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<楡> 1

 私は鉄道が好きです。そんな私と同じように鉄道好きな人や旅行好きの方々に読んでいただければ幸いです。

線路は続くよ どこまでも


第一話 <楡> 1日目


 俺は何をしているのだろう。

 北海道へは鉄道旅行をしに来ただけなのに

 どうしてこんなことになった

 どこで間違った

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 遡ること一週間前、俺は北海道への旅程を立てている最中だった。

 俺の趣味は鉄道旅行だ。車内に座り、列車の走行音、レールを走るカタンカタンという音を聞いていると、なぜだか心がほぐれていく気がした。出発に備えて行く場所を決めるのでさえ楽しい。今日も同じように予定を組んでいた。

 そのとき俺は、何を思ったのか「日本の最果ての駅に行こう!」と思い立った。

 昨日見たテレビが原因だろう。日本の最果ての駅として最南端の赤嶺、最西端の那覇空港、最北端稚内、そして最東端の東根室だ。

 北海道には何回か渡道したことがあるが、道東、北海道の東側は行ったことがなかった。

 俺は行きたいという強い衝動を感じ、今度の行先を道東に定めた。

 その6日後、俺は飛行機で渡道した。新幹線を使う手もあったが、新幹線は帰りの楽しみにとっておくつもりだった。

 およそ2時間で女満別空港に着陸した。女満別空港にしたのは、東京からの便が比較的多く、石北本線の西女満別駅までのアクセスが良いからである。

 西女満別駅までは約2kmだから、旅慣れた俺にはなんてこと無い。西女満別駅からは本題の鉄道旅行の始まりだと思っていた。

 おかしい。

 いくら歩いても駅が見えてこない。もう5kmは歩いただろうか。

 見逃した?

 まさかと思い引き返してみると、案の定、西女満別駅があった。

 最初はこの建物はなんだ?と思ったが、駅から伸びる線路とホーム、駅名看板を見て駅だと気がついた。最初は「廃駅かなにかだろう」と思い見過ごしていたが、そこはしっかりと「駅」であった。

 結局約8km歩いてたどり着いた西女満別駅は、普通なら20分ほどで着ける駅に行くまでに1時間以上かかってしまった。

 西女満別駅から石北本線に乗って網走へ向かおうとして、時刻表をみて目を見開いた。

 なんと3時間後まで網走方面へ向かう列車がなかったのだ。

 昔、渡道したときに車内で知り合った道民から聞いたことがある。

 「北海道の田舎の方は、今は3時間くらい待たないと列車が来ないらしいねぇ。昔は、1時間に何本も走ってたのに。寂しくなったねぇ。」

 前は冗談半分で聞いていたが、実際に来てみると本当だということがわかる。

 結局3時間待つ羽目になり、ようやくやってきた網走行の列車に逃げるように乗り込んだ。

 約20分乗車して、網走駅に到着した。網走駅は石北本線と釧網本線が乗り入れており、釧路方面に向かうことができる。

 網走駅で一度改札を出て、網走を歩いてみることにした。駅周辺は特に何もなく、市街地へ行くにはバスを使う必要があるらしい。そんな時間はなかったので、網走駅名物の「かにめし」を購入して釧網本線に乗車した。

 釧網本線は網走を出るとまず東へ進み、すぐに南の釧路方面へカーブする。網走から3駅目の北浜駅で一度下車した。ここへ来たのは、北浜駅はオホーツク海に一番近い駅といわれており、冬には駅近くの海岸に流氷が一斉に押し寄せてくるらしい。だが、まだ冬とは程遠いため、激しく波が打ち付ける厳しい海が広がっていた。

 北浜駅舎内にはカフェ「停車場」が入居しており、店内は昔の客車内をイメージした椅子が設置されていた。

 北浜駅で列車を降りてしまったので、次の列車まで駅で待っていると、なにか怪しげな男が駅に入ってきた。全身黒ずくめ、異常に大きいスーツケースなど、怪しい点が多すぎた。なにかを感じつつ、来た列車に乗り込んだ。

 次は知床斜里駅で降りる。駅が近づくと、車内の乗客の半数が立ち上がった。やはり知床へ向かう観光客が多いようだ。その人の群れの中にあの怪しい男が居たということに気づくことができていたら、なにか変わっていたのかもしれないと思う。

 知床斜里駅を出て、駅前のバス停からバスに乗り、羅臼町ウトロへ向かった。

 観光船に乗るつもりだったが、時間が空いていたのでウトロを探索することにした。

 市街地を出て、プユニ岬という岬へ来たときに、事件が起きた。

 先程の黒ずくめの男が大きなスーツケースの中身を海に投げ捨てていたのである。

 持ってきていた双眼鏡で見てみると、切断された遺体だということがわかった。

 すると男は動きを止め、こちらを凝視してきた。「気づかれた」そう思った俺は急いでウトロへ戻り、観光船の予約をキャンセルした。その後、戻るバスに乗って知床斜里へ戻った。

 さっきの男は車で来た様子だったので、すぐに追跡されることは目に見えていた。釧網本線には秘境駅が多いため、車での追跡は困難だろうと思い、俺は釧路行の列車に乗り込んで釧路へ向かった。早く身を隠したかった。台無しだ。あの黒い男のせいで全てが狂い始めた。

 およそ3時間乗車したのち、列車は釧路駅に到着した。すぐに改札をすませて、予約していたホテルにチェックインした。ベッドに寝転がると、列車に乗っているときから続いていた緊張感が少し緩んだ気がした。

 どっと疲れが襲ってきた俺は、すぐに寝てしまった


第一話 <楡> 1日目 終着

<楡> 1はどうだったでしょうか。

次は<樺> 2を執筆いたします。お楽しみに。

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