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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第七章 次元激闘篇
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第九十二話「魂の在処」

 金太郎きんたろうたちを睨み続けるベリアル。

 その表情に笑みはなく、先ほどまでのような余裕はないように見える。


 しばらくして口を開いたのはけいだ。

竜崎りゅうざきがキミの魂を無理やりこんなところに…………」

 悲しそうな顔で桂が言った。


 だが桂の言葉を聞いたあと、ベリアルに再び不気味な笑みが浮かぶ。

「……俺が竜崎に無理やり? くくく……かぁっはっは! おめでたいヤツめ!」


「──っ⁉」

 高笑いを始めたベリアルを前に、警戒心をあらわにして身構える金太郎たち。


「おまえ……! 生きて将棋に打ち込んでいた頃、竜崎の思念に苦しめられたんじゃないのか?」

 金太郎が言った。


 その金太郎の質問に答えるベリアル。

「貴様らがどこまで把握しているのか知らんが、もう私は百年近くここにいる」

「ひゃ……百年、だと…………⁉」

 思わず将角まさかどが声を漏らした。

 ベリアルの答えに、驚きを隠せない金太郎たち。


「そんな前には、将棋棋士たちに竜崎の影響は出ていなかったはずだ……」

 金太郎がベリアルに質問するように言った。


「それは貴様らがそう思い込んでいただけだ。もっと以前から竜崎の思念によって精神を歪められた将棋棋士はいた。ただ──」

 会話の途中、金太郎たちに囲まれていたベリアルは上方へと移動して、金太郎たちを見下ろすような形で続きを口にした。

「その数は少なかったから、貴様ら人間どもは気付かなかったか、気付かないふりをしていただけだ」


 金太郎たちは、将棋棋士たちが豹変し始めたのは最近のことだと考えていた。

 そもそも事件として報道され始めたのが最近のことであり、それ以前からそういった将棋棋士の豹変があったことは初めて知ったのだ。


「もっと以前から…………。そうか……。症例数が少なすぎて、仮にそういった豹変があっても自己の精神疾患の発現や、一時的な感情の高ぶり、もしくは性格の変化などにおける個人的な問題だと、周りの人間たちに都合がいいように決めつけられて軽視されていたのか……」

 将角が苦悶の表情を浮かべながら言った。


 将角の言葉に答えるようにベリアルが言う。

「そういうことだ。最近になって竜崎の思念が強まったことで影響を受ける魂が増えて、ようやく人間どもが異常に気付き始めたのだろう」


 その言動からは、ベリアルが敵なのか敵じゃないのかわからず、金太郎たちの緊張は続いていた。

 状況をハッキリさせたい目的もあったため、将角はベリアルとコミュニケーションを図ろうと試みる。


「俺たちは竜崎を止めに来た」

「……止めに…………来ただと?」


 将角の言葉で、金太郎たちに疑念を抱き始めたベリアル。

 そして将角の質問が確信をつく。

「目的は竜崎の思念を消し去ることだ。てめぇは……味方か? ──それとも敵か?」


 ひと呼吸おいてから、再びベリアルの高笑いが辺り一面に響き渡った。

「フフ……ククク…! ハァーッハッハッ!」


 四人がさらに警戒心を高める中、金太郎がベリアルに問いかけた。

「何がそんなにおかしい……?」


「ククク……私が敵か味方か、だと?」

 ベリアルは、右手を前に突き出しながら言った。


 それを見た金太郎たちの警戒心が極限まで高まる。

 後ろに飛び退いて距離をとったあと、身を屈めるようにして構える金太郎たち。


 次の瞬間──

 ベリアルは凶悪な形相をしながら答えた。

「敵に決まっているだろうがぁ!」

 その直後、ベリアルの右手の前に魔法陣のようなものが出現──



「…………ま、まさか⁉」

 驚きの言葉を口にしたのは桂。


「現れろ────! 〈ブラック・ユニコーン〉!」

 そして、ベリアルの右手前にある魔法陣から姿を現したのは、黒い一角獣。



「も……モンスターを……召喚しやがった…………!」

 そう将角が言葉にした瞬間──ベリアルの〈ブラック・ユニコーン〉が、角を将角に向け襲い掛かってきた。


「な……んだと…………⁉」

 反射的に召喚した〈ダークネス・ドラゴン〉が将角を守るように、〈ブラック・ユニコーン〉の攻撃をはじき返す。


 さらに、攻撃をはじき返された〈ブラック・ユニコーン〉は、身をひるがえして〈ダークネス・ドラゴン〉の方へ角を向けると、角の先に漆黒のエネルギー体が出現した。


「ブラック・デス・マテリアル!」

 そうベリアルが口にした瞬間、今度は〈ブラック・ユニコーン〉の角先に集まっていた球体のエネルギー弾が、〈ダークネス・ドラゴン〉を目掛けて放たれた。


「ぐっ……⁉」

 よけきれずに防御態勢で〈ブラック・ユニコーン〉の放ったエネルギー弾を受け止める〈ダークネス・ドラゴン〉。

 防御しているとはいえ、将角からは苦しそうな声が漏れた。


 だが、それも長くは続かない。

 気づくと〈ブラック・ユニコーン〉は横から突撃してきた別のモンスターの尻尾によって後方へ吹き飛ばされたのだ。

「ぐふ…………!」

 思わずベリアルの口から、ダメージの痕跡らしき言葉が漏れた。


「……き、金太郎か⁉」

 片目を閉じて苦しそうな表情で斜め後方を確認する将角。

 そこにはやや緊張気味の金太郎が、右手を前につき出しながら浮遊していた。


 〈ブラック・ユニコーン〉を吹き飛ばしたのは、金太郎の〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉。

 将角が襲われている間に進化して、横からベリアルの〈ブラック・ユニコーン〉を物理攻撃によって吹き飛ばしたのだ。



「何だ……そのモンスターの攻撃力は?」

 胸を抑えながら、金太郎を睨むベリアル。

 かなりのダメージを受けたように見える。


「俺の〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉の技は、自らの能力を爆発的に強化する効果だ」

 金太郎が、自分の技の説明を口にした。

 金太郎自身、初めて使った技だが、なぜか不思議と記憶があるかのように、その詳細を知っている。


 これは将角が言っていたように、第六感によって感覚的にわかるようになっているのだろう。


「技の名はライトニング・オーラ」

 金太郎の瞳からは金色の炎が出現している。


「なるほど……ドーピングか。物理攻撃とは思えないその凄まじい攻撃力……思いのほか厄介な技だな」

 金太郎を睨みながら言葉を口にするベリアル。

 その表情からは、すでに余裕は消えている。


「すまん……金太郎。助かった」

 空間を浮遊するように金太郎の隣まで移動し、声をかける将角。


 金太郎の〈ゴールド・ドラゴン・リオール〉の物理攻撃を受けたのは〈ブラック・ユニコーン〉だ。

 だが、明らかにベリアル自身もダメージを受けている。

 

「やっぱりボクらと一緒で、モンスターがダメージを受けると彼の魂自体もダメージを受けるんだ……」

 状況を冷静に分析し、考えを口にしたのは桂だ。



 ベリアルは元人間界の将棋棋士で、竜崎の思念によって暴走──

 亡くなったあとで、この次元に囚われて百年近く存在していると言った。


 だが、魂はあるのだ。

 間違いなく、そこにあるのだ。


 あくまで死んだのは人間の肉体。

 そしてその身体に入っていた魂が、いまベリアルの姿を得てここに存在している。


 人間界での〝死〟というのは、魂ごと自己の意志が消滅するのではなく、あくまで魂がうつわから解放されるということに他ならないのかもしれない。

 もしそうなのであれば、それは恐らく竜崎も同じ──。



 桂の発言を聞いた歩夢が口を開いた。

「竜崎も僕らみたいにアバターによって、その存在を維持しているのか……それとも────」

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