<樺> 1
線路は続くよ どこまでもの二話目、<樺>の一日目のお話です。一話の楡ともリンクしていますので、いっしょにお楽しみください。
線路は続くよ どこまでも
第二話 <樺>一日目
、、、失敗だ。
あいつに見られたあの時から
俺の計画は台無しだ。
あいつは今、何処にいる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は表向きにはごく普通のありふれたサラリーマンだった。
そんな俺も夜になれば立派なヤクザに変わる。
昼と夜の性格の変わりようには正直、自分でも驚くほどに変わる。
毎日、闇に紛れて危ない仕事をこなす日々だった。
そんなとき、俺のもとに一通のメールが届いた。仕事だ。内容は、
「北海道羅臼町にて、コード4Dが確認された。お前には、北海道でのコード4Dの始末を頼みたい。なお、出発日は5日後、期限は7日後する。」
というものだった。
コード4Dとは、日本各地を転々としている危険人物である。そいつが北海道に潜んでいるので始末しろということらしい。
コードが割り振られている人物の報酬は他とは比べ物にならないほど高額だ。受けない手はない。
メールが来た30秒後には差出人に
「引き受けた」
とメールを送っていた。
5日後、組織から届いた航空券で渡道した。オホーツク紋別空港に無事着陸し、タクシーで網走駅へ向かった。
昼食も兼ねてのことだったが、食べたいものがなかったので、昔から気になっていた北浜駅の「停車場」というカフェで軽食を取ることにする。北浜駅に到着し、軽く昼食を取ってホームに出ると、すでに人が1人だけ列車を待っていた。
こちらが黒ずくめだからだろうか、なぜか俺を怪しいものを見るような目で見ていた。だがさほど気に留めた様子はなく、俺もすぐに忘れてしまった。
まさかこの男に、今日のうちにまた再開することになろうとは、夢にも思っていなかった。
列車が来たので、自前のスーツケースを持ち上げて車内へ入った。
とりあえず知床斜里駅で下車して、タクシーでウトロ市街へ移動した後、コード4Dを始末する計画を車内で立案した。我ながらよくできた作戦だと思った。
知床斜里駅が近づくと、車内の半数ほどの乗客が立ち上がった。外国人もおり、知床への観光客だろう。
さっきの北浜駅の男も降りるようだった。
列車が知床斜里駅に停車すると、車内の人が一斉に動き出したため、なかなか降りられなかった。
列車から降りた後、人気がなくなるまで待った後、改札を出てタクシーを捕まえた。
バスの時刻表を見てみたが、タクシーのほうが速く着くことができることは明らかだった。
タクシーに乗ってウトロへ着くと、怪しまれないよう観光船の受付所の前で降りた。ちょうど観光船が出港したときだったので、タクシーの運転手は少し気の毒どうな表情を浮かべたが、すぐに走り去っていった。
ウトロの市街地は小規模かつ少人数なので、コード4Dを見つけるのにさほど時間はかからなかった。
30秒程度で始末し、空のスーツケースに入れた。コード4Dは小柄だったので、大きめのスーツケースにすっぽり入った。
依頼には「始末しろ」とあったので、死体もしっかりと処理することが求められる。
辺りを見渡すとちょうど良さそうな岬を見つけたので、そこで処理することにした。
近づいてみると、ほとんど断崖絶壁になっていて、投げ捨てるのにはちょうど良さそうだった。
そのときに、スーツケースごと投げ捨てなかったことが俺の運の尽きだった。
先程の北浜駅の男に死体遺棄の一部始終を目撃されてしまったのである。
その後、男は大急ぎでバス停の方へ走って行ってしまった。
俺はしばらく放心状態になって、その場で佇んでいた。
俺の心のなかで「見られた」という大きな焦りが渦巻いていたが、今はそれどころではないことに気づくのには時間がかかった。
おそらく、あの男はバスに乗って知床斜里駅まで引き返し、そこから人口が多い釧路へ向かって身を隠すだろうと、長年培ってきた俺の勘が言っていた。
そうとなれば、コード4Dの車を使って釧路まで行き、待ち伏せして消す。
そのために、まず急いで釧路へ向かう必要があった。
だが、あいつは何処の駅で降りる?
釧路駅か?1つ前の東釧路?それとも他の駅で降りてバスやタクシーを使う?
この3つの選択肢から直感で1つ選び、それに応じた立ち回りをしなければいけない。
俺は、自分なら東釧路駅で下車して追手を巻くと考え、東釧路駅での待ち伏せを行ったが、誰も降りて来なかった。一応、車内も調べたが、あの男は乗っていなかった。
3つ目だったか、、、読みが外れたな、、、
激しい疲労に襲われ、夕食を食べずに車内で寝落ちしてしまった。
線路は続くよ どこまでも <樺>1はどうだったでしょうか。
次は<槿>1を執筆いたします。お楽しみに






