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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
『ハヤテちゃんの配信活動』<13日目・朝>
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132話 AWO配信!_みんなでランチ

 採掘スキルで手伝ってくれたリスナーさんに、少し油っぽい、焦げついたケチャップライスをサプライズ。

 そこに半熟トロトロすぎて崩れたオムレツを乗っけてケチャップでハートマークを書いた。

 一種のプレイかな?

 美味しくなーれ、みたいに言ってるのも業が深い。


「お待たせしましたー! 愛情たっぷりクリームオムレツです!」


:お、おう

:見た目

:クリーム入れたんか? ただでさえ整形大変なのに

:それのおかげで崩れたんじゃ

:ありえる

:あれほどオリジナルチャートはやめとけって


「なんか文句言われたー! カチカチオムライスになりにくいって言おうから入れたのにさ」

「お姉ちゃんの場合は分量じゃないかな? こればかりは数をこなして覚えるしかないよ」

「そうだよね」

「でもその前に卵の方が尽きるかも」

「あー、いっぱい使うもんね」


:失敗しなきゃ、足りるはずだったんやで


「まさか初回からリスナーさんがこんなに駆けつけてくれるなんて想定してなかったもので」


:それはそう

:なんか見てて手を貸してあげたくなる不安さで

:でも実際、俺らの助けなんていらないくらい上手で

:悔しい! でも感じちゃう

:これが100億の融資を受け取れる器なのかーって

:実際自分の孫が遊びにきて、それぐらい身銭切れるかどうか

:普通は稼げてて無難しいな

:クラメンの金まで使うのはどう考えてもやりすぎ

オクト:すまない、みんな

リーガル:孫がこんな顔してくれるんなら俺はいくらでも働こう

:このバカクラマスめ!

:クラメンは泣いていい

:でも、普段は優秀だから

:使った金額の話をしてるんだよなぁ

餓狼の牙クラメン:ええんやで

精錬の騎士クラメン:まぁ普段お世話になってるし

オクト:みんな!

:ええ話や

精錬の騎士クラメン:でもマスターには今後仕事を優先的に割り振りますけどね

:草

:ここから先、地獄が待ってる

:それはそう

:クランの金使い込むってのはそう言うことや


「もう一つ、愛情たっぷりトキちゃんオムレツできたよー」


:そうこう言ってる間に二つ目

:さっきよりは少しマシかな?

:同じ素材使ってるのに、あれがどうしてこんな形に

:ダークマターの方がマシってそうそうないで?

:ここはやはり精神安定のためのハヤテちゃんの見本が


「あの、そう言うこと言わないでもらえますか? お姉ちゃんも頑張ってるので。上手になってきてますし、見守る気持ちで」


:確かにそう

:これは俺らが悪い

:なんで精錬の時はあんなに応援できてたんやろな

:不思議だ

:純粋にこれが見返りだからじゃねーの?

:見返りというか、ファンサ?

:形は整ってきてるから

:最初は誰しも失敗はある

:最初から高難度に行ってるから失敗してるだけ

:それなー

:最初は卵焼きから始めるべきだった

:うむ

:ちな、味はうまい。バフはつかないけど、ENは25%回復

:回復要因としては優秀か

:結構なサイズだから

:4つ食べれば100%か

:悪くないやん


 やっぱり日本人。

 食べ物の話題には敏感だね。

 なまじ完成品ばかり見てるもんだから目が肥えてるんだ。

 だからこそ、100%の完成品と比べてしまう。

 今の時代は冷凍食品が主流だから、特に自炊をしない層が増えてきている弊害もあるのかもね。


 お姉ちゃんも頑張ってはいる。

 けど、そろそろコメントの悪意に耐えられなくなってきてるっぽい。

 こういうのも含めて配信を楽しんでほしいところだけど。


「そろそろ変わろうか? お姉ちゃん達の分も作らなきゃだし」

「いいの? 私のオムライスご馳走する形だったのに?」

「いいよ。お姉ちゃんには配信しながらの料理はちょっと早かったね。もっといっぱい練習してからすべきだった。配慮が足りなくてごめんね」

「ううん、私がやりたいって言ったことだもん。むしろハヤテだって慣れてないじゃない」

「そうだけど。私はシズラさんのところで接客で度胸がついてるから。だからお姉ちゃんよりは人の視線に慣れてるんだよね」

「そっか。じゃあ、お願いできる?」

「腕によりをかけて作っちゃうよー」


 袖をまくり、ポーズをとる。

 そこへ。


「遅くなった! 素材は間に合うかな?」

「おじいちゃん! ちょうど足りなかったところ。お姉ちゃん、野菜を切ってくれる? 多分数はたくさん必要になるから、リノちゃんと手分けして」

「お姉ちゃんに任せて!」

「私も、頑張る。美味しいの作ってね!」


 よしよし。こういう時は得意なことをやらせてあげるのがいいのだ。


「それじゃあ、ここからは私が変わります。あんまりお姉ちゃんと比べるのはやめてくださいね?」


:悪かったやで

:でも俺ら、やっぱり飯のことになると無意識化で口が出ちゃうんだなって

:俺もびっくりやわ

:精錬ならミスくらいどうってことないのにな

:苦労を知ってるかどうかじゃないの?

:多分なぁ

:自炊とか無縁の生活だし

:じゃあお前できんのかって言われたら

:トキちゃんごめんな

:俺らちょっと言いすぎたところあったわ

ハヤテP:( • ̀ω•́ )✧トキはよくやった

ハヤテM:始めたばかりであそこまでできれば上出来よ

:俺らも文句言う前にできんとなぁ

:ワイはできるから何も言わんけど

:できないやつほど声でかいから


「気にしてませんよ。へたっぴなのは事実だから。なのでこれから頑張ります!」


:えらい

:俺らも見習いたい誠実さやで

:そしてハヤテちゃんのケチャップライス

:実に見事な滑り出し


「なるほど、油はその分量で。玉ねぎが茶色くなるまで火入れを?」

「色味じゃなくてヘラに当たるときにシナってしてればオッケー。余熱でも火が入るから、ここで一気に炒めなくてもいいの」

「おー」


 お姉ちゃんは必死に覚える気になったのか、メモを取っては唸っている。

 それを見てリノちゃんが、ボソリと言った。


「私もお料理、習ってみようかな」

「お、リノっちもやる? あたし教えるよ?」

「教わるならハヤちゃんにがいい」

「おーし、一緒にそわろっか?」


:トキちゃんがへこたれない

:これがお友達の絆

:このポジティブさ、見習いたい!

:誰とでも仲良く慣れそうな子だな

:トキちゃん、すごくいいぞー


 本当だよね。

 このポジティブさ、見習いたい。

 言ってる側からケチャップライスが出来上がった。


「はい、一丁あがり。お姉ちゃん、この器に入れてお皿に乗せてくれる?」

「これ失敗しても笑わない?」

「なんと、やり直しが可能です!」

「おぉ!」

「失敗した時は潔く皿を洗うこと」

「あ、はい」


:ミスを許してくれるのはいいが

:お皿は有限!

:うっかり忘れそうになるけど、ここ外なんだよな

:なんだったら採掘スポットだぞ

:そうやん

:なんでここで飯を食えるんやろ

:この子達ならではの食事場

:AWOって自由なんだなー


「ケチャップライス、三人前お待ち!」

「はいよー、あたしもひっくり返すのうまくなったよ!」

「お皿三枚洗ったもんね?」

「あ、言わないでよ!」


 リノちゃんとの掛け合いが楽しい。

 そしてまだ食べてない人たちのケチャップライスが人数分お皿に乗る。


「お姉ちゃん、卵解いて。リノちゃんは調味料の準備。ここからは時間との勝負だよ」


 フライパンを熱してから濡らしたタオルの上で休ませる。

 卵料理の難しいところ、それは火が入りすぎてしまうところにある。

 最初にバター。それが満遍なくフライパンに溶けたところで卵液を投入。

 火は中火で一気にかき混ぜる。

 全体に火が入ったら火を弱めて、フライパン全体を動かして形を整える。

 このひっくり返すタイミングが命。


「よっほっと」

「上手!」

「ほへー、そうやって体全体でやるんだ?」

「私はこのやり方ってだけだね」


 オムレツが出来上がったら、ケチャップライスの上に乗せる。

 ここもまた難しいポイント。

 せっかく上手にできても、ここでミスった時のメンタルの負担は大きい。


「はい!」

「おー、きれい」


 お姉ちゃんとリノちゃんが拍手で迎えてくれた。


「それじゃ、切れ目入れるよー」


 スッとナイフを入れると、柔らかな半熟卵が崩れるように左右に広がった。


「んまほー」

「お姉ちゃん、ケチャップでハートよろしく」

「よっし!」


 ここで見惚れてたら次ができないからね。

 お姉ちゃんに仕事を多めに与えて次に移る。


:これは比べられんわ

:技術点高すぎる

:料理って芸術なんだな

:オムレツってこんなに難しかったんか

:トキちゃん、ケチャップで文字描けるのも才能だぞ

:そうなん?

:力関係間違えると大変なことに

:あぁ、その情景が見える


「姉妹特製、スペシャルオムライス、お待ちしましたー」

「私も頑張った」

「あ、そうだね、あたし達のスペシャルオムライスだった! 熱いのでゆっくり食べてくださーい」


 お姉ちゃんが配膳までやってくれる。

 そして配ったら次の配置についた。

 私がオムレツをケチャップライスに乗せて。


「ハヤちゃん、切るのやりたい」

「任せた」


 リノちゃんがやりたがってるので任せる。


「緊張する」

「リノっち頑張れ」

「はっ」


 薄皮一枚を切るように。

 フワトロの半熟卵はなだらかな流れでケチャップライスの山全体を覆った。


「うぉおおおおお!」


 リーガルさんがうるさいので、それをあげるように指示。

 リノちゃんは面倒くさそうな顔をしたが、自分のために借金を背負ったことを思い出してか、恥じらいながら差し出した。


「おじいちゃん、うるさい。みんなもいるから静かにしてね」

「もうこのオムライス一生取っとく」

「ダメ、食べないなら他の人にあげる」

「よーし、じいちゃん頑張って食べるぞー」

「ん」


 そんなほっこり(?)する場面もありつつ。

 なんとか全員分のオムライスが完成した。

 本当に、なんでこんなことになったのやら。

 気がつけば総勢数十名のリスナーさんが集まって、一緒に食卓を囲うことになった。


 配信て、こんな感じだっけ?

 前世ではもっと、こう……まぁいいか。

 こう言うのも醍醐味ってことで。


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