ファミレスの二人
自分を守っている奴は嫌いだ
無理をしない奴も嫌いだ
出来ない奴に皺寄せがいくのを
分かっていながらやらないからだ
繰り返して
キツくなっていくのを知っているし
全てがマイナスで回っていくのを
後押ししている
自分が楽になりたいなら
やらないと意味がない
彼女は彼の仕事の愚痴を聞きながら
相槌ちをして
同意している言葉を並べた
ウェイトレスが運んできたメニューを
彼の前に並べながら
場を整えていくのである
いつものことであるからか
手慣れているようだ
苦笑いすらしない顔は
彼専用のやる気の出し方を
経験から学んでいるのだろう
背中越しの会話を聞きながら
上手く回っているのは
まずは彼女が聞いているからだと
ゆっくりと考えていたが
彼側から彼女に話題を振るので
お互いがお互いのリズムを
なんとなく理解しているからだと考え
もう少しだけ聞き耳を立てた
我ながら趣味の悪いことである
課長が使えないのよ
仕事の振り方が毎回同じで
得意な人にしか回さないから
後輩達が全く育たない
前にも言ったし
主任に言ったら良いじゃんて
アドバイス貰って言ったけれど
主任は主任で課長に頭が上がらなくてさ
仕方ないから主任が
得意な人達に後輩をサポートにつけて
仕事を覚えさせているの
絶対に誰か辞めたら
回らなくなって
主任が引き受けていくんだよ
変な職場だよね
彼は彼女の話に相槌と
間に言葉を入れて労っているようだった
彼女が自分のアドバイスを行ったことが
彼としては嬉しかったようである
ご満悦であろう声色だった
そこに彼女も明るい声で返している
相乗効果として成り立っているから
面白い話である
暫く、お互いに仕事の話をした後に
旅行の予定を立て始めていた
有休を月火か、木金で取って
平日を挟んでゆっくりしたいという
今までよりも弾んだ会話である
お互いに有休日数を確認しており
ちゃんと休めるようであった
バレンタイン旅行にするかという
甘い話に花が咲いている
食べ終わったようで
ドリンクバーとスマホを行き来し
最終的に月火休みで行くようであった
明らかに空いているだろうと
予測してのことである
宿の話は
彼の家に行ってから続けるらしく
二人は席を立って会計をしている
彼が全額支払っているが
コンビニでと二人は話しをしていた
もう声は聞こえなくなっていた
外にはライトを付けた車が
三台ほど信号待ちをしている
街灯が三本目まで見え
真ん中の一本の明かりは
他の街灯よりも光り方が小さい
静かになった店内は
向こうで偶に子供の声がする
禁煙の方に家族連れが居るのだろう
ウェイトレスが
出て行った二人のテーブルを拭いている
音が鳴ると
奥の方からいらっしゃいませと声がした