164話 AWO配信!_階層ギミック1
準備を整えて、いざボス戦。
階段を降りていくと、そこは足場の少ない空間だった。
早速『重力キューブ』グミの活躍場所だ。
「これ、こんな吹き抜けなのに階層としての役割あるって本当?」
ハヤテG:その広い吹き抜けのワンフロアが1階だよ
:草
:どんだけ広いねん
:今までが狭苦しい感じだったのに、急に変わるじゃん
:最初ビビるよな、ここのギミック
:テレポーター必須と言われる所以
:後は銀鎧の騎士系な
:陣営解放なし、霊装なし、ベルトなしでくる場所じゃねーな
:精巧超人は嘘はつかないよ
:そうそう、誰にでもやれるかと言われたら首を捻る自信あるけど
:ハヤテちゃんチームの真似をするのも相当難解だけどな
:まるで役割を決めてきたかのような人選
:残念、寄せ集めです!
「寄せ集めと言われても、楽しんだもん勝ち! がこの配信の趣旨です。ミルちゃん!」
「何かな?」
「氷結キューブで足場作れない?」
「固める足場の代わりが……」
「レイちゃん、お願い」
「|◉〻◉)牛丼おかわりくれたらいいですよ」
すっかり気に入っちゃって。
あとで煮付け食べさせてあげる予定だったけど、そんなに食べてお腹いっぱいになっちゃわない?
その後運動するから問題ないとは思うけど。
「いくらでも用意してあげるから」
「|◉〻◉)わーい。それじゃあいくよ『濁流のキューブ』」
レイちゃんがその場で水の膜を広げる。
しかしそれは階層の真下をバッシャーンと濡らしてしまった。
なるほど、そういうことをしてくるか。
「お姉ちゃん!」
「ここはあたしの『疾風キューブ』の出番か」
氷や水などの決められた攻撃をその場に浮遊させる効果がある疾風キューブ。
ミルちゃんにも手伝ってもらい、フィールド全体に浮遊物が停滞するフィールドを設置。
「|◉〻◉)せいや!」
そこにレイちゃんが再び水のスロープを作る。
「いっくよー『氷結』」
そのスロープがミルちゃんのうざいダンスに乗せて、みるみる凍りついていく。
多分ダンスが寒すぎて凍りついたんじゃないかな?
「締め!」
氷のスロープの端っこに『重力キューブ』を付与したミント水を噴霧して、疾風キューブの効果が消えた後の状況を観察する。
「効果終わったよー」
お姉ちゃんの告白。
そしてスロープは健在、と。
:そんな合わせ技があったんか
:やはり調理! 調理は全てを解決する
:重力グミもやべーけど、やっぱ一番チートなのはミント水よな
:持ち込み素材にゃ付与できないのがネック
:時代はその場で調理よ!
:パッキングで生産台を借りパクするのが始まり
:犯罪スレスレの行為を進めるな
:調理以外にもパッキングスキルくれ~
「確か鍛治にも梱包スキルありましたよね?」
:え、鍛治にもあった?
:梱包スキルで鍛治台接収できたわ
:草
:これはいよいよ持って生産代の持ち出しが可能になったか?
:細工師も充填スキルで持ち出しできました
:おいおい、コソ泥増えまくってる!
:大丈夫、ちゃんと返すから!
「そうですよ、持ち出したら超過時間分使用コスト支払えばいいだけですし」
:なるほどな
:そんな上手い話はなかったか
:これは運営も一枚噛んでるね?
もちろん、幻想装備はその限りではないけどね。
一度だけ持ち出してみたことがあるは、貸し出し時間は超過して、その分を支払った記憶があるのだ。
あれは痛手だったので、それ以降パッキングで貸し出しアイテムを包むことは無くなったよね。
移動しない前提ならガンガン包むけど、それ以外は控える様になった。私も成長するんだよ。
勉強代に随分持ってかれたのを思い出す。
氷のスロープを使って足場のない空間を滑り降りる。
「便利だけど、お尻冷えるね」
「なんか座る場所欲しいかも」
「あ、あそこにあるブロックを椅子がわりにしたらいいんじゃない?」
「賛成」
フロアの中央には何やらクリスタルが置かれた台座があった。
それは中央に電気が迸ってるみたことのないものであり。
このフロアの新しいギミックを思わせたが、絶賛お尻が冷えてた私たちは深く考えずにクリスタルから台座を奪った。
<重力共鳴! 今から30分置きに重力の磁場がランダムに発生します。足元にご注意ください。上に参ります>
フロア全体にアナウンスが走る。
でも私たちは普通にスロープを降りた。
お尻が冷えなきゃ問題ないとばかりに快適な運転をした。
「あ、下に行ける階段を見つけたよ」
「さっきの何だったんだろ? 警告? みたいな緊迫感あったよね」
「特に問題はないけど」
「フィールドギミックみたいなものじゃない?」
「あー」
「何であたしたち平気なのかな?」
「多分ハヤテさんの特性グミのおかげでは?」
「あー」
みんな用心して噛んでたおかげで無事だったらしい。
実はこれ、とんでもないトリックだった可能性ない?
付与魔法だけに頼ってた場合『SP切れ』『EN切れ』『ST切れ』を誘発しそう。
:特に気にしてなくて草
:リアル無限城を味わえるよ
:太鼓鬼とかじゃなくて?
:個人的には立体機動装置が近い
:あれは個人技でやると特殊なスキルの組み合わせ必要だから
:昔そんなプレイスタイルの人、いましたね
:あれもきつそうだった
:やはり時代は調理か
:疾風も調理で代用できそうだな
:消費アイテムだけだからポーションとか?
:それもありだな
一階層は重力のランダム発生。
メモをとりながら用心深く二階層に進む。
そこは水中庭園だった。
回想感は空気があったから完全に油断してた。
即座に地上組をパッキング。
:判断が早い!
:ここから先は地上ギミックの合わせ技だからな
:初手水没はなかなかにハードだぞ?
:獣人が獣人のまま来れない環境
:もしかして灼熱も?
:ありまぁす!
:先に攻略情報見ると、誰にどのスキル持たせるかまで割り振りあるから
:今パッキング中なのは?
:氷結のミルモちゃんと灼熱のリノちゃん
:両極端な二人が封印か
:普通はここで脱落まであるから
:普通の人は一階層で脱落なんやで
:何で普通に冒険できてるんやろなぁ
:水中組にキューブ持たせて正解だったな
「お姉ちゃん、どこかに水を押し流す通路とかあるはずだから、それを見つけよう」
「オッケー」
:判断が早い!
:そしてハヤテちゃんの判断力の高さ
:お風呂か何かじゃないんだから
:でも発想力は当たり
:ここ水没させっぱなしだと後で困るんだよな
:そうそう
:ボスが階層ぶち抜きで戦闘し始めるからな
そういう仕掛けか。
じゃあ本当にやり過ごすだけじゃダメじゃない。
リノちゃんやモミジちゃんたちが満足に戦えないのは考えものだ。
多少空間さえあればリノちゃんは抜け出せるけど。
ここが濁流をメインとしてるなら、ギミックは鉄砲水かな?
どこから流れてくるかはわからない怖さもある。
先にそこを封じておけば、階層を無視して動きの担保はできるか。
「|◉〻◉)見てください! あそこに亀裂があります」
レイちゃんが何かを発見したようだ。
そこには渦が発生していて、空気の道ができている様だった。
しかし崩壊する様子は一切見せない。
ギミックの仕掛けはキューブでのみ解決できるのかもしれないね。
「ハヤテ、このフロアの中央にも台座とクリスタルがあるよ」
「ナイスお姉ちゃん」
「|◉〻◉)ノハヤテさぁん、こっちにブロックが落ちてます」
「ナイスレイちゃん」
:みんな優秀
:誰一人無駄がないのもいいね
:ファインプレーや
:序盤は結構ギスギスしてたのに
:元々仲はいいからね
:スキルビルド聞いて俺なら蹴ってるメンバーだったけど
:意外と噛み合ってたよな
:調理が強いよ、調理が
調理はまぁちょっとはずるいかなと思うけど。
でも腕は個人差があるから。
全ての調理人が私と同じことをできると思っちゃダメだよ?
「|>〻<)ダメです、ブロックぶつけるだけじゃ壊れそうもありません」
レイちゃんは早速、亀裂にブロックをぶつけてくれていたみたいだ。それでも効果は薄い様。
「これがギミックのスイッチなら、多分キューブを使わないと解決できないと思うんだ」
「|◎〻◎)あっ!」
すっかり頭から抜け落ちていたようだ。
「|◉〻◉)せいやー」
水の中で『濁流』のキューブを使うレイちゃん。
しかし効果はイマイチのようだ。
水の中で威力が弱まってしまうのかもしれない。
いや、待てよ?
ここでこそ私の『重力キューブ』が役に立つんじゃないだろうか?
「お姉ちゃん、もう一度ここの空間を『疾風』キューブで浮かせられる?」
「フィールド全体はミルっちがいないと無理。あたしだけだと単体が限界だな」
「そっか」
「役に立てなくてごめんね」
「ううん、できたらいいなって話だから。もしかしたら無駄足の可能性もあるかもだから」
「何をやりたいの?」
「たとえばね」
私は答えを知っているリスナーに交えて説明をする。
「水中で勢いが出せない場合の方法は二通りあるの」
「うんうん」
「まずは空気の道を作ること。水さえなければブロックは重さを取り戻すと思ったの」
「なるほどね」
「そして重さを取り戻したブロックは当然重くて沈むよね?」
「あ、そこで疾風キューブ?」
「うん」
「でも浮かしのがブロック単体なら、その効果はそのブロックだけにかければ良くない?」
「あ!」
全くもってその通りだ。
お姉ちゃん、冴えてる!
「どうやら答えが導き出されてしまった様だね?」
「完全に盲点だった」
「|◉〻◉)でもそれ以前にどうやって空気の道を作るんですか?」
:そうだよ
:普通はそこで詰む
「答えは簡単だよ。亀裂ごと私たちをパッキングする、です」
:草
:おまっ
:一番裏技的なこと言い出したぞ
:やっぱりこのパーティのダークホースはハヤテちゃんだったか




