26話 水中ランチ
トキ :ハヤテちゃん、本当に水中でご飯が食べれるの?
レッシャ:|◉〻◉)僕も知りません
ハヤテ:だって、魚だって水の中で口をパクパクさせてバクテリアを食べてるでしょ?
トキ :流石にそういうのとは違うよね? ちゃんと食べられるやつだよね?
お姉ちゃんの視線がやたらといたい。
もちろん違うとも、と私はアイテムストレージからお弁当を取り出した。
そして徐にお弁当箱を開く!
全員がその場からお弁当が水中に崩れだす光景を思い描いただろう。
ハヤテ:どう?
トキ :いまだ変化なし
レッシャ:|◉〻◉)不思議な光景です
私はその状態から端を取り出し、ウインナーをパクリ!
トキ :お味は?
ハヤテ:食べてみたらわかるよ
私はお姉ちゃんにずいっとお弁当箱とお箸を渡した。
誰かからの情報が欲しくてたまらない顔だが、こういう機会は率先してやってみなくてはだめだ。
トキ :ええい、ままよ!
お姉ちゃんはお箸でハンバーグを突き刺して口に放り込む!
水の中に浸かる時間を少しでも短くするために爆速で。
しかし、咀嚼回数が増えるたびに味が変わってないことに気がついたようだ。
ハヤテ:どう?
トキ :おいしー! え、これ本当にお水の中で一回浸したの? もっとシャバシャバになってると思ってた
レッシャ:|ー〻ー)不思議ですねー
ハヤテ:レッシャ君はお弁当持参?
レッシャ:|◉〻◉)ふふふー、実は煮魚を持ってきています
トキ :共食いだ!
ハヤテ:お姉ちゃん、さっきのハンバーグつみれ入ってたよ?
トキ :うん、それで?
ハヤテ:今の私たちって、どっちかというと魚側じゃない?
トキ :あ、そうじゃん!
ハヤテ:だから私たちも共食いってことにならない?
それはいいのかと指摘したら、バツが悪そうな顔をして。
列車君に謝り倒した。
お姉ちゃんからしたら何気ない一言だったのかもしれない。
けどその一言でも傷つく人はいるからね。
トキ :あー、ごめん列車君。さっきの言葉訂正、悪気はなかったんだよ、うん
レッシャ:|⌒〻⌒)気にしてないよ。僕は確かに魚だけど、魚でも魚は食べるから
弱肉強食、弱肉強食、と愉快そうに言った。
下手をすれば食べられる側に回るかもしれないという空恐ろしさを感じさせる。
水の底でのランチは、意外と大ウケだった。
お姉ちゃんは食べることに夢中だったので、私はそれをスクリーンショットに収める。
ミルちゃんに送ったら、パッキングしたお弁当箱の様子を見せてくれた。
見事に空である。
そこにはお腹を大きくしただらしない妖精の姿があった。
ミルモ:ごちそうさまでしたー
トキ :ミルっちだらしなーい
ミルモ:ぬはは、VRだからいくらでも食べられーる!
ハヤテ:お腹の大きくなるモーションはなぁに?
ミルモ:なんかねー、シルキーとかの妖精族はEN100%表記でこうなるんだって
うん、謎。
運営の遊び要素かな?
トキ :そういえば、自分しかそこにいないのに、どうやって自分をスクリーンショットで撮ったの?
そういえば不思議だね
メルモ:何か不思議な力でね、本体をその場に置きながら、いろんなズームモードが使えたんだよねー
トキ :へー、不思議でいっぱいだ! 面白いじゃん、シルキー
メルモ:なぜかお弁当と一緒にパッキングもできるしね
ハヤテ:ダメ元でもやってみるものだね
トキ :あたしは閉じ込めちゃダメだよ?
ハヤテ:……
トキ :何か言ってよ!
レッシャ:|◉〻◉)ノそろそろ行こうか。この先に魚人コミュニティがあるんだ。僕もそこに住んでるんだよ
住んでる場所と言ってたから、てっきり用水路の中で隠れて住んでるのかと思っていたが。
意外にも巨大なコロニーがあるようだった。
いやはや、少し遊ばないうちにそんな場所が増えてるなんて。
今からワクワクが止まらないな。




