131話 AWO配信!_みんなでお料理
「それじゃ、楽しい楽しい料理のお時間だよー」
「お手柔らかにお願いします」
:トキちゃん、すっかりしおらしく
:鍛治は?
:その前に家事から
:どっちでもいいよ
:トキちゃんの成長が見られるのは今だけ!
本当にね。
お姉ちゃんは知らないことが多いだけで、やればできる子だから。
そこで完全に他人のふりしてるリノちゃんより全然見込みがあるよ。
「ハヤちゃん、何か言いたいことがあるなら言ってね。できることぐらいなら手伝うから」
「じゃあ、玉ねぎ洗ってくれる?」
「いいよ」
リーガル:おお、孫が率先的に
:いや、率先的にではないだろ
:でも断ることもできたのに、やったってことは?
:何もしてないのを悪いとは思ってたんやろ
:今回は採点係しかしてなかったからね
みてるだけの人が、リノちゃんだけを悪くいうのも違うような?
彼女だってやれることをしてるんだし。
そんなことを考えていたら。
「玉ねぎも切ろうか?」
「すっごい目がしみしみになっちゃうよ? 涙ボロボロリノっちになるよ?」
「ならないし」
すでに涙ボロボロなお姉ちゃんが言うと凄みが違うよね。
貸してみろ、とばかりにお姉ちゃんから包丁を奪ったリノちゃん。
なんとそこには手を丸めて慣れた手つきでみじん切りをするリノちゃんの姿があった!
あれ、料理できたんだ?
あまり率先してやらないから、お姉ちゃんと同じでてっきり。
リーガル:うぉおおおおおお、見ろ俺の孫は包丁さばきも凄い!
:おじいちゃんうるさい
:これはおじいちゃんへのファンサみたいなやつ?
:借金100億だもんなぁ
:玉ねぎ切るだけでチャラになるなら俺もやるわ
リーガル:は?
:威圧すご
:孫になってから言え定期
:いや、これは流石にリーガルさんが正しいわ
:他の誰でもないやつにその額借金できるのはただのバカ
:昔、そんなバカがいたんですよ
:え、誰?
なんか嫌な予感がするので話を切り替える。
昔の人物で、方々に大枚叩いてる人物なんて一人しか思いつかないもの。
「リノちゃん、上手」
「斬るのだけね。火を使うのは苦手」
「そこは私少し自信あるよ?」
「じゃあ、焼くのはお姉ちゃんにお願いしよう」
「うん」
「ごめん、調子に乗りすぎました。焼くのもお手伝いしてぇ」
:てぇてぇ
:女子がバカやってる姿ってあまりみないよな
:配信といえど、イメージがつくし
:ここは流石にその無防備を売りにしていくか?
:別に苦手な分野があってもいいやろがい
:トキちゃんからは高濃度のてぇてぇが摂取できる
:ハヤテちゃんはそういう隙を見せないから
:それが普通なのでは?
:リノちゃんだって恥じらいあるのになぁ
:どうしてトキちゃんだけ……
ハヤテP:( • ̀ω•́ )✧トキも頑張ってる
:これ、ハヤテちゃんの成長が早すぎるだけか
:その可能性が高そうだな
「そんなつもりは、ごめんねお姉ちゃん」
「ハヤテは悪くないよ。むしろ私の苦手な分野を補ってくれてるし。それで文句は言えないって。じゃあ、ここからアタスたちの実力をリスナーに見せつけちゃおっか?」
「おー」
「おー」
私は大きく上でをあげ、リノちゃんは小さく胸の前で拳を握った。正確さが出てて大変よろしいね。
こういう配信って、みんな似たり寄ったりになりがちだけど、うちはいい感じにキャラが分かれてるので助かってる。
「それじゃあフライパンに火を入れるよー」
「油はこれくらい?」
「あんまり入れすぎないでね、カロリーやばいから」
「ゲームだからそこはなんとか」
「いっぱい入れると跳ねるよ」
「じゃあちょろっと」
「それは少ないかな?」
恐る恐るという感じがまたお姉ちゃんらしい。
「お野菜切り終わったよ?」
「時間かかりそうだから水にさらしとこうか?」
「りょ」
:トキちゃん、初めての火入れ
:火は怖いよな
:ハヤテちゃんは怖くないん?
「そりゃ最初は怖かったですよ。失敗したらどうしよう、っていうマイナスイメージに支配されちゃってるので。きっとお姉ちゃんも今そんな感じだと思います」
「当たり。これ失敗したらどうしようかってずっと考えてる」
「失敗したら、リスナーさんに食べて貰えばいいんだよ」
「あ、なら大丈夫か」
:大丈夫じゃないです
:できるならうまい飯食わせてくれ
:野菜はともかく、ご飯のストック大丈夫そう?
「そこはなんとか。お米その物はあるので、同時進行でごはん炊いてます」
「抜け目がない!」
「逆に言えばトキちゃんが失敗する前提なのを心配しるところ」
「ぐぬー、それはそれで悔しいぞ!」
「ケチャップライスは強火でサッとやっちゃう方が成功しやすいよ」
「よしきた、強火ね」
ゴォッ!
ガス台から溢れる火の海。
こんな火の勢い、調理じゃなかなかみない。
ぱらぱらチャーハンでも作るつもりかな?
:炭待ったなし
:おいバカやめろ! ダークマターになるぅ!
:これは早くも失敗の予感ですね
「お皿用意した」
「今!」
ざぁー!と切っておいた野菜を投入。
ばちばちと油が跳ねてそれはもう大変なことになった。
ちょっと油多すぎたかな?
「ウインナー入れるよー」
「ちょっと待って。フライパンが大変なことに!」
「ケチャップ用意した」
「あわわわわわー」
出来上がったのは油っぽく、あまり火が入ってないベチャベチャのケチャップライスだった。
玉ねぎに火が入ってればOKなので、早速一つ目のお皿に盛り付けておく。
「今回のは火に慣れるという意味では大きな躍進だったんじゃないの?」
「火にかけたらあまりフライパン動かしちゃダメだね」
「そうなの? もっと手早くやるイメージあった」
「そのイメージ、チャーハンじゃない?」
「そうかも」
それから、二回目、三回目とやっていくうちに少しずつ火の入れ方を覚えていくお姉ちゃん。
結構な数のケチャップライスができたけど、問題はこれから行うオムレツの重要な部分、フワトロオムレツだ。
私はここにチーズを入れたりしてアレンジするけど、お姉ちゃんにこの芸当はまだ早い気がしてならない。
「まずは見本見せるね?」
「このまま一気に私達の分も」
「だーめ。お姉ちゃんが作ったのは私が食べるんだから」
「そうだった」
「じゃあ、私の分はハヤちゃんが」
「お姉ちゃんにじゃんけんで勝ったらね」
「負けられない戦いが、始まった」
:俺たちにもそのじゃんけん勝負混ぜて
:手伝いに来たワイ、今とても複雑な気分
ハヤテP:( • ̀ω•́ )✧娘達の料理を食べるのに何か不満が?
リーガル:そんなもんねぇよなぁ?
リノP:( *˙ω˙*)و 今そっち向かった! リノ、パパの分も用意しとけ
リノM:迷惑ですよ、お父さん
リーガル:少し急用を思い出した
オクト:向かわれますか?
リーガル:やはり、子供達だけでは心配だ
オクト:お供しますよ
:このバカ親ども
:まぁ孫の手料理は男親だったら誰でも食べたいよな
:ハヤテちゃんの手料理くらいは食べてそうなもんだけど?
:負けられない戦いの裏で、醜い争いが始まっちゃった!
なんかみんなこっち来る流れになってない?
やめてよね。流石にそこまで用意できてないから。
いや、待てよ?
「こっち来るなら食材の買い出しお願いします。卵、玉ねぎ、あとはウインナー、ケチャップなんかも」
オクト:買った、トレードで渡そうか?
リーガル:いや、ここは現地に到着してどっちが早く渡すかだな
リノM:何やってるんですか、子供達のメインの番組で!
:本当にそう
:来ないでもろて
「来てもいいけど、テーブルは用意できないから地べたで食べてもらうよ?」
リーガル:それで構わない
オクト:なんならテーブルセットも用意して駆けつけるよ
:このアイテム制作のトップは本当にやりかねないからな
「それじゃあ、どっちが早く食べられるか、スタート! 先に居合わせた人たちに振る舞っちゃうねー」
オクト:あっ
リーガル:身内特約は?
「早い者勝ちということで」
:ハヤテちゃん、いい笑顔やで
:この身内にも容赦ないところ、将来絶対に尻に敷くタイプになるな
:それ




