129話 AWO配信!_鍛治錬成
「はい、ではここからはお姉ちゃんによる鍛治パフォーマンスです。私たちは邪魔になるから向こうに行ってようか?」
「うん」
今度は鍛治の生産台を配置。
これは一人用なので、邪魔者は撤退しようと促す。
リノちゃんは獣人なので熱いのは苦手。
外での鍛治仕事はどうしても近場が暑くなるので一緒に退避した。
これは完全に盲点だったけど、よく考えなくたってハーフマリナーも熱に弱いんだよね。
なんで鍛治取ろうと思ったんだろう?
え、それを言ったら調理も同じだって?
そういう細かいこと言うとモテないよ?
「ねぇ、ハヤテ。インゴット化を手伝ってくれたりは?」
「ダメだよ、お姉ちゃん。ズルしちゃ」
「ズルはダメ」
「ずるじゃないよー、効率化!」
:いや、あれだけ幸運発揮されたら誰だって頼りたくなる
:石ころ生産機だったトキちゃん、精錬の程は?
:これはダメそうですね
「その代わり、銀の採掘は任せて!」
:メンタル死ぬぞこれ
「私、また判定係するね」
:リノちゃんの優しさがトキちゃんに深刻なダメージ!
:◯と❌が並んでいるけど、これって◯を競うゲームだっけ?
:違うよ
:別に勝負はしてない
:本来はトキちゃんくらいの確率が普通
:ハヤテちゃんがおかしいんよ
「お姉ちゃん、いっぱい追加するから気負わずに精錬してね」
「ハヤテの優しさで涙がちょちょぎれそうだよ」
「ハヤちゃん、やさしー」
:皮肉だよ!
:皮肉だね、これは
:リノちゃん、この時以外に素直
リノP:( *˙ω˙*)و がんばれ、トキちゃん!
ハヤテP:( • ̀ω•́ )✧うまいぞ、トキ
ハヤテM:いい感じ、その調子よ、トキちゃん!
:みんなしてトキちゃんを応援してきた
:急に手のひら返すじゃん
:やっぱりね、人の成長は見てて美しいから
:ハヤテちゃんは?
:なんか上手いことやってる人見てると、応援する気も起きないというか
:卒なくこなしてて、なんと言うか、住む世界が違うのかなって
:料理もできて、お歌もお上手、そこにきて採掘もプロ並み
:弱点ないのかな?
:ハヤテちゃんの泣いてる画像はどこでもらえますか?
実装予定はないよ。
それにしても、上手にできすぎても応援してもらえないのか。
女の子の世界は難しいね。
お姉ちゃんはうまいことやってる。
いや、あれが通常行動か。
お姉ちゃんは愛されキャラだね。
そんなことを考えていたら。
「あ、石ころ出ちゃった」
:ズルはダメだよ、ハヤテちゃん
:今ミスすれば美味しいと思ったでしょ?
:そうやって姑息な手を使うと後で取り返しの付かないことになるよ?
「違うもん、私だってミスすることくらいあるもん!」
「はいはい、ハヤテ。石ころそこに置いてね、リノっち、そこにちゃんと❌書いてね」
「なんかトキちゃんから執念じみたものを感じる」
「あたしもね? やればできるのよ。見なよ、あたしのインゴットを」
:おぉ! トキちゃん、ここにきて成功か!
:巻き返しの時は来た!
:頑張れトキちゃん!
:ハヤテちゃんはもう少し手加減して!
お姉ちゃんがここで調子を上げてきた。
私も負けじと採掘を頑張る。
というか、なんかいつの間に勝負になってるけど、これは普通に鍛治をする前の準備みたいなものじゃなかったっけ?
あれー?
配信をする前だったら、ここまで白熱はしなかったけど。
なんでかお互いに引けない戦いみたくなってきた。
リノちゃんもさっきまで余裕を見せてたのに、なんでか今はソワソワしてるし。
:やった! いい感じだぞ、トキちゃん!
:イケイケ! 追い込め!
:ハヤテちゃんを追い越せ!
「みんなー、応援ありがとう! この調子で成功してハヤテの鼻を明かすよー!」
:トキ! トキ!
:トキ! トキ!
:トキ! トキ!
なぁにこれぇ。
まぁお姉ちゃんが本番に強いと言うのはわかってた。
あのナイアルラトテップさえ手玉にとっていたんだから。
なんと言うか、性格的に配信に向いてるのだ。
状況を味方につける、前世の私も得意だったんだけど。
いつの間にやら苦手になってしまったようだ。
「あ、採掘ポイント終わっちゃった。ミスが多いから、維持はこれくらいかな?」
おおよそ30分の死闘。
普通は5分維持するので精一杯。
けど、お姉ちゃんの成功率が上がってきたのもあり、インゴットの数もそこそこだ。
「お疲れー」
「みんな頑張った」
「あたしのトンカチ捌き見ててくれた?」
「私は採掘するのでいっぱいだったよ」
:うぉおおおお!
:トキ! トキ! トキ!
:トキ! トキ! トキ!
「お姉ちゃん、大人気だね」
「ふふん、あたしの魅力のなせる技よ」
:やはりダメな子が頑張る姿は美しい
:それ
「なんかダメな子呼ばわりされてるけど?」
「それはちょっと嫌」
正直でよろしい。
鍛治台をしまい、調理台に変形させる。
そこで私は卒なく料理をパパッと作る。
「はーい、ドリンクサービスでーす」
「やった、めっちゃ喉乾いてた」
「私も」
:リノちゃん、何かしてたっけ?
リノP:( *˙ω˙*)و 採点係頑張ってたじゃろがい!
:あ、そっすね
:あ、この人……
:子煩悩ですね
:わかりやすい
ハヤテP:( • ̀ω•́ )✧うちの子の頑張ってる姿を見れて感無量
ハヤテM:ハヤテちゃんは完璧主義だから、仕方ないのよ
「じゃあ、次、私が精錬するね」
「お、じゃああたしが採掘?」
「ううん、お料理。ENうんと減らしてくるから、美味しいのお願いね?」
「オッケー、最高の冷奴を食べさせてあげるよ!」
「お豆腐を水で洗うだけじゃん」
「なぬ? お水を使えば料理だよ? 仕方ないなー、特別に最高の卵かけご飯をご馳走してやろう」
:おっ、これは
:それでお腹いっぱいになるとはならないけど
:ダメな子のお料理だぞ! みんなで応援しよう!
:これは期待
:嫌、料理だけはミスして欲しくないわ
:完璧主義のハヤテちゃん、ミスを諦めないトキちゃん
:これはどっちを応援すればいいんだー!
「私、トキちゃんのご飯はいらないかな。私の分はハヤちゃんが作ってね」
:リノちゃん、危険察知能力が高い
:さすが獣人
:トキちゃんからメシマズのオーラを察したか!
:いや、友達って時点でわかるでしょ
:学生時代の親友がメシマズかどうか判断できる機会なくない?
:それ
「とかリノちゃんは言ってますけど?」
「いいでしょう。三日後にきてください、最高のオムライスをご馳走してあげますよ」
:なんか構文きた
:オムライス……できるのか、トキちゃん?
:卵かけご飯の亜種とか思ってそう
「違うの? 卵とご飯。あとはなんかパッパとやるんでしょ?」
「一回作ってあげようか?」
「おねがーい」
鍛治台に戻す前に、そのまま調理をする。
まず用意するのはご飯。
これは事前に炊いてあるのをストレージに持ってきてるのでそれを使っちゃう。
ガス代の上にフライパン。
サラダ油、玉ねぎ、輪切りにしたソーセージなんかをケチャップで炒めてからご飯を投入。
そのまま火入れしていい感じに混ざったら専用のオムライス用の器に入れて盛り付けてるところでお姉ちゃんが「無理そう」と弱音を吐いてきた。
あの、まだ一番難しいオムライス部分が終わってないよ?
ケチャップライスで挫けないでほしいな。
:ぐあー、これはうまそうすぎる
:料理に関してはミスが多い子より断然手際がいい子の方が推せる
:ハヤテ! ハヤテ! ハヤテ!
:ハヤテ! ハヤテ! ハヤテ!
なんか知らないけど、流れがこっちにきたので、そのままフワトロオムレツを作る。
中にチーズなんか忍ばせて、よっほっと。
「完成。チーズオムレツだよー」
「んまほー」
「これは私の分だよね?」
なんかお姉ちゃんとリノちゃんが食べる気満々でいるけど。
「まだお腹空いてないから、パッキングしちゃうね?」
「生殺しやめて」
「ハヤちゃんのいけず」
「いや、これはただの見本で」
:目の前で奪われたらそうなる
:見本の範疇超えてるんだわ
:これを超えるオムライスをトキちゃんが?
:さっき無理そうって言ってなかった?
:俺のログには何もないよ
:俺のも
ハヤテP:( • ̀ω•́ )✧トキ、頑張って
ハヤテM:お母さん応援してるわね
:ここで逃げらんねーよなー?
「わかったよ! でも、うまくできなくても笑わないでね?」
「私だって料理は失敗の連続。それを笑ったりはしないって誓うよ」
「ならやる」
ヨシ!
お姉ちゃんはやらないだけでやれる子だって私は知ってるから。
なので次の鍛治に取り掛かる前にインゴットの数をこれでもか!と増やしておこう。
採掘は、なぜか集まってきたリスナーさんに任せて。
配信はこう言うところで助け合いできるから楽しいのだ。
でもこれ、後でご飯奢る流れじゃないよね?
流石に他の人の分の食材までは用意してないんだけどなー?