8 言い分
「陽だまり様! 私は悪くありません! 全てこの庶民が悪いのです!」
「庶民だなんて! 確かに今まではそうでしたが、あたしは貴族の一員になったんです!」
私が目の前にいても二人は言い争い続けます。止めないといけませんね。
「まあまあ、二人とも落ち着いてくださいな。」
「ならばきちんと貴族としての振る舞いをなさい!」
「だから今勉強しているんでしょ! すぐには無理よ!」
「努力の欠片も見えないのに勉強しているだなんて言い訳通じるとでも!?」
あーあー、どうしましょう。私の声も聞こえていないようです。でしたら……
パンッ!
「「!?」」
手を叩いて大きな音を立てます。そうすると驚いて二人ともこちらを向きました。
私はにっこり笑顔で二人にもう一度言います。
「お二人とも、何があったのか一人ずつお話を聞きますよ。」
「申し訳ありませんでした!」
私が一人ずつという部分を強調して言うと、アウルさんはすぐさま謝ってくださいました。
「な、何よ! 悪役令嬢の癖に出しゃばらないでよ!」
クラインさんはまたそれですか。悪役令嬢……やっぱりここは何かのお話の中の世界観なのでしょうか。
「悪役令嬢云々は今は関係ないでしょう。私はただ仲裁しにきただけです。」
「何よ! あんたなんか陽だまりじゃないわ! 陽だまりは、陽だまりは……」
ああ、クラインさんの話はあっちこっち行って一貫性がありません。さてどうしたものですかね。
「まずはアウルさんに聞きます。事実を仰ってください。」
アウルさんに聞いた方が早いような気がしましたので。あ、もちろんクラインさんにも後々聞きますよ。
「はい。まず私はお昼休みになってすぐにここに来ました。そして先に私がいつも座る席に着いて食事が運ばれてくるのを待っていたのです。
そうしたらこの人がいきなり『そこの席は私にピッタリ! だから退いて!』と仰って。私どうすればいいか分からなくなりましたの……」
なるほどです。この方の言い分を聞いただけでは判断出来ませんが、これが本当なら貴族平民云々という問題というよりも人間としてどうか、ですよね。
「それの何が悪いのよ!」
あ、肯定されましたね。ということはやはりこの証言が正しいというわけですか……。
「クラインさん、次はあなたの弁明を聞きましょう。」
「よし来た! ええとー、あたしはそこの席に座りたいから退いてって言っただけだよ? それの何が悪いの?」
……どうしましょう、頭が痛くなってきました。
「本当にその言い分が通るとお思いですか?」
「え、だってあたしはヒロインなのよ! 当たり前じゃない!」
これでは『ヒロイン』という言葉を笠に着てやりたい放題している小さな子供ですね。本当に私と同年でしょうか。
笑顔がほんの少しだけ固くなるのが自分でも分かりました。いけないいけない。ちゃんと笑わないと。
「それでは、今までの両者の話に過不足ありませんか?」
「ありませんわ!」
「ないよ!」
ここまでは両者共に納得しているのですね。では。
「客観的に見た私の見解は、クラインさんに非があると思います。」




