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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第六章 次元干渉篇
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第八十八話「次元干渉」

 桐生きりゅう角田かくたを威圧したあと、飛鳥あすかを見て言った。

「……ふむ。これが金太郎きんたろうが心配していた小娘か」


 続けて、銀子ぎんこ響香きょうかがいる方へ視線を向けて確認するように問いかけた。

「おまえたちが御堂みどう銀子と如月きさらぎ響香だな?」

「は……はい」

 銀子たちは、あっけにとられて桐生を眺めている。


 再び角田と飛鳥の方へ視線を戻して、背後の銀子たちに向かって質問を続ける桐生。

「事情は金太郎のヤツから聞いておるが……今どういう状況だ?」


 桐生の質問に対して、銀子と響香は飛鳥救出における行動の一部始終を話した。

 世界の異変。金太郎たちとの合流。飛鳥の捜索──

 さらには金太郎たちと二手に分かれ、自分たちは飛鳥の捜索を続けていたということ。


 そして、この場所で角田と完全洗脳された飛鳥に遭遇。

 飛鳥を取り返すために、今から将棋で対決をするところだったこと。

 また、もう飛鳥は手遅れかもしれないということ──


 可能な限りの情報を桐生に伝える銀子たち。


「ふむ……。儂も将棋界に身を置いておる以上、嫌でも将棋棋士たちが起こした事件は耳に入ってきておった。確かに、ここ最近になってその事例が増えていたことも実感しておる。……ニュースでもやっておるしな」

 そして桐生は目を閉じて、空を仰ぎながら言葉を口にした。

「まさか、あのバカ弟子が世界を救おうとしておったとは、な……」


 桐生は首をボキボキと鳴らしてから目を開くと、その威圧的な視線を角田へと向けて言った。

「……いいだろう。儂が直々に相手をしてやろう」

「…………は、はァ?」

 急な展開に、間が抜けたような声を出す角田。


 だが桐生は問答無用で話を進めていく。

正之進まさのしんのせがれよ。おまえの相手は儂がしてやる」

「えェ…………⁉」


 さらに桐生は、銀子と響香の方を向いて言った。

「そっちの小娘の相手は、おまえたちのどちらかに任せても大丈夫だな?」

「え……ええ」


「よし。それでは、さっさと対局場へと連れていけ──小僧!」

 桐生は勝手に話を進め、角田に案内を要求する。


 だが、角田は全力で反論すべく大声をあげた。

「ちょ、ちょい待てェエエエ⁉ なんでオレ様の相手が桐生宗介(そうすけ)なんだよォ!」

「儂がこっち側についたからに決まっておるだろうが」

「そ……そうじゃなくてェ……」


「ごちゃごちゃ言っとらんで、さっさと連れていけ! どっちだ?」


 急な展開に動揺している角田の腕を引っ張り、半ば強引に予定していた将棋道場まで誘導させる桐生。

 そのうしろを銀子と響香、そして飛鳥の順番でついていく。



◇ ◆ ◇


 角田行きつけの将棋道場──


 五人は、角田が住んでいたマンションから5分ほど歩いたところにある将棋道場の前にいる。


 桐生は、顎髭をさわさわしながら呟いた。

「ここだな」


「く……くそォオオオ……! 無理やり案内させやがってェ……」

 愚痴をこぼしながら将棋道場へと入っていく角田。

 ほかの四人も角田に続く。


「いらっしゃ~い……」

 やる気のない席主が、小説を読みながら挨拶を口にした。

 だが、角田たちの方には目を向けず、小説に夢中になっている。


 席主は九十歳近い高齢者のようだ。

 角田たちの他に客はおらず、道場内はしんと静まり返っている。



 行きつけというだけあって、手際よく受付を済ませる角田。

「オレ様と、そこの四人。計五人だが、勝手にやるからァ」

「はいよ」


 すると桐生が角田の隣に立って言った。

「支払いは儂がしてやる」


「あ、あァ……」

 さすがの角田も、桐生相手では怖気づいている様子だ。


 桐生が座主に料金の支払いをしている間に、角田が手合いカードを銀子たちにも記入するように指示する。

 支払いを終えた桐生が最後に手合いカードの記入をすると、あとは角田が主導で対局場へと案内した。


 歩きながら背後を向いて、不思議そうに小説を読む座主を見つめる響香。

 すると、それに気づいた角田がニヤつきながら口を開いた。

「……さっき言っただろォ? ここはもうほとんど客も来てないしィ、あの爺さんが趣味で開けてるだけだからァ、オレ様みたいなのしか来ないんだよォ」

 角田は続けて言う。

「あの爺さん。金さえ払えば、あとは勝手にやってろってスタンスだからァ、いろいろと都合がいいんでねェ」


 道場の一番奥にある席を二つ分確保し、それぞれの席に着くように促す角田。

 まずは、壁側の一番角の席に角田。その隣に飛鳥が座る。

 そして角田の前に桐生が座り、飛鳥の前には銀子が座った。

 桐生の参戦によって対局から逃れた響香は、銀子の隣に座って見守っている。


 一瞬の静寂が訪れたのち、桐生が口を開いた。

「──それでは始めようか」



◇ ◆ ◇


 亞比あびの研究室。


「さて。覚悟は出来ていますか?」

 亞比が、今から次元に旅立とうとしている金太郎きんたろうたちに確認した。


「ああ。問題ないぜ」

「こっちもだ」

 金太郎と将角まさかどが答えたあと、けい歩夢あゆむも亞比の方を見て頷いた。



 竜崎りゅうざき王牙おうががいるという4.5次元──

 つまり、ひとつ上の次元との狭間。人間が生きるこの世よりも、少しだけ高次元の場所へと向かおうとしている四人。


 最後に亞比が、金太郎たちに忠告をする。

「向こうの世界に行けば、恐らく竜崎の手下とも呼べるモンスターの大群が襲い掛かってくることでしょう」


 これから金太郎たちは、それぞれが選んだ王将モンスターを自らの器──つまりアバターとして、竜崎のいる4.5次元へ向かうことになるわけだが────

 亞比によると、4.5次元の世界でモンスターからのダメージを受ければ、金太郎たちの魂自体がダメージを負うことになるという。

 身体は王の器でも、そこに入っている金太郎たちの魂も無傷ではないのだと──。


 またドラゴンの召喚も魂に負担がかかるため、むやみやたらに召喚しないよう金太郎たちは釘を刺されていた。

 ドラゴンは召喚した者の精神力を喰って、その存在を維持しているのだという。

 特に進化状態での召喚は、さらに持ち主の精神力を消費するということらしい。


 その他、高次元へ移行した際の注意事項が、いくつか亞比から話された。


 亞比の指示で、次元転生装置を装着する金太郎たち。

 そのあいだ、亞比の口から次元に関するトリビア的な知識が暴露されていた。


「ちなみに、竜崎のいる4.5次元に行くということは、いま我々がいるこの場所と全く違う世界へワープするということではありません」


 亞比の話では、竜崎のいる4.5次元も含め、その先の高次元もすべてひとつの世界だという。

 まさに今、この地上のどこかに竜崎がいるかもしれないということらしい。

 ただ、その姿を見ることも聞くことも出来ないのは、竜崎が少しだけ上の次元にいるからだというのだ。


 つまり、もしかしたらすぐ隣に竜崎がいるかもしれない──ということだ。


「我々は見えているモノしか理解しようとしませんが、そこには見えていないモノも存在しているということです」

 この亞比の戯言に将角が言葉を返した。

「今……その話をして俺たちに何を伝えたいんだ?」


 すると亞比は、光る眼鏡の裏にすべてを見透かしたような笑みを浮かべて答えた。

「逆を返せば4.5次元の世界の住人は、我々4次元の世界の住人を一方的に感じることができるということです。……もしかしたら、どなたか心が通じ合った者の想いを受け取ることが出来るかもしれませんね」

「……どういうことだ?」

 さらに問い返す将角に答える亞比。

「以心伝心という言葉があるでしょう? テレパシーみたいなものですよ」


「へぇ。よくはわからないけど……普通じゃ体験できないようなことが起こるなら楽しみにしておくよ」

 そう金太郎が笑顔で答えて、この雑談は終わった。


 それから少しして、亞比は眼鏡のブリッジを押し上げてから四人に確認する。

「……準備はいいですか?」

 すでに次元転生装置の装着が完了した四人が頷きながら答えた。


 四人の了解を得て、何かの装置の前に移動する亞比。

 そしてレバーのようなものに手を触れながら四人に言った。

「それでは……竜崎の魂を抹殺して、どうか世界を救ってきてください」


 すると、金太郎が意外な言葉を亞比に返した。

「……別に俺は、竜崎を殺しに行くわけじゃないぜ?」


「何を言ってるんだ……金太郎?」

 怪訝そうな顔で金太郎に問いかける将角。

 桂と歩夢も不思議そうな顔で金太郎を見ている。


 金太郎は誰に視線を向けるわけでもなく、まっすぐに前だけを見据えて言った。

「俺は────誰かの不幸の上に成り立つような幸せは絶対に認めない」

「金太郎くん、キミは…………」

 桂がびっくりしたような顔で言葉を漏らす。


 さらに金太郎が言葉を続ける。

「俺は……竜崎の魂を救う! 竜崎を救って──この世界も救うんだ!」

「へぇ……。そういう発想ね」

 歩夢が不敵な笑みに変わって呟いた。


 将角も目を閉じて、笑みを浮かべている。

「……相変わらずだな、おまえは」


 亞比は不意をつかれたかのような表情をしていたが、少ししてから俯き気味になって答えた。

「……さすがですね。まさにドラゴン使いの発想とでも言うべきか──」

 俯いている亞比から表情は確認できないが、その声からどことなく嬉しそうな感情を読み取ることができる。


 亞比は、レバーを握った手に力を込めて言葉を口にした。

「それでは改めて……世界と竜崎をお願いします────金太郎くん」


 今度は亞比の言葉に力強く答える金太郎。

「ああ……任せてくれ!」



 全員がお互いにアイコンタクトを取り頷き合ってから、四人が次元転生装置のベッドに横になる。

 そして亞比がレバーを下げた瞬間、起動音とともに装置と金太郎たち四人の身体が量子の光に包まれた。


 激しい発光がおさまったあと、何事もなかったかのように静まり返った部屋で、たったひとり亞比が天井を仰いでいた。

 四人は次元転送装置の上で寝ているように見える。

 だが、もう四人の身体には魂は入っていない。あくまで器のみがベッドに横たわっているのだ。



 亞比は部屋の中央あたりまで歩き、再び天井を仰ぎながら呟いた。

「頼みましたよ────四人とも」

(次回予告)

ついに次元の狭間に足を踏みいれた金太郎たち。

竜崎のもとを目指して突き進む!



次回、新章突入!

ドラゴンを従えた英雄たちの信念が、悪意に囚われた王の魂を浄化へと導く──

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