表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第六章 次元干渉篇
83/188

第八十二話「語源の謎」

 亞比あびの口から明かされたクロスレイドの起源にまつわる話は、四人の言葉を失わせるには十分だった。

 だが、金太郎きんたろうたちの気持ちの整理を待たずして、さらに次の話題を始める亞比。


「少し重い話になってしまいましたね……。ここからは少し視点を変えて話しましょう」

「……今度は、いったいどんな話が飛び出すっていうんだ……?」


 まさかクロスレイドの考案者が鎌倉時代の人間だったとは、金太郎たちも予想だにしていなかったことだろう。


 当時の将棋と現代の将棋の相違点についてはまだ謎も多いが、現在に至るまでの長い年月のなか、考案者である亞比紅蘭(こうらん)の構想を保ったまま、そのベースは現代将棋に近いものへと少しずつ形を変え、クロスレイドの開発に着手し始めたのが亞比真之助(しんのすけ)の三代前──亞比六輔(ろくすけ)の代からだったようだ。


 紅蘭の意思により、亞比の名は護られてきたという。

 亞比の名を冠する者に、竜崎りゅうざき王牙おうがの魂の救済という役割を植え付けるためだ。

 何としても、その名を後世まで受け継ぐようにという想いを残したのだ。


 亞比は、感傷に浸るように言葉を口にした。


「もはや今となっては、紅蘭の想いや意志という意味は薄れてしまいましたが……。それでも私たちの一族が彼女の想いを引き継いできた理由──。それは彼女のその発想自体が、時代の常識を覆しかねないものだったからです」


 紅蘭が後世に残した想いは三つ。

 ひとつは、竜崎王牙の魂を救って欲しいということ。

 そして、それは同時に世界を救うことにつながるのだということ。

 最後に、その手段の手掛かりとして残したのが、クロスレイドの原案────。


 結局──

 彼を放置すれば、いずれ世界は破滅する。


 そう、紅蘭は世界に警告を残したのだ。



 将角まさかどが重い口を開いた。

「……よくこんな長いあいだ使命を受け継いでこれたな」


「確かに──時代の流れとともに、彼女の残した言葉の重みは薄れていきました。実際に世界の破滅などというものが本当に起こりえるのか、と──」

 亞比は、天井を眺めながら語り続けた。

「──ですが、彼女が残したクロスレイドの原案における発想。これは間違いなく画期的なものでした。そして結局は可能性の追求という意味で、未知のツールの制作──および、それが引いては万が一の事態においての切り札ともなる。我々一族の目的は、そういう方向へと変わっていったのです」

「なるほどな……」



 結果的に、彼女の願いの順位こそ変われど、その目的の意味は遂行されることとなったのだ。


 彼の魂の在処──。

 そして、そこへ到達するためのツール〝クロスレイド〟の開発。


 

 亞比は急に四人の方へ視線を向けて、意味深な問いを口にした。

「君たち。クロスレイドの語源は知っていますか?」


「語源? あのクリエイティブなんちゃらってやつ?」

 亞比の問いに答えたのは金太郎。


 すると、金太郎の曖昧な回答を補足するようにけいが完璧な答えを口にした。

「え~と……。確かクロスレイドは、ローマ字で『CROSSクロス-RAID(レイド)』。そして『CROSS』の語源は『Creativeクリエイティブ』『Realizeリアライズ』『Overオーバー』『Shogiショーギ』『Systemシステム』の頭文字をとって名付けられたって話だったよね」


「その通りです。『Creative』とは、創造的である──という意味。つまり新たなものを自らの手で生み出すことに他なりません」


 四人の視線が一斉に亞比に注目した。

 そのまま亞枇は、ひとりひとりに目を向けながら言葉を続けていく。


「『Realize』は、実現するという意味。『Over』は何かを越えてとか、何かの向こう側にというような意味ですね。『Shogi』は……そのまま将棋のこと。『System』というのは系統や方式など意味は様々ありますが、一般的にシステムと言えば皆わかるでしょう」

 桂が答えた『CROSS』の語源について、その意味をひとつひとつ丁寧に示していく亞比。


「こうして言葉の意味を紐解いていけば、その本質がわかることもあります」

 そして、次に亞比が口にした言葉は────


「──それでは『RAID』の方の語源は?」


 これには、歩夢あゆむが答えた。

「でも『RAID』の方の語源は不明だったんじゃ……?」

「そうそう。俺もそう記憶してるぜ」

 金太郎も、歩夢の発言に同意する。


 そこに口を挟んできたのは将角だ。

「──で? そんなもん答え合わせして、何になるってんだよ。おっさん」

「お、おい……将角! もう少し言葉ってもんを────」

 久しぶりにイラついた口調になった将角を、金太郎が止めようとしたその時────




「『Resistanceレジスタンス』『Awakeアウェイク』『Imaginationイマジネーション』────────『Dragonsドラゴンズ』」




 ──亞比の口から飛び出した言葉。

 その場に居合わせた亞比以外の四人全員が、一斉に驚きの表情に変化した。


「レジスタンス……アウェイク……」

「イマジネーション…………ドラゴンズ……だと?」

 金太郎と将角が、確認するように交互にその言葉を復唱した。


 そして、その語源がいったい何を伝えようとしているのか──

 亞比がそれを言葉にして語っていく。

「意味は『Resistance』が抵抗、敵対。『Awake』が覚醒。『Imagination』が想像力。そして──────」


 亞比が最後の一言を言う前に、将角がぽつりと口にした。

「──────ドラゴン……」


 辺りが静まり返る。

 思わず『ドラゴン』と口にした将角を始め、亞比以外の四人全員が言葉を失っている。


「そう。厳密にはドラゴンは複数形。つまり君たちの持つドラゴンたちを意味しています。ドラゴンをイメージする想像力が覚醒を呼び起こし、ヤツに敵対する力となる──」

「ヤツ……。さっき言っていた竜崎王牙のことか?」


 将角が額に汗を滲ませながら問いかけた。

 すると亞比は、光が反射した眼鏡の隙間から、その底知れぬ瞳を覗かせて答えた。


「ええ。竜崎王牙──。ヤツこそが棋士たちを狂わせ、世界を破滅へと導く元凶となる悪意の存在────────……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ