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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第七章 次元激闘篇
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第九十八話「デビルズ・ロー・ピクシー」

 ガブリエルが銀子ぎんこに向かって鬼のような形相を向けている。

「いかなる攻撃も無効にするなど……そんなモンスターなど存在するはずがない!」


 銀子はガブリエルの問いかけには答えず、ただ目を逸らさないようにガブリエルをじっと見つめている。


「……なにも答えぬか? なにか……都合が悪いことでもあるのか?」

 ガブリエルは疑いの目を銀子に向けながら言った。


 直後、ダークネス・ドラゴン・オキュスプリテの必殺技『ショック・エンド』がガブリエルを襲う。

 ガブリエルが銀子に気をとられているあいだに、将角まさかどがダークネス・ドラゴン・オキュスプリテを使って放っていたのだ。

 だがガブリエルは、とっさに右手をショック・エンドの方へと向けてかざすと、その目の前でショック・エンドは止まり、消滅した。


 さらに、間髪入れず背後に右回し蹴りを繰り出すガブリエル。

 その先にいたのは将角だった。

 ダークネス・ドラゴン・オキュスプリテがショック・エンドを放っている隙に、自らはガブリエルの背後に回り込んでいたのだ。

 ガブリエル目掛けて放たれていた将角の右の拳は、ガブリエルの身体が回転するモーションによってかわされ、逆にガブリエルの右回し蹴りが将角を襲った形だ。


 だが、そのガブリエルの右回し蹴りは、横から参戦してきた金太郎きんたろうが左腕でガードした。

「……金太郎!」

 思わず金太郎の名を叫ぶ将角。


 そのまま金太郎は、高速で正拳突きの連打をガブリエルへと放つ。

 さらに金太郎の背後からゴールド・ドラゴン・リオールが現れ、金太郎と同時にガブリエルへと攻撃を仕掛ける。

 しかしガブリエルは、金太郎とゴールド・ドラゴン・リオールの攻撃を、ことごとくガードしている。


 そこに将角が加わり、まるで漫画さながらの高速バトルが展開され始めた。

 金太郎と将角、そしてガブリエル。

 三人の攻防に金太郎のゴールド・ドラゴン・リオールと将角のダークネス・ドラゴン・オキュスプリテも加わって、乱戦に突入し始めた。


 さらにガブリエルの後方から歩夢あゆむが右正拳突きで飛びかかり、その背後から入れ替わりで銀子ぎんこが左の回し蹴りをガブリエル目掛けて繰り出す。

 金太郎たちの攻撃に加え、歩夢と銀子の攻撃もすべて避けるかガードによって躱すガブリエル。


 一瞬の隙をついて、ガブリエルの右正拳突きが歩夢の顔面を捉えた。

「く……⁉ 化け物め!」

 苦痛に歪む顔に右手を添えながら愚痴をこぼす歩夢。


 歩夢が戦線から瞬間的に離脱したあとも、金太郎と将角、そしてゴールド・ドラゴン・リオールとダークネス・ドラゴン・オキュスプリテ、さらに銀子の攻撃を凌ぎ続けているガブリエル。


 攻撃を食らった歩夢もすぐさま戦いの場に戻る。

 同時に、歩夢はガブリエルの背後からゼロ・ドラゴン・ワールドエンドの必殺技『サウザンド・シュート』を放っていた。


 ガブリエルがその気配に気づいた時には、すでに上空に配置された無数の波紋からエメラルドグリーンの光の波動が一斉に放たれた直後だった。

 そのあいだも金太郎たちは攻撃の手を休めることはない。

 さらに銀子のシルバー・ドラゴンもガブリエルに襲い掛かる。


「……いくらなんでも多勢に無勢か⁉」

 さすがのガブリエルも額に汗を浮かべ、その表情からは余裕が消え始めている。


 ゼロ・ドラゴン・ワールドエンドが放った『サウザンド・シュート』が直撃する瞬間、ゴールド・ドラゴンが尻尾を振り回してガブリエルを『サウザンド・シュート』が飛んでくる方向へと吹き飛ばした。

 その隙を狙って、一斉にその場を離れる金太郎たち。


 結果、ガブリエルだけが『サウザンド・シュート』をもろに食らうことになった。

「やったか……?」

 将角が警戒しながらも呟いた。



 だが────



「調子に……乗るなぁああああああああああああっ!」

 爆風の中から聞こえてきたのはガブリエルの怒りを帯びた雄叫び。


 ガブリエルの怒号によって一面の爆風は吹き消され、その中心で鬼のような形相を金太郎たちに向けるガブリエル。


「き……効いてないのか⁉」

 歩夢が信じられないといったような表情で、言葉を口にした。


「いや……効いていないわけじゃない……! ()()が止めたんだ!」

 将角が指差した先──

 よく見るとガブリエルの周囲に、無数の小さい妖精のようなモノが大量にいるのが確認できた。


「あれは……モンスター?」

 金太郎が独り言のように呟いた。


「……いかにも。我が相棒〈ロー・ピクシー〉だ」

 ガブリエルが静かに答えた。


 極小の個体が多数。

 一匹のサイズは数ミリ程度しかない。

 それが、ざっと千体はいるように見える。


「なんて数だ……!」

 歩夢が口にした。


 そう──

 ゼロ・ドラゴン・ワールドエンドが放った『サウザンド・シュート』を食い止めたのは、このロー・ピクシーたちだった。

 『サウザンド・シュート』は、数えきれないほどのエネルギー弾を一斉に放つ技。

 そのエネルギー弾ひとつひとつを、無数のロー・ピクシーたちがそれぞれひとつずつ食い止め処理したのだ。


 すでに戦意を損失しているけいも、その様子を戦々恐々とした表情で遠くから見守っていた。



「ひとりに対して多数……! 虚をついた一斉攻撃……! 卑怯なり!」

 どうやらガブリエルの怒りは頂点に達しているようだ。


「先ほど我が奥義『天国の裁きヘブンズ・ジャッジメント』を生身で受けて無傷だったドラゴン──」

 ガブリエルは、その視線を銀子へと向けて続きを口にする。

「……女よ。貴様が言うように、そのドラゴンが本当にどのような攻撃をも無効に出来るのかどうか……この俺が確かめてやろう」



 すると、ガブリエルは右手を前へと突きだして召喚口上を唱え始めた。



正義せいぎという偽善ぎぜん絶望ぜつぼうした無数むすう妖精ようせいたち。てんしめあくほうもとおろものどもにさばきをくだせ! 現れろ──進化召喚!〈デビルズ・ロー・ピクシー〉!」



 ガブリエルが向上を言い終えるとともに、ガブリエルの前にいた無数の妖精たちが黒い光に包まれた。



「くっ……! 進化か⁉」

 将角が思わず声をあげた。


「さあ、そのドラゴンの化けの皮──剥いでやろうぞ!」

 ガブリエルの表情に不気味な笑みが浮かんだ。

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