うし、ね?
本当にー?
ただ二人の食い意地が張ってるって話じゃなくて?
でも、確かに。
料理人として食材のポテンシャルがどれくらいあるか、確かめたい気持ちもあった。
地上に出れば、価値が消えてしまう食材か。
ハヤテ :列車君
レッシャ:|ー〻ー)何かな?
ハヤテ :調理台を貸し出しているところってあるかな?
レッシャ:|◎〻◎)この街にはないよ、そういうの
ハヤテ :えっ
レッシャ:えっ
じゃあどうやって煮付けてるっていうのさ!
煮魚の謎は深まるばかりであった。




