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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第七章 次元激闘篇
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第九十七話「銀色の救世主」

「まあ…貴様らが何者であろうが戦いが楽しめるのであれば関係ない」

 そう口にしたガブリエルの目が、怪しく赤色に光った。

 長い白髪をなびかせ、肌の至るところには赤い文様が刻まれている。


 あからさまな殺気を向けるガブリエルの迫力に、距離をとって構える金太郎きんたろうたち。


「こいつは……⁉ 少し前に戦ったラファエル並みか……それ以上にやべぇ……!」

 瞬間的にガブリエルの強さを把握して、将角まさかどが一歩退いて警戒心をあらわにした。


「やっぱりクロスレイドの王将モンスターの強さ自体が、そのまま戦闘力に反映しているようだね……!」

 同時に、おそらく金太郎たち全員が感じたであろうことを、歩夢あゆむが代表して言葉にした。


 将角の言葉を聞いたガブリエルが、不気味な笑みを浮かべて金太郎たちに語りかける。

「ほう。貴様ら……すでにあのラファエルと交戦していたのか」

「……だったら何だって言うんだ?」

「貴様らが、いま生きてここにいるということは────」


 そう口にした瞬間、ガブリエルが金太郎たちの視界から一瞬にして消えた。


「──っ⁉」

「ど……どこに消えた⁉」

 慌ててあたりを見回す金太郎たち。


 その直後、焦った表情の将角が口を開いた。

「……金太郎っ! 後ろだ!」


 振り向いた金太郎の背後で、腕組みをしたガブリエルが見下ろすようにして、ゆったりとした口調で続きを口にした。

「────あのラファエルを倒したということだな?」


 振り返るように後ろへ視線を向ける金太郎の瞳に、冷酷な表情をしたガブリエルの姿が映っている。

 恐怖のあまり無我夢中で暴れるように、一心不乱に腕を振り回してから、右足でガブリエルに後ろ回し蹴りを仕掛ける金太郎。

「ぐっ……⁉ こ、このやろう!」

 

 だが振り回した金太郎の腕はすべて躱され、さらに右後ろ回し蹴りもガブリエルの右手で軽々と足首を掴まれ阻止された。


「……あのラファエルを倒した割には、大したことのない攻撃だな」

 ガブリエルは、金太郎の右足首を掴んだまま無表情で言った。


「ぐっ……⁉ クソっ……!」

 金太郎だけでなく、四人全員の表情から戦慄している様子が垣間見えている。


「楽しめると思ったが……残念だ」

 そう、ガブリエルが口にした瞬間、金太郎は遥か後方へと投げ飛ばされていた。


「き、金太郎っ……⁉」

 金太郎を目で追う将角。


 次の瞬間、今度は金太郎の方へ視線を向けた将角の背後に現れたガブリエルの左回し蹴りによって、将角は金太郎と反対方向へ蹴り飛ばされた。

 「ぐうぅ……⁉」

 金太郎同様に、遥か彼方まで吹き飛びながら痛みを口にする将角。


 さらにガブリエルは再び姿を消して、歩夢を下方から蹴り上げるように出現した。

 歩夢は気付く前に蹴り飛ばされたため、何が起こったのかわからないまま、上方へと吹き飛ばされる。


 まるで瞬きをした程度の間に、金太郎と将角、そして歩夢の三人がガブリエルの攻撃を受けて、遥か彼方へと消えていったのだ。

 その様子を目の当たりにしたけいの表情には、恐怖が浮かんでいた。


「……え?」


 そして三人が視界から完全に消えた状態──

 つまり、たったひとり取り残された桂の背後に瞬間移動するように現れたガブリエル。

 金太郎たちへしたように、すぐに攻撃はせずに桂を冷酷な表情で見下ろしている。


 何が起こったのかわからないまま攻撃され遠方まで飛ばされた金太郎たちと違い、桂は振り向いて、見下ろすガブリエルをその目にやきつけることとなった。


「う……うあぁ……⁉」

 あまりの恐怖に涙を浮かべ、震えながら後退りする桂。



「……まずは、おまえだけ見せしめに殺してやるか」



 ドクン────



 その言葉を聞いた瞬間、桂の鼓動が高まった。

 桂の瞳からは光が消え、その視線はガブリエルではないどこか宙を見つめている。

 なす術もない状況と、あまりの恐怖に、すべてを諦めてしまったかのようにも見える。


 桂の左目から涙が頬を伝って流れ落ちた。



 ガブリエルは右手を天に突き上げながら言った。

「我が奥義によって死ぬがいい──。『天国の裁きヘブンズ・ジャッジメント』!」


 ガブリエルの言葉と同時に、突き上げた右手の上空に光の槍のようなエネルギー体が現れた。 

 桂は逃げようとせず、光を失った瞳で上空の光の槍を無言で眺めている。


「くくく……。あまりの恐怖に動けなくなってしまったようだな」

 もはや桂は、ガブリエルの言葉にも反応を示さず、ただ自分を殺すであろう光の槍を無言で見つめている。

「……ラファエルを倒したというから、多少は楽しめると思ったが────。いいだろう! 望みどおり死んでしまえ!」


 ガブリエルが上空に掲げていた右手を振り下ろすと、同時に光の槍が桂めがけて発射された。

 まるで光の槍に射抜かれることを望んでいるかのように、ぼーっと一点を見つめたまま動かない桂。

 もはや、その表情からは恐怖は消えていた。



 そのとき──


「桂っ……!」

 桂の名を呼ぶ将角の声が遠方から微かに聞こえた。


「まさ……か……ど?」

 ゆっくり声のする方へ頭を向ける桂。

 将角の姿を映したその瞳から、涙が溢れ出て、ふたたび頬を伝って流れ落ちた。


「あきらめるな……! 逃げろ……桂!」

 将角の声が虚しく空間に響き渡る。

 すでにガブリエルの攻撃で遠方に飛ばされていた金太郎と将角、そして歩夢が、急いで桂のもとへ向かってきている。

 必死に桂を助けようと向かってくる三人の姿を目にして、少しだけ笑顔を見せる桂。


 将角が必死の形相で叫ぶ。

「死ぬなっ……桂ーーーーーーっ!」


 桂は最後に将角を瞳に映しながら、消えるような声で言葉を口にした。



「さよなら────将角……」



 容赦なく桂へ向かって襲い来る神の光槍。

 目を閉じた桂の目と鼻の先まで、その槍が近づいたその時────




 鈍い音とともに光の槍が貫いたのは桂ではなかった。


 いや──

 光の槍は、何も貫いてなどいなかったのだ。



 桂は押し出されるようにして、その場から逃れていた。

 本来であれば、光の槍が自分を直撃していたはずだった場所──

 その場所を見つめている桂の表情は驚きに満ちていた。



 金太郎たち三人も足を止め、びっくりした顔で桂がいた場所を見ている。


 ガブリエルまでもが予想外の展開に驚きを隠せずにいる。

「な……⁉ お、俺の『天国の裁きヘブンズ・ジャッジメント』を直撃して……無傷だと…………⁉」

 ガブリエルの攻撃対象だったはずの桂はその場から逃れており、代わりにそこにいたもの────



 しばらく放心状態になっていた四人のなかで、将角が最初に声を発した。

「シ……シルバー…………ドラゴン……⁉」


 桂を押し出すような形でガブリエルの光の槍をその身に受けていたのは、金太郎たちのよく知るクロスレイドの銀将モンスター〈シルバー・ドラゴン〉だった。



 さらに〈シルバー・ドラゴン〉の他にもうひとり──

 その横で桂を守るように抱えていたのはクロスレイドの王将モンスター〈ブリュンヒルデ〉。


 将角に続いて金太郎がその名前を口にした。

「ぎ……銀姉ぎんねえ!」



 御堂みどう銀子ぎんこ

 金太郎の姉であり、もとクロスレイドの頂点に君臨していた女王。

 銀将モンスター〈シルバー・ドラゴン〉の所有者。


 王将〈ブリュンヒルデ〉は、銀子の愛用モンスターだ。

 つまり桂を助けたブリュンヒルデの姿をした者──

 それは金太郎たちを助けるため、銀将〈シルバー・ドラゴン〉を従えて、この4.5次元へとやってきた御堂銀子以外には考えられない。



「そのドラゴンの所有者は貴様だな……? いったい何をした!? 我が奥義『天国の裁きヘブンズ・ジャッジメント』を受けておきながら無傷などあるはずがない……!」

 ガブリエルは少なからず取り乱している。



「私の〈シルバー・ドラゴン〉は、いかなる攻撃も無効にする──」

 銀子の挑発的な視線がガブリエルを捉えた。


 ガブリエルは銀子の存在に気圧されているようだ。



 その隙に桂と銀子のもとへ将角がやってきて、銀子に代わって桂を抱えながら声をかける。

「おい……桂! 大丈夫か⁉」

「う……うん。 ま、将角…………ボク──」

 そう口にした桂の瞳から、涙があふれ出した。

 

「……何も言わなくていい」

 この将角の言葉を最後に、桂はただ将角の胸で泣き続けていた。


 しばらくして将角が銀子に語りかけた。

「……ありがとう。銀子さん」

「ふふ。どういたしまして」

 照れ気味に目を逸らして銀子にお礼を言う将角を見て、眉をハの字にして少しだけ笑みを浮かべて返す銀子。



 その後、銀子はすぐに険しい表情に変わると、立ち上がる仕草をしてからガブリエルに視線を向けて言った。

「それよりも……まずはアイツを何とかしなきゃね」

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