126話 AWO配信!_セカンドルナ散策!
ちょっとしたトラブルはあったけど、気を取り直して。
「この橋を渡ると次の街のフィールドですね。出てくるモンスターが変わるのでご注意を」
「ハヤちゃんは私が守るから!」
「リノっち、あたしは?」
「……頑張って」
「ちょっと~~!?」
:あれ、リノちゃんてどっちの友達なんだっけ?
:明らかにハヤテちゃんに気がありますね、クォレハ
:仲睦まじいですね
「実はリノちゃんとは今日が初めてじゃなく、何度か顔合わせしてるんですねー。その時にご飯を振る舞ったら、妙に懐かれてしまって」
「ハヤちゃんのご飯は神。トキちゃんはスタミナ切れても何もしてくれないからキラーイ」
「ごめんて、WBOではいつも所持金カツカツなんだよー」
:WBOはなー、装備に消耗品に割とお金かかるから
:うん、まぁ
:そっちでは流石にビルドミスしてないよね?
「え? WBOでも吟遊ロールだけど?」
:それはビルドミスしたトキちゃんが悪くない?
:バトルをリノちゃん一人に任せて食事用意してないのはギルティ
:そこをAWOでハヤテちゃんが補ったのか~
「そうみたいですね。私はバトルはそこまで得意じゃないので、WBOはあんまり向いてないのかなって思ってました。AWOならこうやって、種族とか、お料理とかで後方支援できるので、あんまり気にしていないですけど」
:あー
:WBOではそういう離れ技はできないからな
:ビルド次第でいろんな遊びはできるけど
:生産は生産でサーバ分けしてるし
:そうそう
:生産するならバトルは捨てないとだから
:そういう意味ではAWOは特殊なんだな
:生産でも戦闘貢献できるのって案外ないもんな
「実はこの後、お姉ちゃんに連れられて初めてWBOに参戦するんですよ。その時に足を引っ張らないといいんですけど」
:ハヤテちゃんは生産希望か
:じゃあ一緒に冒険はストーリーサーバになっちゃうか
:WBOミリ知らなんだけど、生産てそこまで立場ないの?
:戦闘サーバは敵が強くなる代わりに報酬が旨くなるっていう恩恵が
:こっちだとそういうのないのか?
:あるよ
:あるけど、敵の強化のされ方が理不尽というか
:まぁ、戦闘サーバみたいなものじゃないから
:ほんとぉ?
:さっきまでの戦闘じゃ一切そういうの見えてこなかったけど
:まぁ、高みの見物と行きますか
「理不尽なイベントなんてありましたっけ?」
なんかあるかな? と、すっとぼけながら歩く。
コメント欄は憶測と、お姉ちゃんのビルドについて大いに盛り上がる。
たまにモーバさんが現れてはリノちゃんの機嫌が悪くなったりするのもご愛嬌。
:でも、さっきのチェインはなかなか見事だったな
:BGM担当としては優秀
:つまりハヤテちゃんがご飯、トキちゃんがチェイン、リノちゃんが荒事担当なのか
:バランスがいいのかなんなのか
:いやぁ、よくはないでしょ
:配信受けはいいでしょ
:確かに
:ここからモブが複数で出てくるな
:ファストリアでは単体だけなのか?
「言ってる側から、来ましたね」
:だからこの演出怖いって
:今度はドローンタイプのボールと?
:おい、これ、スワンプマンて書いてある
:子供泣くぞ?
:エグいモンスター設置しやがって!
:これ、負けたら乗っ取りもあるのか?
:あるよ
:あるのかー
:そこは実装しなくていいだろ!
:異形系ってそういうやつかー
:よく考えなくても、アトランティスの時点で、まぁ
「まぁ、最初はびっくりしましたけど。こういうのは慣れですよ、慣れ」
「ミュージック、スタート!」
「鬼さんこちら~、ドローンは釣るね。リノちゃん、スワンプマンをお願い」
「任された!」
:リノちゃんキレッキレや!
:ハヤテちゃんもまるでマーメイドみたいやな
:これなんで空飛んでんの?
:ズル?
:ハーフマリナーだから?
:なにそれ
:昔のプレイヤーが開放した種族
:それまではサハギンしかなかったから
:違うぞ、マーマンとマーメイドや
:もちろん地上での活動はNG
:その両方をかなえたのがハーフマリナー
:え、そんな種族をプレイヤーで開拓できるの?
:できるけど、条件がな
:その条件て?
:過去改竄
:ごめん、なんて?
「しっぽビンタ! お姉ちゃん!」
「へい、パース!」
:ボールがビーチボールみたいに翻弄されてるで
:安定のダメージ0である
:武器使わないと攻撃0なの?
:違うぞ、ダメージの発生源はスキル依存
:武器は見た目装備まである
:リノちゃん:(;゛゜'ω゜'):
:形から入ったばかりに
:でもその装備でどんなビルドか一目瞭然だから
:刀使いはスピード特化でしょ
:それ
「スキル発動【瞬歩】」
:消えた?
:違う、背後とってる!
:全く相手に攻撃させてないぞ!
「いえーいロックンロール!」
ギャーーーン!
お姉ちゃんのハープからエレキギターの音が迸る!
私はマラカスを振りながら、楽しげなメロディを奏でた。
:でも、その攻撃を起点に吟遊バフでまたチェイン入った!
:AWOってバトル面白いな
:吟遊ってこういう遊び方もあるのか!
:WBOでは完全に固定化されちゃうからな
:遊び方の自由度ではAWOに軍配が上がるか!
:リノちゃん、仕留めた!
:そこに、しっぽビンタでおかわり!
:ハヤテちゃん、戦闘苦手って割に戦えてない?
:それ思った
:でも多分、これはAWOだからかもしれないな
:あー
:WBOじゃこういう芸当はできないから
:スキルの自由度そこまで高くないもんな
:そういえばこのゲーム、ジョブは?
:あるよ
:あるけど前提条件が厳しすぎる
:ジョブ取得の前提条件が厳しいって何?
:多分討伐モンスターとか必要マネーが高額とかだろ
:うん、まぁ
:まだその時じゃないから大丈夫だよ
:気になるごまかしするじゃん
そりゃ空に浮かぶか、マグマの耐性とって精霊と竜人のご機嫌伺い終始するかは人によっては難易度高いどころの話じゃないよね。
空の試練に関しては、ある程度開放しているとはいえ。
誰か有志のクランが赤の禁忌の維持活動をしてくれればって思うけど。
やり手のジキンさんが匙を投げるくらい赤字だったからね。
何もかも懐かしいけど……今世ではお世話になることはそうそうないかな。
「と、こんな感じで戦闘終了です」
:お? おぉおおおお!
:なんで疑問符?
:生産が普通に戦ってたから?
「この程度で戦闘に参加した、と言い切れる自信はないかなー?」
「だねー、チェイン貢献でドロップ率上昇くらいしか活躍できてないし」
「そのドロップでこの後のご飯が豪華になるならそれは最高」
:それはそう
:確かにビルド傾向では役立たずの烙印押されがち
:このビルドでも遊べるっていうのはある意味勇気もらえるな
「このあとはどうする? ご飯食べるか、金策用に採掘してくか」
:採掘?
「セカンドルナではドロップに鉱石が見込めるエリアがあるんですよー。最近お姉ちゃんが鍛治齧ってて。私たちにアクセサリーを作ってくれてるんだー」
「まぁね。足引っ張ってる自覚はあるので」
ポロンポロンとハープを奏でながら相槌を打つ。
さっきから悪目立ちしまくってるから汚名返上に必死だね。
別に私たちはそこまで邪魔だとは思ってないからね?
「トキちゃんにはこの鈴を作ってもらった。鳴らすと敵のヘイトを少しもらってくれるから、私と相性バッチリ!」
リノちゃんがムフンと鼻息を荒くする。
:バフ効果付きアイテムまで作れるのか!
:WBOだとドロップのみだっけ?
:鍛治でもいけるけど、スロット空けなきゃだよ
:品質高くないとスロット開かないんだよなー
:それがAWOだとプレイヤーメイドで作れると
:なかなか面白そうなんだよな、AWO
「明後日まではAWOで遊んでますので、気軽に声をかけてくださいねー。流石に収録をご一緒できるかは分かりませんが。スクショぐらいはご一緒できますから」
「ハヤちゃん、お腹すいた」
「あちゃー、採掘中にご飯タイムしようと思ったけど、もう持たなそう?」
「うん。EN効率悪くてごめんね」
「井伊良いいよ、私たちの代わりにバトルしてもらってるもの。じゃあ、少し早いけどご飯にしちゃいますね。リノちゃんは何がいいかな?」
「お肉! 鳥のやつね!」
「はいはい」
:待って、外で作るの?
:そんな機能あるっけ?
:ないよ
:流石にここでは作らんやろ
:街に戻って生産台かな
:でも、セカンドルナって調理形生産台あったっけ?
:さぁ? あったんじゃね
:昔のことすぎて思い出せない
「お姉ちゃん、テーブル出してー」
「はいよー」
:あ、買い置きのアイテムか
:AWOにはそんな機能もあるんだー
:WBOとは違うな
:ないぞ
:え?
私は幻想装備で生産台を作り出す。
テーブルの上にメニューを並べ。
お姉ちゃんは流しで野菜を洗ってもらった。
リノちゃんはお皿の用意。
「それじゃ、ご飯作っちゃいますねー」
私は実演販売よろしく、リスナーに向けて調理配信を始めた。
加速するコメント欄では未知の情報と、憶測が爆速で飛び交った。




