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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
『そして舞台は整った』<13日目・夜>
145/167

145話 増えるメンバー

 配信は終わった。

 そのままログアウトしようとして、体がどこかに引っ張られるような感覚に陥る。


 お姉ちゃんたちが帰り、そのタイミングで。

 私はAWOの魂魄隔離街・ドリームシェアに引き戻された。


「あ、おかえり」


 第一発見者はモミジちゃん。

 それはそれとして、街はかつてない賑わいを見せている。

 明らかにあれから人が増えたのは間違いない。


「なんか人多くない?」



<ログイン人数:5/2>

 ハヤテ  _ログイン

 レイ   _ログアウト

 モミジ  _ログイン

 サーラ  _ログイン

 リョウ  _ログイン

 ディノR2 _ログイン

 


 いつの間にか、人増えてる。

 リョウ君てあのリョウ君かな?

 でももう一人は全く知らない人だ。


 一体誰が誰なのか。

 私たちの関係性から第一世代が無作為に囚われてると思っていたんだけど、実はまた違うのかな?


「いやぁ。待ってたんだよ」


 待ってた?

 誰を?


「もしかして、私の帰りを待ってた?」

「その通り。見てくださいよ、この重箱を、いい出来でしょう?」


 モミジちゃんがどこで拾ってきたのか、荒い作りの重箱を見せつけてきた。


「これ、もしかして?」

「ボクが作ったんですよ。どうです? 見事な物でしょう」

「すごい。漆っぽいのまで塗られてる。刷毛とかどうしたんです?」


 そもそも、漆をどうやって見つけたのかも疑問だ。

 突っ込むところはもっとある。

 もし木材を見つけたとして、あなたに工作の知識があったのかとか。

 モミジちゃんに入ってからはそれこそお嬢様のレッスンばかりだったろうに。


「そこはほら、あなたが残してくれたアイディアというやつですよ」

「なんか残したっけかなぁ?」


 首を傾げると、心配される。


「そんな、すでにボケが始まって……」

「誰がボケ老人ですか、誰が」

「よかった。その年でボケてたら目も当てられないところでしたよ」

「はいはい。それはさておき、本当にアイディアなんて残してません…何かの間違いでは?」

「えっ」


 また心配そうな顔。

 これは探偵さんがまたよからぬことを教えたな?

 カマをかけてみる。

 あの人私のいないところであれこれ有る事無い事言いふらすんだよなぁ。

 外れていればいいけども、念のため。


「サーラちゃんはなんと?」

「あなたがここで願えば、なんか勝手に世界が補填してくれるっていうので」


 やっぱりあの人の発言か。

 しかし私、そんなことを言ったかなぁ?

 言った気もするけど、なんか記憶が曖昧だ。

 配信活動が濃密すぎて、ここでの記憶ってなんかうすいんだよな。


「ああ、それで木材と漆の材料を願ったと」

「これで正式な鰻重を食べられますね!」


 モミジちゃんが犬耳縦ロールを揺らして大変喜んでいる。

 これは手段と目的が完全に逆になってしまっているね。

 ご飯を食べるより、重箱を作るのにハマってしまったに違いない。


 これ以外の失敗作も大量にあるだろう。

 それを探すように目を細めると、例の探偵さんが「君も暇だね」みたいな顔で横にいた。


「うわっびっくりした! 無言で横に立たないでくださいよ」

「おかえり、レディ。久々のリアル、楽しめたかな?」

「おかげさまで」

「それは暁光。それよりも新しく増えた町の住人の紹介をしよう。みんな君が帰ってくるのをログアウトせずに待っててくれたんだよ?」

「え、わざわざ?」

「次いつログインできるかわからない人ばかりでね。リアルに実態がある人まで来てしまっている」

「そういえば、リョウ君とかいたね」

「そうだとも。こちらだ、足元気をつけて」


 ミルモちゃんボディに入ってる探偵さんが、私たちを案内する。

 街を抜け、草原を抜け。

 そこにはテントが張られていた。


「つきました。ここが仮拠点です。皆さーん、主役の登場ですよよー」

「待っておったぞ、ハヤテ君」

「あの、ハヤテちゃん。何が何だかわからないうちにこんなことになってて」

「ああ。はいわかりました」


 ディノR2ちゃんの口調で中の人が誰かわかってしまう。

 ロボットのボディに阿修羅みたいな六刀流。

 これ、レムリア陣営だな?

 そして背中には鋳造を思わせるロが装填された鞘があった。


 こんなこだわったデザインをするのは知り合いの中で一人しかいない。

 もしかしなくてもダグラスさんだ。


 やっぱりここ、第一世代ホイホイじゃないの。

 じゃあ、リョウ君は誰なのかという話である。


 当時の男性陣が全員女の子になってしまった。

 じゃあ当時の女性陣か?

 アキエさん、だったらこんなに弱気な発言はしないだろうし。

 かといってランダさんぽくない。

 じゃあ本当に誰?

 探偵さんの奥さんやダグラスさんの草間ってことはないよね?


 だったらすでに探りを入れてるはずだし。

 ただの迷子で済めばいいけど。

 レイちゃんの例もあるしなぁ。

 まさか当時の高位NPCだったり?

 まさかね。


「なんだかお待たせしてしまったようで」

「みんな、この状況を楽しんでいたりする一方で調査も怠っていないんだよね。趣味が調査と言ってしまっても過言ではない」


 過言だよ。あなただけでしょう、そんなの。


「最初はレイちゃんが配ったこの幻想装備を起点としたメンバーが無作為に集められた、ぐらいに思ってたけど」

「あっそれって」

「うん」


 一度男子3人組の前で見せた調理台や鍛治台なんかはこれを使っている。

 けど、これを男子たちには持たせていないのだ。

 なのでここにリョウ君がいるのは想定外。


 可能性があるとしたら、第一世代の魂じゃないかという憶測はリョウ君の登場で瓦解した。


 だからと言って、ここで何もわからず解散というのも違う。

 お互いに情報のすり合わせが必要となっている。


「とりあえず、近況報告と自己紹介からだろうね。私はサーラ。普段はミルモちゃんのお姉さんをしているよ。今は訳あって家出中。実家がね、やばい案件に乗り上げちゃってて」


 笑って誤魔化しているが。要はその家族を見捨てたという訳である。とんでもなクズの所業なのを本人はわかっているんだろうか?


「私はハヤテ。ディノちゃん以外とは交流してるとは思うけど、おじいちゃんは精錬の騎士のマスターさんをしています。最近配信活動を始めて、色々ゲームを遊んでいく予定でいます」

「あれ、君。ここ以外ログインできないんじゃないっけ?」


 探偵さんことサーラちゃんが鋭いツッコミ。


「WBOは傭兵システムでログインできたので、こことWBOはログインできるよ」

「向こうにプレイヤーがいれば、か」

「ミルモちゃんに呼び出して貰えば? 妹さんでしょ?」

「勘弁してくれ。せっかく自由の身を手に入れたというのに」


 この人、本当に姉妹なんだろうか?

 妹のピンチにあまりにも無責任すぎやしないだろうか?

 それ以前に家族のピンチだというのに、身を削ってまで助けようとしないのはあまりにもおかしい。


「ボクはモミジ。訳あってこちらに番宣をしに来ている。みんなもEarth Project Onlineで遊ぼう」

「とんでもないクソゲーだよ、EPO」

「ちょっと、余計な情報入れないでくださいよ! 確かにとっかかりにくい部分はありますが、十分に楽しめる要素もあってですね!」

「わかってないね、レディ。探さなきゃいいところが見つけられないのは総じてクソゲーなんだよ」

「ぐぬぬぬ」

「ワハハハハ、君らは変わらずじゃなぁ」

「そういうあなたこそ、変わらないですね先輩」

「やっぱり君は後輩だったか。噂はぼちぼち聞いておるぞ? 過去の改竄を引き起こしたとも」

「成り行きですよ。私はただ料理を作ってただけですから」

「君、前世も同じこと言ってなかったか? 私は写真撮影をしていただけ、と」

「記憶にありませんね。前世なんてナンセンスですよ」

「ワハハ、転生したところでやらかし癖は治らないという訳だな?」


 バンバンと背中を叩かれる。

 痛いなぁ。

 これが種族差か。


「さて、拙者は初めての方も多いだろう。姓はディノ、名はR2。武者修行の果て。レムリアのボディに身を投じた修羅よ」

「それ、なんの説明にもなってませんよ?」

「ディノさんもEPOやりましょう! 一緒にやれば楽しいので」

「そんな、赤信号を一緒に渡れば怖くないみたいな言い方で」

「信号?」

「おっと、ジェネレーションギャップか!」

「そんな第一世代トークについて来れる我々がおかしいのですよ」


 どこか疎外感を感じているリョウ君。

 わかるよ、見た目だけは可愛い女の子たちが、おじさんみたいに大声上げてはしゃいでればそういう気持ちにもなるよね。


「最後にボクですかね? リョウです。普段はパーティのタンク役をやっていて、以前ハヤテちゃんとご一緒させていただきました。ここには偶然迷い込んでしまいましたが、また会えて嬉しいです」


 みなよ、この初々しさを。

 それに比べて我々と来たらどうだろうね。

 もっと恥じらいを持つべきだと思うな。

 いや、それこそ今更だろうけど。


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