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あたしの名前はジュピター・クライン。前世の名前は桑 洋子。そう、日本で生まれて日本で育った記憶があるの!
そんなあたしは前世で乙女ゲームをいくつか楽しんでやっていたんだ。特に楽しんでいたのは『あなたのサテライト』という乙女ゲーム。そう、この世界なんだよ! それもあたしはそのゲームのヒロイン、ジュピター・クラインなの!
前世の最期が悲惨だったからこれはご褒美なのかなって思ったんだ。だから前世からの推しの月光様ルートを目指そうと思ってね!
だから今日ゲームの出会いイベント通りに街へ出掛けたのに散々だったよ。
それに学園に入ったらゲームとは違った設定になってて、あたしは驚いちゃったよ。
マリアルモンテ・ヒダンはイオ様の婚約者で、イオ様とガニメデ様とカリスト様ルートでの悪役令嬢だったはずなのに……!
あ、イオ様はこの国の王太子様で、ガニメデ様とカリスト様は悪役令嬢のご兄弟なの! あ、でもあたしは月光様一筋だからね!
で、ええと……どこまで話したっけ。ああそう、月光様一筋ってところだ。
それで、ゲームの月光様って婚約者はいないんだけど、月光様自身人嫌いな所があるから攻略が難しくて。
だけどやっぱり一番の推しだからヒロインになったからには頑張ろうって思ったんだ!
「それなのに……」
ガジガジと親指の爪を噛む。ああもう、あいつの存在が嫌すぎる。
「マリアルモンテ・ヒダンが……!」
月光様と共に去っていった後ろ姿を見てイライラする。
何故か月光様の婚約者になっていたことも嫌だが、なにより……
「なんであいつが『陽だまり』なのよ!」
陽だまりという呼び名が嫌。陽だまりと呼んでいいのは豊永 ひまりだけなのに!
あの子は、ひまりはあたしの前世の友達だった。あの子だけが陽だまりと呼ばれて然るべき人間。
それなのにマリアルモンテ・ヒダンが周りから陽だまりと呼ばれているのがこの世界の現実で。
あたしも初めて会った時に、マリアルモンテ・ヒダンが一瞬ひまりの転生先かと思った。だからあんなひまりを彷彿させる笑顔を浮かべているのかなって考えたけど……。
でも、ひまりの記憶があるなら、きっと笑うことなんて出来ないはず。あたしだって前世の記憶を思い出してからしばらくは笑顔なんて浮かべられなかったし。
あんな最期を思い出すなんて心身共に悪い影響を及ぼすよ。笑えなくなるくらいには。
だからひまりではない。それは分かる。だってあんな……
「ひゅっ」
ああ、思い出したくない。あんな、あんな最期は……
落ち着け、落ち着け、落ち着け……!
ガタガタ震える肩を抱き、恐怖をやり過ごす。目の前で飛び散った赤を忘れようと月光様のことを考える。
「月光様は、月光様は、月光様は……」




