141話 WBO配信!_釣りバトル
「この釣り、餌なくても釣れちゃうんだ」
釣り上がったのはスモールフィッシュと言われる唐揚げと天ぷらに非常に親和性の高いお魚だった。
煮付けとかには向かない小ぶりの魚である。
塩焼きには微妙に適さないサイズ。
:糸を垂らすだけでええで
:餌に触りたくないってプレイヤーがほとんど
:釣り人からしたら餌で工夫できないからイマイチ
:でも魚は触れんの?
:それはドロップ素材やし
:実際に触らんでもハンドバキュームで一網打尽や
:戦闘する子は他の子に釣らせて暴れてるところに水柱撃使う
:それ何系統のスキルだっけ?
:格闘だよ
:素手かー
:投擲系の水切りでも狙えるけど、コントロールがな
:あれって投げて飛距離を争うもんじゃなかったっけ?
:WBOでは攻撃スキルだよ
:面白いな
へぇ、それは面白いね。
配信だと色んな有識者のコメントが集まるので非常に参考になる。特にこう言った専門知識はすごく貴重だ。
欲しい時に合いの手のように流れてくるので、うぶさに観察しなくては。
大体いらない情報ばっかりで盛り上がる傾向あるからね。
今、私の可愛さとかそういう情報は関係ないから!
「今度はミディアムフィッシュ。なんだかサイズがお魚の名前になってるの面白いね。手抜き? ねぇ手抜きなの?」
「ハヤテ的には不満?」
「不満じゃないけど、魚の系統で調理法が変わるとか思ってたから。ほら、ウナギとかドジョウとかも川で釣れるんだよ」
「へー」
:トキちゃん、あまりにも無関心!
:知識量の違い!
:料理するこ子とかじゃないとそう言う知識ないもんな
:入手するとなると、どこで育ってどう言う餌食べてきたとか気にするけど
:料理されたもんを食べてるだけだと美味いかどうかしか気にしないもんな
:それー
「そうなんですよね。調理人は捌くのも含めて色々見越すんですけど、釣れた魚は討伐判定が出るのか、ドロップ品は内蔵が抜かれてる状態なんです」
:あー
:料理の幅が狭まるのか
:そうなの?
:塩漬けするにはいいけど
:ワタって何?
:内蔵のことだよ
:うぇー
:内蔵入ってると日持ちしないんだよ
:釣った直後の秋刀魚の内蔵は美味いらしい
:え、あの苦いやつだよね? 私苦手ー
:焼くと苦くなるんだよ
「私は食べたことはないですけど、美味しいらしいですよね。でもここじゃ食べられそうもないですねー」
:ちなみにイカの塩辛もないぞ
:あ! そうか内蔵がないもんな
:カニは?
:蟹味噌かー
:あれって内蔵だっけ?
:内蔵です
:ぐわー!
:どうりで酒のつまみ系のレシピ少ないなって思ったら
:海老の頭に詰まってるのも内蔵だからないぞう
:寒いギャグやめろ
:周囲の温度が10度下がったわ
「好きな人は好きと言う話ですねー。カニやエビのお味噌汁がないのはそう言うことでしたか」
:港街ではあるんじゃねーかな?
:まず内蔵がないって前提だから
:イカの沖漬けぐらいはあるけど
リノP:本当は入れるつもりだったが、平均年齢低すぎてな
:これは企画通らなかった話か
:内臓とか見た目キッショイからな
:美味いって知らなきゃ触りたくもないし
:でも釣り餌は見た目を変えるぐらいはしたっていいじゃないっすか!
:お、ここにも釣りガチ勢!
リノP:ルアー的な要素も入れてみたんだが
:ダメだった?
リノP:全然売れなかった
:あー
:そもそも、この街に留まるプレイヤーが少ないもんな
:ほぼ生産ガチ勢
:ここに遊びにきてる子は大体バトルか
「売り上げが全てなのは世知辛いですねー」
:この子、たまに全てを見通したような喋りするよな
:変に達観してる
:もしかして人生2周目?
:トキちゃんに比べて妙に落ち着いてるのはそう言うことか
:いや、トキちゃんがああだから逆張りの可能性も
:姉妹でこうも変わるか?
:育った環境によるよな
今そう言う話してましたっけ?
魚、魚の話にもどろ?
「ハヤテー、釣果どんな感じ?」
「まずまずだねー」
「やはり女神様へのお祈り効果か」
「そこはわかんないけど。そろそろ切り上げてお料理タイムかな?」
「じゃ、今垂らしてんの終わってからでいいよ。リノちゃん船漕いでる」
「あ」
:リノちゃん、暇すぎて寝てるwww
:これはログアウトしてるかね?
:ログアウトじゃなくて、トイレタイムかな?
:WBOでは街の中で簡易ログアウトできるから
:簡易?
:即座に復帰できるけど、没入してない状態
:あー
:AWOのログアウトはログイン権の剥奪だもんな
:ログイン権?
:あのゲーム、一日3回までしかログインできねーのよ
:条件キツすぎない?
:時間加速世界だから朝・昼・晩で分けれるぞ
:大体四時間で一日を味わえるから
:生活リズムに合わせられるのか
:なお、死んだら強制ログアウトだからバトルジャンキーは寄り付かない
:草
:おまw
:なので偵察と強襲でプレイヤー分けてるんだよ
:それはどこもそうでは?
:あのゲーム、敵の強さのインフレ具合がイカれてるからな
:そうなの?
:序盤の敵がスライムだとするじゃん?
:ああ
:大陸渡って、次に出てくるのがオークだって言ったらどう思う?
:強さの幅どうなってんだよ!
:いや、理不尽だなって
:次の大陸渡ると通常エンカでシャドウウルフとか出る
:いやいやいや
:物理殺しやめろ
:魔法以外死ぬやつじゃん
「オークはわからないけど、それってスワンプマンのことですよね。肉体乗っ取ってくる」
:それそれ
:耐久は低いけど、えぐいデバフ持ってるやつ
:セカンドルナから急に複数で襲ってくるんだよ
:肉体乗っ取ってくるって何!?
:ログイン権勝手に使われて生活されてる
:貴重品勝手に売られたりな
:いらないもの自分で貯めた金で買われてたり
:クソ害悪モンスターやんけ
:それを乗り越えた先に待ってるのが影のワンワン
:そいつもクソ!
:バトルを楽しみたいやつは総じて違うゲーム行ったよな
話題はAWOの理不尽要素への追求で盛り上がってるみたいだ。確かにあのゲーム、理不尽の宝石箱みたいなところあったからね。
しかし、今回はまた長いな。
いつもならそろそろ釣れる頃合いなのに。
:ハヤテちゃん、水面見て
「水面? うわ!」
:川幅サイズの影が競り上がってきてる
:なんやこれ!
:ヌシだ!
:普段どうやって生活してるんだよってぐらいの巨体で草
釣り上げたのは、大きなナマズだった。
「わわわ! お姉ちゃん!」
「バードソング! だめ、耳がないのか通ってない」
ギギギ!
私の体は川の方に引き寄せられている。
:岩の蟹じゃなきゃワンチャン!
:こいつにはヤイバが通るよ
:リノちゃんは?
:まだ船漕いでる
:ピンチじゃん!
リノP:少し待ってろ
:リノちゃんパパ?
:Pってパパって意味なのかよ!
:そうだよ
:Mはママだしな
「アイスピラー!」
きっと始まりの街からポータルで飛んできたのだろう。
聞き覚えのある頃が響き、皮全体を凍り付かせた。
「動きを限定させた!、未だ」
:あの姿は!
:幻影のラスティコフ!?
:え、あれってNPCじゃなかったのか?
:誰それ
:公式イベントにちょくちょく登場するお助けキャラ
リノP:俺の使用キャラだよ。後輩の尻拭いをちょくちょくしてた
:後輩の尻拭いwww
:運営側でしたもんね
:GM動かさなかったのはどうして?
リノP:運営キャラは一回設定したら後付けで参入できないんだよ。上限が決まってる
:あー
:そういえばイベント中に二人しか見てないや
:二人設定したら二人しか出入りできないってこと?
リノP:そういう感じだな
「今戻った。お父さん、場繋ぎ感謝」
「いいってことよ。決めろ、リノ」
「シャドウウォーク、決戦術式Ⅱ、刀剣舞踏」
:スキルコンボだ!
:シャドウウォークはさっき見たね
:決戦術式って?
:侍ギルドの最上位スキル
:要は攻撃力上昇、速度上昇
:把握
:刀剣舞踏は?
:侍ギルドの奥義系スキル
:まるで舞踏のような動きで剣戟を繰り広げる様からそう名付けられた
:すげぇ!
:あれ、リノちゃんて中堅じゃなかったっけ?
「中堅なのはトキちゃんと一緒に回ってるからだね」
「ハンドバキューム! ワハハ、大漁だじぇー」
:つまり?
:個人勢なら相当上位に入るのでは?
:クランが一番欲しがる人材はリノちゃんだった?
「ありがと~、リノちゃん。助かったよー」
「美味しいお料理作ってくれたら問題ナッシン」
「これは腕によりをかけて作らないとだ」
リノP:盛り上がってるところ悪いが、娘はクランに入れんぞ?
:なんでよ
リノP:まだ学生だからだ。遊びはほどほどに勉強を優先して欲しいのが親心だな
:じゃあお父様だけでも
リノP:俺は尚更入れんだろ、守秘義務があるからな
:めっちゃ内部事情語ってくれてたやん
リノP:喋れる情報と喋れない情報があるんだよ、察しろ
何はともあれ、主が釣れた。
アルミホイルの入手はないけど、先にどっちかマスターしてアレンンジに生かしたいところ。