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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第七章 次元激闘篇
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第九十三話「王将の力」

 しばらく無言で金太郎きんたろうたちを睨むように対峙していたベリアルが口を開いた。

「貴様らは私が竜崎りゅうざきを恨んでいる可能性に期待していたのかもしれないが、私は別に竜崎のことなどどうでもいい」

 さらにベリアルが続ける。

「ただ……この身体を手に入れて、半永久的な生命を得たことに喜びを感じているのだ。そういう意味では竜崎に感謝していると言っても過言ではないな」


 ベリアルに言葉を返したのは将角まさかどだった。

「なるほど。確かに……もしてめぇが、こんなところに閉じ込められた恨みを竜崎に感じてるのなら、あるいは共闘できないかとも考えたが…………どうやら、ただのイカれた野郎だったらしいな」

 将角は不敵な笑みを浮かべながら、ベリアルを挑発するように言った。


 だがベリアルは特に逆上することもなく冷静に答えを返す。

「当てが外れたな」


 すると、今度は歩夢あゆむがベリアルに質問した。

「ちょっと聞きたいんだけど……アンタみたいなのが、この次元にはいっぱいいるのかい?」

「〝私みたいなの〟とは、現世で死んだあと王将モンスターの姿となってここに来ている者という意味か?」

「そうだね。……答えられるかい?」


「……まあ、貴様らがその答えを知ったところで、それも私にはどうでもいいことだからな。ついでに教えてやる」

 ベリアルは、そう言ってから言葉を続けた。

「まず……貴様の言うように、私と同じ境遇の者は大勢いる。だが私も竜崎にあったことはない。この王将モンスター〈ベリアル〉の姿が竜崎によって選択されたものなのか、それとも私の潜在意識が選んだものなのか──それはわからん」


 歩夢の質問によって、金太郎たちの知らない情報がベリアルの口から明かされ始めた。

 四人は情報を聞き逃さないように、集中して聞き入っている。


「少なくとも……私は現世でクロスレイドなどやったことがない人間だったからな。仮に私の意識によるものだとしても、それは無意識に他ならないだろう」

 さらにベリアルが言葉を続ける。

「ちなみに──私は他の者に何度も遭遇しているが、皆違う容姿をしていた。」


「何度も遭遇している……? 一緒に行動しようと思わなかったのか……?」

 違和感を感じた金太郎が質問をはさんだ。


「……一緒に行動? くくく……。そんな考えだから貴様らは私の考えがわからんのだ!」

 急に笑い出したベリアル。

 その口から、とんでもない思想が語られる。

「この次元に来てからというもの、私は他人に遭遇したら殺して私の方が強いと証明している」


「────っ⁉」

 ベリアルの発言を聞いて、一斉に身構える金太郎たち。


「くくく……。急に慌てだしたな? そうだ──いまの私の楽しみは〝戦い〟だけだ。この次元に来た私以外の人間の魂がどうなろうと、私の知ったことではない」

 悪魔のような表情で、そう言い放つベリアル。


「……ちょっと待て。てめぇが殺してきたとかいう他の奴らの魂はどうなった? 王将アバターの器を失ったとき、そこに入っていた魂はどうなる……?」

「さあ……? 私がそんなこと知るわけないだろう?」

この将角の質問に、ベリアルは不気味な笑みを浮かべながら答えた


「てめぇ……!」

 ベリアルの返答を聞いて、将角が怒りの反応を示したとき──



「そろそろ、おしゃべりは終わりだ」



 そうベリアルが口にした瞬間、金太郎たちの視界からベリアルの姿が消えた。


「な……! き、消えた⁉」

 金太郎は慌てた表情で辺りを見回すようにして、ベリアルの姿を探しはじめた。

 他の三人も、ほぼ同様の動きを示している。


 すると、まもなくけいの目の前に瞬間移動してきたかのようにベリアルが姿を現した。


「え……?」

 突然のことに反応が遅れる桂。


「おまえが一番弱そうだな」

 ベリアルは、そうひと言だけ口にしてから桂を蹴り飛ばした。

 ベリアルに蹴り飛ばされた桂の身体は、遥か後方へと吹き飛ばされる。


「桂……⁉」

 将角の視線が思わず桂を追いかけた。

 直後、すぐにベリアルの方へと視線を移すと、〈ダークネス・ドラゴン〉がベリアルに対して反撃を仕掛けた。

「ふざけんなよ……てめえ!」

 将角の指示で〈ダークネス・ドラゴン〉がベリアルへと飛びかかり、振りかぶった右腕を思いっきりベリアルに向かって振り下ろした。


 だが、すぐに身をひるがえし〈ダークネス・ドラゴン〉の攻撃をかわすベリアル。

 〈ダークネス・ドラゴン〉の右手は空を切り、上空に避けたベリアルは前方へと一回転したのち、そのまま〈ダークネス・ドラゴン〉に向かってかかと落しを叩き入れた。


 鈍い音とともに、下方へと凄まじい勢いで吹き飛ばされる〈ダークネス・ドラゴン〉。


「ぐはっ……⁉」

 〈ダークネス・ドラゴン〉が攻撃を受けたことで、将角の口からも痛みの声が漏れた。


「ま、将角……⁉」

 金太郎の視線が無意識に将角に向けられる。


 将角が胸のあたりを抑えながら、苦痛の表情で言葉を口にした。

「て、てめえ……生身でドラゴンを攻撃できるほどの戦闘能力があるのか……?」

 将角は額に汗を浮かべ、ベリアルを睨む。


 するとベリアルが、挑発的な笑みを金太郎たちに向けながら言った。

「本当に貴様らは、まだ何もわかっていないようだな」

「どういうことだ……?」

 ベリアルに問いかける将角。


 その答えをベリアルが口にする。

「貴様らも王将モンスターの身体を得てここに来ているのだろう? 私からすれば、その王将モンスター自体が本来持つ身体能力を使おうとしない貴様らの方が不思議だがな」


「王将モンスター自体が本来持つ身体能力……!」

 ベリアルの言葉に、ハッとなる四人。


 歩夢が口を開く。

「そうか……そもそも、この身体はクロスレイドのモンスターだ! それなりの身体能力があって当然なんだ……」


「なるほどな。それにしても……わざわざ、そんなことまで俺たちに教えちまうとは、とんだ間抜けのようだな」

 不敵な笑みを浮かべてベリアルを挑発する将角。 


 だがベリアルは平然とした態度で答えた。

「何か勘違いしているようだが、さっきも言ったように私は戦いを楽しめればそれでいいのだ」

 さらにベリアルが言葉を続ける。

「それに────どちらにせよ、勝つのは私だからな」

 金太郎たちに囲まれながらも、余裕を見せつけるベリアル。


「ぬかせ! 勝つのは俺たちだ!」


 将角の言葉を合図に、金太郎たち四人が戦闘態勢に入った。

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