208話 EPO配信!_三つの武器
ステージ4は、牛や馬を放し飼いにしているような村だった。
農業も盛んなようで、早速『採取』と『収穫』が仕事をしてくれそうだ。
「賑やかなところだね」
「だね」
「でもステージ3よりも随分昔な気がしない?」
「港町と平野じゃ家の作りは違うからね」
長閑な景色に、漁業で栄えた港町との活気の差を比べてしまうリノちゃん。
「採取物は一旦フリマに流す形でOK?」
「制限なかったっけ?」
「特に規定はないかな?」
「出品者の名前は?」
「ある」
「何を求めてるかのチェックリストとかは?」
「なかった」
それはそれで不便だなぁ。
前回は不要物を持ってるお姉ちゃんが優先的にやってくれて、それで情報の開示をしてもらった。
『GM:【出】【欲】のチェックリスト、アイテム種類でソート機能の要望出しといたぞ』
「早い!」
「さすがお父さん!」
「やりますね、GMさん」
:これはシゴデキ
:あまりにも娘かわいがりがすぎる
『GM:接続数の多さと、課金者が思いの外多くて開発も嬉しいんだろ。なんかもう目標金額達成したって舞い上がってたぞ』
:今なら要望投資放題ってことか
:ところでステージ4の解放特技は?
:『弓術』『剣術』『罠』だな
:3つ?
:ここから本格的に戦闘訓練がある
:EPOが本格的に始まるステージだな
「バトルメイン! やった!」
「リノちゃん的には待ちに待ったという感じかな?」
尻尾があればブオンブオン振り回してるくらいに喜んでいる。
今のベースは人間だから、当然そんなものはないんだけど。
その姿を幻視するくらいには見慣れてるからね。
あれ、絶対ポーカーフェイスに向かない種族なんだよねぇ。
特に取る予定もないので、考えるだけ無駄か。
『要望通ったぞー。ただ、取引内容が露骨でもNGできないから、そこは自己判断らしい』
言ってる側から要望が通る宣告。
あまりにも自由すぎる。
:そこはな
:物々交換というより、それでわらしべ長者するやつ出てきそう
:何それ?
:相手の善意で自分の低い価値の商品を高い商品と変えてもらう
:詐欺の手口だな
:めちゃくちゃ腹立つじゃん!
:でもそれが商売の基本だからな
:そうなの?
「昔は遠方で病が流行っていると聞き、別の街で薬を仕入れて売りに行く人から商売が始まったと聞きます」
:モミジちゃん、博識
:そういう理屈か
:確かにステージによってはそこら辺に生えてる草でも
:別のステージでは特攻薬になり得るしな
「討伐隊志願者はお前達で最後だ。早く入ってこい」
「はい」
「討伐隊だって」
「なんか急にきな臭くなってきたね」
「少し怖いですわ」
「まぁまぁ、何事も慣れだから」
でもこれ、中身は史実準拠なんだよね。
一体何世紀のお話なんだろう?
話を聞いていくと、三つの武器を手渡される。
ここのステージを乗り越えるのに、すごい時間を食いそうな予感がした。
私と紅ちゃんが罠を。
リノちゃんは剣。
お姉ちゃんとミルちゃんは弓を取った。
:また何かをやらかす未来が
:そうポンポン起こるわけないやろ
:起こっちゃうんだろうなぁ
変な方の信頼が高いね。
こっちは普通に遊んでるだけだってのにさ。
「まずは畑を荒らす害獣の駆除からだ。討伐開始!」
武器を取ったら街の警護。
ここで活躍して信頼度を上げるらしい。
同じクエストを行うと住民からの評価が上がるようだ。
地味にめんどい仕組みを仕込んできたな、と思う。
ステージ3までが単純だったからこそ、このステージからは本腰を入れてきたのかな?
それはさておきお話を聞く。
「多分狐がやったと思うんだけどねぇ」
<討伐データに狐の情報が反映されます>
【狐】
得意_剣
弱点_罠、弓
足が素早く、幻覚を扱ってくる。
近接戦闘において最も敵に回したくない相手。
「あー私の出番がぁ!」
リノちゃんが頭を抱えて嘆いた。
「まぁまぁ。武器を分けなきゃいけないくらいに、さまざまな害獣が出てくるはずだし」
「はい、ここはわたくしたちにお任せを」
「バンバン狙っちゃうよー」
「これ、命中判定どうなってるんだろ?」
「さぁ、打てば当たるんじゃない?」
弓使いは適当な感じで話し合っている。
狐がやってくるまでに、少しだけ時間があるみたいだった。
そして、タイマーが0になり狐が畑にやってきた。
「えいや!」
お姉ちゃんが弓を射る。
しかしそれは不発に終わった。
「すばしっこい!」
「これ、罠ってどうやって設置しますの?」
罠師の初期装備はトラバサミだ。
アイテム欄に入ってるそれを、取り出しておくだけで装置は作動するみたいだけど、狐はそれをヒョイって避けてまっすぐ畑に向かってくる。
あれ、これ思ったけどスタートするまでに少し時間があったよね?
もしかしてその時間内に罠をセットする必要があったんじゃないかな?
「これ、タワーディフェンスだ!」
「それはなんですか?」
「最初に設置して、オートで迎撃するシステムだよ」
「じゃあ、剣術は無駄じゃない?」
「攻撃は当たんないけど、多分追い払うことは可能」
「あ、もう一匹やってきたよ」
「最初に来たのは畑に到着しちゃった!」
「収穫物が-1になってるよ!」
「どうしよう、これ全部取られたらゲームオーバーだって!」
「最初に説明してよぉ!」
:説明はした
:本格的なバトル要素がタワーディフェンスだとは思わないでしょ
:なまじ本格ファンタジーやってるとね
:EPOは基本タワーディフェンスだから
:これは説明難しかったかな?
「ぬあー!」
:トキちゃんの出鱈目矢
:狐『無駄うち乙』
:なお、弓は残弾制です
:ほんまに無駄うちやんけ
:なお、一番簡単なステージです
:狐くんは楽勝ムードで野菜むっしゃむっしゃしてる
:狐『ここが楽園か?』
:事前に言ってあるんだよなぁ
:EPOはミニゲームの集合体だって
:いきなり奥深いバックボーン発掘しちゃったからね
:仕方ないか
「一匹撃退しましたわ!」
「ナイスモミジちゃん」
「討伐するとレベルが上がって、仕掛けられるトラップが増えるそうです」
「何が増えたの?」
「こちらです」
紅ちゃんは通路に木箱を置いた。
狐は跳躍でそれを乗り越えられないみたいで、違う道を迂回するようだ。
「なるほど、討伐するごとに装備が整う系か」
「誰に討伐させるか迷うやつだ」
「どちらにせよ、このままじゃゲームオーバーだよ」
「トラバサミは少しの間足止めするみたい」
:トラバサミは3個セットして蓄積ダメージで殺せる
:なお、大群で来ると無駄な足掻きの模様
:狐は一匹ずつしか来ないから楽でいいね
めちゃくちゃ苦戦してるんですけどぉおお?
「これ木箱で道を塞いじゃえば来ないんじゃない?」
「どうやらこの木箱、置ける数が限定されるみたいです」
紅ちゃん曰く、同じエリアに5個までしか置けないらしい。
「じゃあ、一つ道を開けて、そこにトラバサミ爆撃?」
「そこに狙いを合わせて弓のパワーアップ狙えれば」
「ナイス!」
思惑通りにことは進む。
「弓術レベルアップ! 障害物を飛び越えて曲射ができるようになったよ!」
「今まで垂直にしか飛ばなかったもんね」
「ハヤテ、木箱の手前にもトラバサミ置いて」
「いいけど、どうして?」
「木箱前でうろうろしてる狐を乱獲する!」
「オッケー」
:ゲスい作戦思いつくなー
:実際、効率いいからね
:狐エリアはこれができるからまだ楽
「罠術レベル3はカカシだ」
「これってどういう効果があるの?」
「畑の前に置いておくと、間違って攻撃するんだって。要はヘイト効果があるみたい」
「野菜への被害が減るんだ?」
「でも、耐久があるからあまりそればかりに頼り切りはダメかも」
「そんな上手い話はないかー」
:弓術レベル3はホーミング機能だから頑張って
:あれで矢が無駄にならないのいいよな
:なお、威力は下がる
:カカシくんは木箱を飛び越えてくるタイプには有効
:このミニゲームハマる人多いからな
:今は動物相手だけど、これ究極的には人に同じことするので
それはそう。
けど今は言わぬが花というやつだ。
「人は簡単に引っかかってくれなさそう」
「だから動物相手に練習?」
「このステージは害獣退治がメインだけど」
「そのうちは同じ人相手に、ですね」
:でもこのゲーム、一つの武器をMAXまで上げられるから有能
「あ、そういうやつなんだ?」
:ゲームオーバーにならなければの話やで?
:ゲームオーバーになると最初からレベル上げ直しだから
:クリア特典がレベルの引き継ぎなんだよね
「そんな上手い話ではなかった」
「今回は被害3で信頼度(中)だったね」
:評価は小(1点)中(3点)、大(5点)で
:次の害獣エリアに行くための点数基準がある
:栗鼠ステージへは3点
:ネズミステージは1点かな?
「5点は?」
:うさぎステージ
:満点取ると難易度爆上がりするのでおすすめしない
:全10エリア達成でクリア
:うさぎとか木箱飛び越えてくるからな
:トラバサミも飛び越える
:狐と違って剣術が活躍できるからね
:剣術はレベル上げるタイミングで方向性選べるから
:確か分岐するんだっけ?
:する
:威力を取るか命中率を取るかやね
:確か罠術と弓術もしたよな?
:レベル5からね
:剣士はレベル3から
そんな話で盛り上がり、取る武器の選択間違えたかも、と少しだけ暗い気持ちになった。
ま、まぁこれから挽回するし?
なんだったら罠で無双しちゃえばいいんだよ!
それに決まり!




