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16 月光と陽光の出会い(2)

ラルside


 自分の変化に頭が追いつかず、混乱する。しかしあんなに人が嫌いなはずなのに、あの陽だまり令嬢とは話してみたい。それだけははっきりしていた。


 だが人を避け続けていた私には、陽だまり令嬢に話しかける勇気もなく。さてどうしたものか。


 しばらく考え、出てきた方法はと言えば……


「一人で楽しんでいなさそうな雰囲気を出す……」


 しかしこれはリスキーだ。他の令嬢や子息が寄ってきてしまっては本末転倒。ならばどうするか。


 しかしなかなかいい案が思いつかない。


「あの……」


 さてどうしたものか。腕を組み、眉間には皺が寄る。


「……ん?」


 呼び掛けられたような気がした。それも先程聞いたあの陽だまり令嬢の声が。


 ふっと声がした(ような気がする)方を見てみると、そこには今考えていたその人がいた。笑顔をその顔に乗せ、柔らかな雰囲気が陽だまり令嬢を纏う。


「先程から随分悩んでいらっしゃるように見えました。」

「……ああ。」


 何故素っ気ない返事しか出来ないのだムーンテラル! と自分を叱ってみるが、極度の緊張で頭が真っ白になる。ついでに冷や汗も出てきた。


「あ、お初にお目にかかります。私はヒダン侯爵家が娘、マリアルモンテ・ヒダンでございます。どうぞお見知り置きを。」

「……ああ。」


 やっと名前を聞くことが出来た。ヒダン侯爵のマリアルモンテ嬢、か。ああ、とても良い名前だ。


「わ、私はムーンテラル・ライトバーグだ。」


 頭が真っ白になりながらも辛うじて自己紹介は反射的に出来た。良くやった、私。


「まあ、あなたがお噂の?」

「う、噂?」

「ええ。凍てつく月光様。そう周りから呼ばれていらっしゃるようですよ。」

「……そうか。」


 人嫌いで無表情だからそのように(凍てつくと)呼ばれていたとしても仕方がないだろう。しかしマリアルモンテ嬢に寒々しい人間だと思われていたと考えると落ち込んでしまう。


 しかしそんな私の心情とは反対に、マリアルモンテ穣はにっこりと笑った。


「私は陽だまり……つまり陽光のようだと周りから言われておりますので、是非とも月光の異名を持っていらっしゃるライトバーグ様とお話してみたかったのです。」


 そう言ってマリアルモンテ嬢はそれはそれは楽しそうに笑った。


「……そうか。」


 ななななんだその笑顔は! 見ているこちらまで癒されるではないか!


 と、心の中では狂喜乱舞していたのだが、しかしきっと一ミリも表情には出ていないのだろう。マリアルモンテ嬢の表情に変わりはない。


「陽だまり様! 私ともお話してくださいませんか?」

「え、今は……」


 他の令嬢がマリアルモンテ嬢に話しかけた。しかしマリアルモンテ嬢は私と話しているから断ろうとしていた。


「……私なら大丈夫だ。」


 私もマリアルモンテ嬢と話してみたいと思ったくらいだ。他の人も同じことを考えているに違いない。


 本当はもっと話していたいが、仕方ない。私はマリアルモンテ嬢を独り占め出来る権限は無い。


「そうですか……。それではお言葉に甘えて失礼します。お話出来て嬉しかったです。」

「……そうか。」


 ああ何故私は素っ気ない物言いしか出来ないのだ。もっと何か喋られないのか、私は!


 マリアルモンテ嬢のだんだん小さくなっていく後ろ姿を見ながら、そんなことを考えていた。









 とまあこんな出会いを果たした私は、家に帰ってすぐ父親に直談判した。


『マリアルモンテ・ヒダン嬢を婚約者にしたい』


 と。




 今まで婚約者の存在など煩わしくて、私の家に来ていた縁談も全て断っていた。


 だから父親にも母親にもしばらくの間ずっとからかわれたのは、いい思い出というか悪い思い出というか……

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